土曜日も一人泊OK!お値段以上の満足度がある肘折の良宿
春から秋にかけては毎日朝市が開催され、湯治場の雰囲気を色濃く残す肘折温泉。
20軒ほどの宿が軒を連ねており、多くの宿に1人で泊まることができる、一人旅に優しい温泉地です。
家族経営の小規模な旅館がほとんどで、湯治プランで格安に泊まれるのが大きな魅力ですが、そんな中で大友屋旅館は、旅館的なサービスをきっちり提供してくれて、それでいて旅籠プランでも1万円台前半で土曜日でも1人泊可能な、何拍子も揃った宿です。
・宿泊料金はリーズナブル(トイレ付きの部屋に土曜日2食付きで1人泊して1万5千円以下)
・お湯が熱すぎない(激アツな宿もあるので……)
・熱いものは熱々で提供してくれる、旅館らしい夕食
この3つが揃っているので「肘折温泉に行ってみたい!」と言われたらとりあえず大友屋旅館さんをすすめておけば間違いないだろう、と思っている宿です。
既に2度泊まっているお気に入りの宿ですが、レポートしたいと思います。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。
- 土曜日も一人泊OK!お値段以上の満足度がある肘折の良宿
山形新幹線 新庄駅から村営バスで肘折温泉に向かう
肘折温泉には、山形新幹線の終点「新庄駅」から村営バスで向かいます。
村営バス「肘折ゆけむりライン」に乗って1時間ほど。
この日は全国旅行支援が始まる直前の、10月の3連休初日。
バスはそこそこの乗車率でしたが、2人掛けの席を1人で使っても大丈夫なぐらいだったのでゆったりと景色を眺めながら向かいました。旅行支援開始後はどうなっているのでしょうね……。
大友屋旅館の最寄りバス停は、終点の手前の「第2停留所」です。
バス停のすぐ隣にあります。
店頭でお酒やコーヒーが楽しめるカネヤマ商店や、共同浴場の「上ノ湯」のすぐ近くで、肘折温泉のまさに中心地にある宿ですね。
ちなみに、春から秋まで毎日開催している肘折温泉名物の朝市も、宿の目の前の通りなので覗きに行きやすいです。
宿の目の前には足湯もあります。こちらはかなり熱くて、温泉卵も作れるようです。
チェックイン可能な15時になったところでお邪魔します。
【部屋】★★★★☆ トイレ付きの部屋を選べば快適、トイレ無しの部屋はよりリーズナブル
1階フロントでチェックインを行い、すぐに部屋に案内していただけました。
ちなみに大浴場も1階にあるのですが、湯上がりのお休み処も1階にあり、ちょっと懐かしい雰囲気の素敵な空間です。
中央に囲炉裏があり、お茶やコーヒーが自由に飲めるようになっています。
温泉卵も食べられるように、器と醤油とお箸まで置いてありました。
隣に置いてある輪投げやけん玉もいい味出してますね。ちなみに、写真だと雑然として見えるかもしれませんがお掃除は万全です。きれい好きなおばあちゃんのお部屋という雰囲気。
各階の案内がこちら。
1階と2階には湯治用のお部屋があり、共同の炊事場やコインランドリーもあります。
旅籠プランで宿泊する場合は3階か4階の部屋になるようです。
2020年に宿泊した4階トイレ付きの部屋「けやき」
2020年に初めて宿泊した際は「トイレ付きの和室」で予約し、4階の「けやき」という部屋に案内されました。
トイレ付きの部屋に「2食付きの旅籠プラン」で1人泊した場合の宿泊料金は「平日13750円、休前日14850円(税込)」です。
部屋に入るとまず洗面所とトイレがあります。
洗面所にはドライヤーも置いてあり、トイレもウォッシュレット付きで清潔です。
では、お部屋の中へ。
8畳のシンプルな和室です。コロナ禍以降、1人泊でお部屋の広さに余裕があるとチェックイン時から布団が敷いてあることが多くなりましたが、大友屋旅館さんは夕食のタイミングで布団を敷いてくれる方式です。ちなみに朝の布団あげはありません。二度寝できます!
障子戸を開けると、広縁があってテーブルと椅子がありました。
冷蔵庫には瓶ビール、ミネラルウォーター、檸檬サワー、日本酒のワンカップ。
卓上には冷水ポットと肘折温泉の定番「ほていまんじゅう」が。
個人的に、あるととてもうれしい湯わかし機能付きポットもしっかり。
さっそく、持参したドリップパックとカップでコーヒーを淹れて、おまんじゅうをいただきます。
あとは備品として浴衣と羽織、バスタオルとフェイスタオルはもちろん揃っています。
問題なく居心地の良い、2食付きで1万円台前半で泊まれることを思えば満点の部屋でした。
ちなみにWi-Fiも利用できます。速度はそんなに速くはないですが、Webサイトの閲覧などは問題なくできました。(速度は部屋にもよると思います)
2022年に宿泊した3階トイレなしの部屋「松」
2022年には客室にトイレが付いていない部屋に泊まる「1泊2食付きリーズナブルプラン」で予約し、3階の「まつ」の部屋に案内していただきました。
トイレなしの部屋に「2食付きの旅籠プラン」で1人泊した場合の宿泊料金は「平日11550円、休前日12100円(税込)」で、トイレ付きの部屋より2000円ほど安くなります。
入ってすぐのところに洗面所があるのはトイレ付きのお部屋と同じです。
部屋も同じ8畳ですが、こちらの部屋には広縁はありません。
冷蔵庫やポット、金庫などの設備や、浴衣やタオルなど部屋に設置してあるものはすべて同じです。
ほていまんじゅうは今日もおいしい。
トイレはどこかというと、貸切風呂の前にあります。部屋の目の前とはいかないので、冬の夜中とかだとちょっと億劫に感じるかもしれません。
男性用女性用と分かれているのではなく、個室が2つあるタイプ。
中はウォッシュレット付きで清潔ですし、冬季用の暖房もありました。
トイレ付きの部屋は快適ですが、トイレ無しの部屋でも気にしなければかなりリーズナブルに泊まれるので、好みで選ぶと良いかと思います。
ちなみに、私は泊まったことがありませんが、シモンズ社製のベッドが置かれたツインのベッドルームもあり、こちらにも1人で泊まれます。さすがに宿泊料金はアップしてしまいますが、どのタイプの部屋も1人で予約可能なのはありがたいことだなと思います。
【風呂】★★★★☆ お湯が良いのはもちろん、檜の香りが漂う貸切風呂もすばらしい
大友屋旅館には浴室は3つあります。時間帯で男女が交換になる大浴場と、空いているときに鍵をかけて利用する貸切風呂です。
泉温61度のナトリウムー塩化物・炭酸水素塩温泉を井戸水を加えて温度調節して提供しています。
チェックインから18時まで女湯となる「あたたまりの湯」
まずは1階にある大浴場へ。大浴場は朝晩8時に男女の入れ替えがあります。
向かって左側の「あたたまりの湯」は、チェックインから18時までの時間帯が女湯となっています。
中央に大きな柱のある脱衣所です。
洗面台が2つあり、ドライヤーとカミソリ、シャワーキャップと綿棒が設置されていました。
源泉利用状況が掲示してありました。高温なので加水ありですが、循環消毒なしのかけ流しです。
いくつかの共同源泉と自家源泉を混合しているんですね。
では、浴室へ。
広々としていて大きな窓がある明るい浴室です。
シャワーやカランの設備は新し目で、水圧や温度調節も問題なし。シャンプー&コンディショナーとボディシャンプーが設置されています。
広い浴槽は笹濁りの源泉で満たされていました。
源泉は常時かなりの量がかけ流されており、浸かってみると42度ほどの熱め適温。
ほんのり鉄っぽい香りのする、肘折らしいお湯です。
広々とした浴槽をしばし独り占めできました。あたたまりの湯のほうが広く開放感のある浴室なので、女性の方は早めにチェックインしてゆっくり入るのがおすすめです。
18時からチェックアウトまで女湯となる「美肌の湯」
もう1箇所、18時以降女湯となる「美肌の湯」へ。
こちらのほうがややコンパクトな造りですが、もちろんお湯は同じです。
早朝、誰もいない時間帯に入りに来ました。ドライヤーやシャワーキャップなどの備品も同じものが置いてあります。
加水のみあり、循環消毒なしのかけ流し。
美肌の湯の浴槽は、あたたまりの湯の半分ぐらいの大きさでしょうか。
とは言え、他に誰もいなければ広々使えますね。
浴槽が小さめなほうがお湯が入れ替わるのは早いはずなので、新鮮なお湯を楽しめる……とも言えます。
熱めの源泉で朝風呂を楽しみ、眠っていた体も目覚めて朝食がおいしくいただけそうです。
6時から22時まで利用可能な貸切風呂「なごみの湯」
最後に、3階にある貸切風呂をご紹介します。
こちらは予約制ではなく、空いているときに内側から鍵をかけて入りますが……大友屋旅館は全27室とそこそこ客室数の多い宿なので、週末などはかなり混み合います。
2度目の宿泊のときはなかなか入れなくて、朝食後の時間帯にようやく空いていて入ることができました。特に利用時間の制限もないので、何度も見に来るしか空きを確認する方法がないんですよね。しかも22時~6時までの深夜時間帯は入れないので、競争難易度がけっこう高いです。(実は朝6時ぴったりで入りに行ったんですが、既に入浴中で愕然としたり)夜も入れたらありがたいんですけどね……。
脱衣所はコンパクトですが、必要なものはすべて揃っています。(超個人的には「混むからドライヤーは置かなくても良くない……?」と思ったりも)
浴室へ。
檜がふんだんに使われたすばらしい浴室なんですよ……これが。
洗い場は1箇所。
浴槽は見るからにフレッシュな源泉が満たされています。
貸切なので他の方に気を遣う必要もなく、窓を開けて露天風呂気分を味わえるのもうれしい。
檜の香りと源泉の香りが混じり合う、極上の貸切風呂でした。
【食事】★★★★☆ 食事処の雰囲気も良く、地物食材と地酒を楽しめる
大友屋旅館に旅籠プランで宿泊する場合、食事は朝夕共に3階にある食事処でいただきます。
こちらの食事処はわりと最近作られたのか、客室よりも内装が新しいように思います。
食事処は「しおで」「さわらび」「ぜんまい」の3つに分かれており、「さわらび」は個室タイプの食事処です。
初めて泊まった2020年はこの「さわらび」に案内いただきました。
掘りごたつタイプの個室です。卓上に呼び出しボタンがあるので、ドリンクのお替わりをしたいときなども便利です。
2022年に泊まった際は「しおで」に案内していただきました。
4つテーブルがある食事処ですが、この日使われていたのは私のテーブルと、衝立の向こうのテーブルだけ。
衝立もあるので様子も見えないし、もう1組の方も1人客だったので、気兼ねせずに済んでありがたかったです。恐らく、席については1人客にも配慮したうえで決めておられるのではないかと思いました。
大友屋旅館のドリンクメニュー
大友屋旅館のドリンクメニューは1枚にシンプルにまとまっていました。
生ビール、ハイボール、檸檬サワー、日本酒、焼酎(米・芋・麦)、ワイン、ホッピーまで、一通りのものは揃っています。
日本酒は、1合でオーダーできるのは1種類だけ。あとは1人で頼むとしたら300mlの瓶か、利き酒セットでしょうか。
2022年10月宿泊時の夕食はトマト入りのすき焼きがおいしかった
夕食の席についたところで、岩魚の塩焼きが提供されます。
ちょっとタイミング早い気はしますが(前回2020年に泊まったときは食事の途中できたので)熱々のうちにいただきたいのでお酒を注文します!
ここはやはり「地酒利き酒セット 1200円」を。
「最上川 とろり 原酒」「大吟醸 絹」「いで湯の里」の3種。いずれも肘折温泉のある大蔵村の酒造「小屋酒造」のお酒です。
どのお酒かわかるよう銘柄が書かれた紙が敷いてあり、お酒と一緒にお水の入ったピッチャーも持ってきてくれるのがありがたいですね。
そして……この小鉢3種がなかなか、泣かせるラインナップ。
左側は「あけびの味噌炒め」真ん中が「食用菊を土佐酢で」、右は芋がらの胡麻和えです。
いずれも、山形ならではの食材。特にあけびは「山形県民はあけびの皮を食べる」ということで、秘密のケンミンSHOWなどで取り上げられることも多いですね。
アケビの皮は苦みがあるので、子供のころは食卓に並んでもうれしくなかったですが……大人になるとこのほのかな苦みがいいんですよね。大友屋旅館さんでは味噌炒めで甘辛い味付けにしており、辛口の日本酒によく合いました。
岩魚の塩焼きに添えられているのは「ふき味噌」です。こちらもほろ苦くてお酒がすすむお味。
お刺身は馬刺しです。にんにくとしょうがで。
あえて海の魚のお刺身を出さずに馬刺しなところもいいですね。
鍋物はすき焼き。すき焼きに火を点けるとき「点けてもいいですか?」と聞いてくれるのでうれしい。
すき焼きになぜトマトが……?と思われるかもしれませんが、大蔵村はトマトの産地としても有名なのです。そして、産地だから無理矢理入れているわけではなく、生のトマトをすき焼きの甘めの割り下で煮ると、ちょっと意外なほどおいしいのです。
煮えるとこんな感じに。おそらく「大きなトマトを切っていれる」のではなく「ミニトマトを丸ごと入れる」のがいいんだと思います。トマトの中身の水分が鍋に出てくると、味が薄まってしまうので……。
温泉卵に付けていただくのが大友屋旅館風のすき焼きです。生卵よりも具によく絡むのでおいしいですね。
天ぷらは揚げたてで持ってきていただきました。万願寺とうがらし、海老、舞茸、みずの実、なす、かぼちゃの盛り合わせを抹茶塩で。熱々の天ぷらに塩は、日本酒に合いますね……。
煮物は高野豆腐と八幡巻き、たけのこ。
お味噌汁はなめこの味噌汁で、醤油麹が入っているとのこと。お腹いっぱいだけど軽めにいただきました。
食後のデザートは手作りの胡麻のプリン。梨とあんこが添えてありました。
料理を持ってくるペースも速すぎず遅すぎず、オーダーしたいときは呼び出しボタンを押せばすぐ来ていただけるので、おいしい食事を自分のペースでゆったりいただくことができました。
2022年10月の朝食はモロヘイヤ納豆がうれしい
翌日の朝食も同じ席でいただきます。
品数豊富で食欲が湧いてきますね。
根菜の煮物やナスの揚げ浸しなど野菜たっぷりのおかずが並びます。
左の小鉢は、茹でた葉物野菜を刻んだものの上に、納豆をのせたもの。おそらくですが、野菜は切るとねばりが出る「モロヘイヤ」だと思います。これと納豆を合わせていただくの、栄養価も高いしおいしいな……。
野菜サラダには大蔵村名産のトマトが。焼き鮭も脂がのっていて塩加減もちょうどいい。
温泉卵も一工夫あって、よく見るとすりおろした長芋がそえられていました。モロヘイヤといい、ネバネバ系食材が好きな私的には心ときめくメニューです。
健康的な朝食をお腹いっぱいいただいた後は、チェックアウトの時間までお部屋でのんびり過ごしました。
【再訪したい度】★★★★★ 湯は極上、食事も部屋もお値段以上の満足度がある宿
湯治場風情が今も残っているのは肘折温泉のすばらしいところですが、初めて肘折に来る人には、逆に敷居が高く感じられることもあるんじゃないかと思います。(民宿っぽい宿が苦手な方って一定数いるので)
そんな中で大友屋旅館は、ちゃんと旅館らしい食事やサービスを提供しているのにお値段は控えめで、しかも土曜日でも1人で泊まりやすいのです。
これまで、肘折温泉で5軒の宿に泊まりましたが「初めて1人で肘折温泉の宿に泊まりたいんだけど、どこの宿がおすすめ?」と言われたら、まずはここを勧めると思います。
もちろん、他にもすばらしい宿はあるので、値段高くてもいいなら丸屋さん、家庭的な宿に抵抗がなかったら勇蔵さん、とかいろいろ候補はあるのですが……。
旅をし始めたばかりの頃は「自分がどういう宿を好きか」わからなかったりしますが、どんな好みの人にでも「このお値段でこの食事、サービスってすごくいい宿なのでは?」と思ってもらえるのが、大友屋旅館ではないかなと思うのです。
ちなみに私は2度とも「旅籠プラン」で泊まっているので、今回のレポートは旅籠プランでの宿泊時のものです。食事の品数が少なめになり、歯ブラシなどがつかない「湯治プラン」であれば土曜日でも1万円以下で宿泊可能ですので、小食の方はご検討くださいませ。
【1人旅に優しい度】75点:現時点ではほぼいつでも1人で予約可能な1人旅に優しい宿
泊まりやすさ 15/20
大晦日や元旦以外は一人泊のプランが出ており、1人でもかなり泊まりやすい
食事場所の配慮 15/20
食事処でいただく場合も衝立で区切ってあり、人目が気にならないよう配慮されているのが感じられた
プランの選択肢 20/20
1人で泊まっても2人以上で泊まっても選べるプランの数は同じ。
ドリンクオーダー 10/20
ビール、焼酎、ワインなどのグラスオーダーが可能で、日本酒は1合でオーダーできるのは1種類のみだが利き酒セットあり。全体的に飲み物のメニューがそこまで多いわけではないが、1人でもそれなりに楽しめる。
フリーWi-Fi完備 15/20
Wi-Fi提供あり。速度も問題ないレベル。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。