佐賀県 嬉野温泉 源泉かけ流しの宿 嬉泉館(きせんかん)
嬉野温泉にある嬉泉館(きせんかん)は、地元の方の間では「嬉野と言えばあの湯」と必ず名前があがる小旅館です。
しかし、Webメディアなどによくある「嬉野温泉の日帰り入浴おすすめ10選」というような記事で、この宿が紹介されることはあまり多くありません。
おそらく、じゃらんや楽天などをはじめとしたネット予約にも対応しておらず、電話予約のみという、昔ながらの宿だからかなと思うのですが。
今回は事前に調べて「嬉野で日帰り入浴するならここでしょう!」と狙って伺ったのですが、思っていた以上にすばらしいお湯でしたので、ご紹介したいと思います。
残念ながら一人泊の受付がない宿だけど、お風呂だけでも入りたい!
2泊3日の佐賀・福岡旅行の初日。
金曜日の早朝に羽田空港を出発して福岡空港へ。そこから電車とバスを乗り継いで佐賀県の嬉野温泉に着いた私は、まずは「嬉野温泉」という温泉地を知るきっかけにもなった「嬉野温泉湯どうふ」を食べに「宗庵よこ長」へ。
自家製の豆腐を使った冷や奴と地酒、そして、温泉の成分で豆腐がトロトロになった温泉湯どうふの定食をいただいて満足しましたが、宿にチェックインするまではまだ少し時間があります。
せっかくなので、評判のいい「嬉泉館」で日帰り入浴をさせてもらおう!と思い、少し酔いを覚ましてから歩いて向かうことにしました。
九州八十八湯めぐりの口コミの良さに惹かれて
「九州温泉道」とか「九州八十八湯めぐり」などと呼ばれる、九州全域にある指定された温泉を巡るスタンプラリーのような体験型イベントがあるのですが、嬉泉館のことを知ったのは、その対象施設として選定されていたことがきっかけでした。
九州八十八湯巡りは、別府八湯温泉道を手本に(したに違いないと別府の茶房たかさきで聞いた)もともとはJR九州が事務局となって発足した取り組みでした。九州新幹線の開業と同じぐらいのタイミングで始まったので、JRの利用促進の意味合いもあったのでしょうね。
対象施設は、TVチャンピオンの温泉通選手権を連覇したことで知られる郡司勇さんをはじめとした「温泉名人」によって選ばれ、かつ「公共交通機関で行きやすい場所にある温泉」が選ばれていました。
正直に言うと、中にはちょっと微妙そうなところが選ばれている感じもしましたが「電車とバスで行きやすい日帰り温泉まとめ」というだけでも、私にはかなりありがたい温泉リストだったのです。それで、スタンプを集める気はあまりなかったものの、九州旅行の際には参考にしていました。
2015年4月から、事務局がJR九州から「九州観光推進機構」に移行し、それ以降は車がないと行きづらい対象施設も増えてきましたが……とは言え比率としてはいい温泉が多いですし、日帰り入浴の営業時間などの情報も随時更新されているので、情報に一定の信頼性はあると思っています。
それに、対象施設の詳細ページに、入浴した方による口コミが書いてあり、お湯の好みは人それぞれだとは思いますけど、口コミを読むとだいたいのところがわかります。
嬉泉館は、この口コミでたいそう評判が良かったので、これは行ってみたい!と思ったのです。
嬉野温泉バスセンターからも徒歩2分と近いです。
本当は泊まって楽しみたいところでしたが、ネット予約が不可なうえに、公式サイトの「宿泊プラン」のページには「各プラン2名様よりのご利用をお願い致します」の文字が……。
直前に電話すれば1人で泊まれる可能性もなくはないですが、九州に行くのに、直前まで宿を決めないでおくのもちょっと不安ですしね……宿泊は、もう一軒気になっていた別の宿にして、日帰り入浴に伺ったのです。
こちらが嬉泉館の外観です。玄関は階段を上った2階にあります。
嬉泉館の日帰り入浴の入浴料金・営業時間・定休日
嬉泉館の日帰り入浴の入浴料金は大人700円、子供(3歳~12歳)300円。
営業時間は午前10時から午後9時までとかなり長めです。
定休日はありませんが「混雑時不可」とのことでした。
建物の前に看板があり、駐車場についての案内がありました。
その後ろに、裏返されている看板があったので、何が書いてあるのかと後ろに回って見てみると「誠に申し訳ありませんが、本日は、外来入浴はできません」との文字が。
混雑している日は入場を制限するということなのでしょうね。この日は金曜日でしたが、土日の午後なんかは営業していない可能性も高いのではないか、と思いました。
日帰り入浴を「定休日はないけれど混雑時不可」としている宿はけっこう多いですが、外から見てもわからず、受付まで行って「今日はやってない」と言われてしょんぼりしたことはけっこう多いです。(事前に電話すればいいことではありますが)
外に「今日は日帰り入浴できないよ」との旨をわかりやすく提示してくれるのは、とても親切だなと思いました。
階段をのぼり、2階にある玄関へ。
なんだか懐かしくなるような……田舎の住宅でよく見るタイプの玄関です。
まだ宿泊客はチェックインしていない時間帯だと思いますので、館内は静かです。
「こんにちはー」と声をかけると、中から女将さんらしき人が現れて、案内してくださいました。
帳場は、玄関入ってすぐのところにありました。
入浴料金を支払い、浴室に貴重品ロッカーなどはないとの説明を受け、お財布を帳場で預かってもらいます。
そして建物の奥へ。
階段のところに来ると「岩風呂」への案内板がありました。浴室は1階なんですね。
懐かしい感じの「温泉分析表」も貼ってありました。
角を曲がると、男女別の浴室の入り口です。
脱衣所へ。
新しくはありませんが、清潔に掃除されており、脱衣棚の奥に洗面所があります。
洗面所にはブラシとコーム、Panasonicのドライヤーなどが設置してありました。
それと、嬉野温泉の温泉水を使った化粧水のサンプルが2種類置いてありました。
2種類の化粧水のうち右側のほうは、お土産屋さんや通販でもよく見かけたのですが、左側の青いボトルはほかでは見たことがないものでした。
ポスターも貼ってあったのでよく見ると、嬉野温泉の中でもこの嬉泉館の源泉を65%使用した化粧水とのこと。お風呂上がりに使ってみると、とろっとした肌触りで肌への浸透性も高く、香りも良くてとても気に入ったので、帰りに帳場で購入してしまいました。
通販したいぐらい気に入ったのですが、販売元のサイトが「準備中」になっており、製造終了してしまったのでしょうか……残念です。
浴室の扉の横には、源泉分析表が掲示してありました。
ナトリウム・炭酸水素塩ー塩化物温泉。
ph8.2のアルカリ性温泉で、メタけい酸やメタほう酸が含まれています。このあたりが、肌をつるつる、しっとりさせ「美肌の湯」と言われる理由でしょうね。
【風呂】★★★★★ 佐賀市の方から「県内でここが一番」とお墨付きをいただく
では、いざ浴室へ。
内湯のみで露天風呂はありませんが、岩風呂となっており雰囲気があります。
浴槽は、手前側と奥側で2つに分かれていました。
壁際にはシャワー付きの洗い場があり、リンスインシャンプーとボディシャンプーも設置されています。
体を洗って、まずは手前側の浴槽に身を沈めました。
40度ぐらいの適温のお湯は、見た目は透明で目立つ湯の花や強い香りもありませんが、まとわりつくようなとろっとした肌触りです。
それも「ぬるぬる」ではなく「とろとろ」なのです。浸かっていると「これは絶対肌にいいわ……」と思える気持ちよさ。
源泉は壁際の蛇口から細く投入されていました。蛇口の先に白く固まった温泉の成分が、一見すると透明で特徴ないようにも見える、このお湯の湯力を物語っているように思います。
奥のほうの浴槽に移動すると、こちらの浴槽のほうが少し温度が高いようでした。
ほかの方の入浴記を読むと、手前が熱い日もあれば奥が熱い日もあるようで。
ただ、宿のこだわりとしてけして加水はせずに、熱い新鮮な源泉と、あらかじめ冷ました源泉を混ぜることによって温度を調整しているんだとか。
源泉100%の新鮮な自家源泉だからこそ味わえる、極上の浴感なのでしょうね。
飲泉用のカップも置いてあったので、口に含んでみると、ほのかに温泉の良いかおりがして、癖のない飲みやすい源泉でした。
2つの浴槽を行き来して楽しんでいたら、後から入ってこられた方に「どこから来られたの?」と話しかけられました。
「東京です」と答えると
「よくここを見つけられたわねえ。私は佐賀市から来てるんだけど、佐賀県内ではここが一番よ」
と仰っていました。
お湯の好みは人それぞれだとは思いますが、地元の方が「一番好きなお湯」と言われると、お墨付きをもらったようでうれしくなりますね。
そして、お話したときは「佐賀市と嬉野温泉の距離や位置関係」もあまりよくわかっておらず「そうなんですね。ほんとにいいお湯ですよねうらやましい」とか言っていたのですが……。
後から調べると、佐賀市から嬉野温泉までは車で1時間弱はかかるし、道中には武雄温泉だってあるのに、わざわざ嬉野温泉の嬉泉館を目指して来ていたのか、ということがわかり。
たしかに、1時間ぐらいかけても入りにきたいいいお湯だったなあと思い返しました。
【再訪したい度】★★★★★ このお湯に入るために、また平日嬉野に行きたい
露天風呂はなく内湯のみですし、小さな旅館の昔ながらの浴室です。景観や設備の整った浴室を求める方にはおすすめできませんが「とにかくいいお湯に浸かりたい!」という思いが強い方にはきっと気に入っていただけるだろう、すばらしいお湯でした。
混雑時は日帰り入浴の営業を行わないこともあるようですので、次回嬉野温泉に行くときは、このお湯にのんびり浸かるためにまた、平日に行きたい!と思いました。
また現在は、感染症対策などのために、日帰り入浴に制限を設けている宿も多いと思いますので、入浴に行く際はこちらに書かれている電話番号から、事前に営業状況を確認してから向かったほうが良いかと思います。
さて、嬉泉館を出た後はこの日宿泊する宿に向かいます。
先日発売された著書でも紹介している宿です!