永遠に浸かっていられそうな、泡つきたっぷりの極上ぬる湯の宿
山梨県甲府市の湯村温泉は、約1200年前に弘法大師によって開湯されたと伝わる歴史ある温泉地です。
「武田信玄の隠し湯」としても名高く、2021年には武田信玄生誕500周年を機に名称を「信玄の湯 湯村温泉」に改めています。
湯村温泉は43度ほどの源泉が多いのですが、今回ご紹介する「弘法湯」では、38度前後のぬる湯、かつ二酸化炭素ガスを含む自家源泉を持ち、泡つきを楽しみながら長湯できるスペシャルなお湯の宿。
さらに食事もおいしく、朝夕部屋食で山梨の旬の味を部屋でテレビを見ながらのんびり楽しむことができます。
人気の宿ということもあり、1人で泊まれるのは平日のみ、かつ空室はかなり少なめなのですが……2食付き1万円台前半から泊まれてお値段以上の満足度を味わえる宿です。
空室のある日に合わせて休みを取っても泊まりに行きたい、湯村温泉の弘法湯について、レポートしたいと思います。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。
甲府駅からバスで10分少々、歩いても45分ぐらい
甲府湯村温泉の最寄り駅は甲府駅ですが、駅から歩くと45分ぐらいかかります。
駅と湯村温泉の間に、温泉銭湯の喜久乃湯温泉や、クラフトビアバーのペルソナブルワリーがありますので、天気が良くて時間があれば、のんびり歩いて行くのも良いでしょう。
バス利用なら、宿に最も近いバス停は「湯村温泉通り」で、このバス停からなら宿まで1~2分で着きます。ただし、湯村温泉通りを経由するバスは本数が少ないので、1つ手前のバス停である「湯村温泉入口」バス停で下車したとしても徒歩8分ほどで着きます。
「湯村温泉入口」バス停を通るバスは本数が多いので、こちらで降りたほうが早く着くことも多いと思います。バス路線はGooglemapに対応しているので、甲府駅から弘法湯までの経路を検索してみると良いでしょう。
また、荷物が多くて歩きたくないようなときは、タクシー利用でも10分弱で着きます。
バス停から宿に向かって歩いていくと「弘法湯」の看板が見えました。
道の先に見える、道路の上に渡り廊下がある建物が弘法湯です。
着きました。
玄関・フロントのある棟が本館で、渡り廊下を渡っていく道の向こうの建物が別館です。
後述しますが、別館には男湯があり、本館に女湯と貸切風呂があります。そして、私が宿泊した部屋は本館にあったので、滞在中に別館に足を運ぶことはありませんでした。
宿の中に入るとすぐに、女将さんが出てきて部屋に案内してくれました。
フロントから客室に向かうところに、ソフトドリンクの自動販売機がありました。
値段はほぼ市価です。アルコールの自動販売機はありません。
建物は新しくはないですが、館内はしっかりと清掃が行き届いていて雑然としているところはなく、清潔な宿でした。
【部屋】★★★★ トイレ・洗面所付きの清潔な和室で快適に過ごせた
宿泊したのは本館2階の「有明」の間です。
貸切風呂にも、大浴場の女湯にも近い位置にあり、ありがたかったです。
お部屋を出て階段を降りればすぐに貸切風呂なのですが……階段の前になんだか懐かしい、テレビゲームの機器が。
埃がたまっているようなこともなく、きれいな状態なのですがはたして今も使えるのでしょうか……?
この階段を降りたところに貸切風呂があります。
お部屋はこちらです。
中に入るとまず、三畳の次の間があり、その手前にトイレが。
トイレはウォッシュレット付きで清潔でした。
客室へ。8畳の和室です。
最近は、1人泊の場合はチェックイン前から布団が敷いてあることも多いのですが、弘法湯さんでは朝夕部屋食ということもあってか、夕食後に布団敷き、朝食前に布団上げと、昔ながらの運用方法で徹底されているようでした。
ガラスケースに入った人形が飾られていたり。不勉強なので価値のあるものなのかわからないのですが……。
掛け軸や壺などを含め、客室内の調度品も埃がついているようなことはなく、すべて清潔に保たれているので雑然とした感じはまったくありません。
じゅうたん敷きの広縁にはテーブルと椅子のセットと、冷蔵庫、洗面所。
冷蔵庫は、昔ながらの瓶を横置きにするタイプのものですが、中に入っているのはアサヒスーパードライの大瓶が数本のみ。
「古い冷蔵庫でお恥ずかしいのですが、空いているところはご自由にお使いくださいね」と、ご案内いただきました。
ポットは湯わかし機能のない魔法瓶タイプのものですが、朝食の前に新しいポットに替えてもらえました。
お茶菓子は「くるみゆべし」です。案内時のお茶淹れは特にないので、自分で淹れていただきます。
バスタオルと名入りのタオルは、ちょっと珍しい鮮やかなイエロー。
浴衣と帯はシックな黒と白のストライプです。
ひと息ついたところで、さっそくお風呂に向かいたいと思います。
【風呂】★★★★★ 夜通し入れる大浴場と貸切風呂で、泡つきたっぷりの極上ぬる湯を楽しむ
弘法湯の浴室は、男女別の大浴場と、空いているときに鍵をかけていつでも入れる貸切風呂が1室あります。男湯と女湯の交換はありません。
女湯と貸切風呂は隣り合っており、本館1階にあります。
男湯は渡り廊下を渡った別棟の別館1階にあるようです。
私は、宿泊した部屋が「女湯」と「貸切風呂」に近い場所にあったので、浴室との行き来がしやすくて楽でした。
もしかしたら、女性のみの宿泊の場合は女湯に近い部屋を用意されているのかもしれないですね。
本館1階にある女湯
まずは、本館1階にある女湯へ。
フロント・ロビーから客室に向かう途中にあります。
脱衣所も広々としていて清潔です。
洗面所に置いてあるドライヤーは、Panasonicのイオニティでした。
このほかにはハンドソープと消毒用アルコール、箱ティッシュがあるのみですので、化粧水などは持参しましょう。
では、浴室へ!
浴室の扉を開けた途端に目に飛び込んでくる、浴槽の縁から恐ろしい勢いで源泉が溢れ出ているすばらしい光景……早く浸かりたい!
リンスインシャンプーとボディシャンプーの設置あり。
リンスインシャンプーが苦手な方は持参したほうが良いでしょう。
シャワー付きの洗い場は、壁際に2箇所あります。こちらで体を洗って……。
いざ!浴槽へ……。
ああ……すばらしいお湯です。
源泉は38度ほどと聞いていましたが、肌寒い季節なので37~38度ぐらいでしょうか。
以前は冬は加温していたそうなのですが、最近は冬でもぬる湯のままかけ流しているようです。ぬる湯好き・炭酸泉好きとしてはもう間違いなく、加温なしのほうがうれしいですよね!
湯口からものすごい勢いで溢れ出て来る源泉。
湯口の周りでは二酸化炭素ガスがパチパチと弾けていました。
じっと浸かっていると肌にびっしりと泡がつきます……すばらしい……。
本当に、いつまででも入っていられそうなすばらしいお湯です。
後ろ髪をひかれつつ上がり、貸切風呂に向かいます!
本館1階にある貸切風呂
空いていればいつでも貸切利用可能な貸切風呂は、1階と2階の間の階段の踊り場のところに入口があります。
踊り場から少し階段を降りたところに浴室があるので、浴室自体は1階の、女湯のすぐ隣に位置しているようです。
浴室の前に温泉分析所が掲示されていました。
源泉名は「地蔵温泉」というのですね。
ph8.3のアルカリ性、泉温37.5度、無色透明・微塩味・微硫化水素臭のナトリウム・塩化物泉です。
では、浴室へ。
脱衣所はこぢんまりとしていますが、清潔です。
貸切浴室にもドライヤーの設置はありますが、化粧水などはなし。
浴室へ!
女湯よりもややこぢんまりとした浴槽に、洗い場2箇所。
リンスインシャンプーとボディシャンプーの設置あり。
浴槽の縁から溢れ出る源泉。すばらしい……。
湯口からは常時、源泉が投入され続けています。
浴槽内には腰かける段差などはありませんが、肩まで浸かったほうが気持ちいい温度なので問題なし。
炭酸弾ける極上ぬる湯を、心ゆくまで楽しみました。
【食事】★★★★☆ 朝も夕も部屋食で、山梨の旬の味覚を楽しめる
弘法湯では夕食、朝食共にお部屋に運んでいただく方式です。
指定した時間の5~10分前になると、係の方が部屋に準備に来てくれます。
弘法湯のドリンクメニュー
ドリンクメニューはこちらです。
ビールはアサヒスーパードライの大瓶で、あとは日本酒、ワイン、焼酎、ウィスキー。ソフトドリンクはウーロン茶とコーラ。
日本酒は、1合オーダー可能なのは燗酒のみで、冷酒は2合瓶でした。
あとはワインや焼酎はグラスオーダー可能なので、種類は多くないですが、1人でも何かしら楽しめるかなというラインナップでした。
夕食は馬刺し付きの「グレードアップ」プランで予約
弘法湯では予約時に夕食のプランを「リーズナブル」「スタンダード」「グレードアップ」の3種類から選びますが、私は唯一馬刺しがつく「グレードアッププラン」で予約していました。
夕食の開始時刻は18時か18時30分から。
ご飯とデザート以外は概ね一気出しな感じでした。
冷酒をお願いすると、山梨県を代表する地酒「七賢」の純米生酒が登場。
白州の名水で仕込んだ、しぼりたてのフレッシュな香りが特徴のお酒で、どんな料理にでも合いそうです。
いただきます!
食前酒はやや甘口の白ワイン。
その隣には白和えと、ごま豆腐かピーナツ豆腐か?もっちりとした食感の甘みのある豆腐で、柚子味噌と柚子胡椒がかかっています。
お品書きがなく、料理の説明もあまりなかったので食材や料理の正確な名称がわからないものもありますが、ご了承ください。
前菜は「生ハムクリームチーズかいわれ巻き」「バイ貝の煮物」「枝豆」です。
お刺身は、鯛、まぐろ、甘えび、かんぱちの4種盛り。
山梨県の方はまぐろが好きで、まぐろの消費額が全国2位らしいのですが、こちらもほどよく脂がのった、いいまぐろでした。
そして、グレードアッププランだけにつく、たっぷりの馬刺しです!
にんにくと生姜が両方添えてあるのもうれしいですね。
脂が少ないさっぱりめの部位の馬刺しなので、量があっても飽きずに最後までいただくことができました。お酒にも、もちろん合います。
しめ鯖と蛸の酢の物も、箸休めにちょうどいいお味。
天ぷらは、茄子、シシトウ、蓮根、エリンギ、長芋、かぼちゃなどの精進揚げ。抹茶塩でいただきます。
他の料理と一緒に最初からの提供だったので、少し冷めてしまったのは残念ですが、かぼちゃの甘みが強くておいしくいただきました。
焼き魚は銀ダラでしょうか。西京漬け焼き。
ちくわや大根、にんじんの炊き合わせという、上品なおでんのような煮物。(おでんだったのかも……?)
紙の鍋に入った寄せ鍋は、帆立、たら、かに、鶏団子、豆腐、白菜、えのきだけ、海老とかなり具だくさん。出汁の味もちょうど良く、ご飯が欲しいなあと思っていたら、係の方が最後のご飯とお味噌汁を持ってきてくださいました。
漬けもの3種盛り。ご飯もつやつやでおいしい。
最後にフルーツをいただいて、ごちそうさまでした!
朝食は品数豊富で、甘めの卵焼きがおいしい
朝食の開始時刻は7時30分か8時から。
部屋食で、食事の前に布団を上げてもらいます。
品数豊富で、旅館の朝食の見本のようなおかずがずらりと並びます。
お味噌汁は、鍋にたっぷり入っていて固形燃料で温めていただきます。具だくさんで体が温まるお味噌汁でした。
甘めの卵焼きが懐かしい味わい。添えられているのはふき味噌です。
焼き鮭、納豆、かまぼこ。
納豆はひきわり納豆で、ねぎと辛子がのっているところにこだわりが感じられますね。
ほうれん草のお浸しに、しらすおろしもうれしい。
ヨーグルトとお茶をいただいて、ごちそうさまでした!
朝食後もお風呂に入りに行き、10時のチェックアウトぎりぎりまでのんびりさせてもらいました。
【再訪したい度】★★★★★ とにかくお湯がすばらしく、食事も大変おいしかった
湯村温泉では、これまで何軒かの宿に泊まったことがあり、どの宿もなかなか良いお湯だと思っていたのですが……弘法湯の自家源泉は他のどの宿のお湯とも違っていました。
とにかくいつまででも浸かっていたくなるような絶妙な温度で、湯量・泡つきもすばらしいのです。浴室も清潔で、夜通し入浴可能なのもありがたいですね。
館内も清潔で快適に過ごせますし、食事もおいしい。それでいて、リーズナブルなプランなら1万円台前半で2食付きで1人で泊まれるのですから、人気が出るに決まっています。
1人で泊まれるのは平日のみの宿ですが、さらにその平日も、空室は少なめです。
Web予約では「先の日程で空室を見つけたら予約し、その日に休みを取る」ぐらいでないと泊まれないような状況ですが(電話すれば空室ある可能性もなくはないですが、どうなんでしょうね)きっとまた、泊まりたい宿です。
【1人旅に優しい度】70点:予約難だが、予約さえ取れれば1人で楽しみつくせる宿
泊まりやすさ 5/20
1人で泊まれるのは平日のみ。
人気の宿で、空室は少なめ。ただ「1人泊だから予約が取りにくい」わけではなく「2人」で検索しても空室状況は変わらないので、そもそも人気があって予約は取りにくいもよう。
食事場所の配慮 20/20
朝夕部屋食で、1人で気兼ねなく食事できる。
プランの選択肢 20/20
1人で泊まっても2人以上で泊まっても、選べるプランの数はまったく同じ。
2食付きの宿泊が基本で、夕食の量で「グレードアップ」「スタンダード」「リーズナブル」の3種類のプランに分かれる。
ドリンクオーダー 10/20
ビールはスーパードライの大瓶。
日本酒はお銚子は1合でオーダー可能であとは2合瓶が1種。
ワイン、焼酎、ウィスキーはグラスオーダー可能。飲み物の種類は少なめ。
フリーWi-Fi完備 15/20
室内でWi-Fi利用可能。速度も特に問題なかった。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。