「美味しんぼ」39巻でも紹介された嬉野温泉湯どうふの老舗
温泉宿に泊まると、朝食で温泉水を使った湯豆腐が提供されることがあります。
温泉水で温められた豆腐は目覚めたばかりの胃にも優しく、おいしくてありがたい一品で、旅館の朝食の定番料理の一つだと思っていました。
しかし……佐賀県の嬉野温泉の温泉湯どうふは、ほかの温泉の湯豆腐とはひと味違う!という話を聞き、いつか行ってみたいと思っていたのです。
それと言うのも、漫画の「美味しんぼ」の39巻に、嬉野温泉の温泉湯どうふが出てくるのです。
先日上梓した初めての著書にもそんなことを書いていますが(1章のはじめのほうに)、私は、好きな漫画や小説に出てくる料理やお店に弱いのですよね……。なので、嬉野温泉に行くなら必ず、美味しんぼに登場する「宗庵よこ長」で食べたいと思っていました。
念願叶って初めて嬉野温泉に伺い、温泉湯どうふを堪能してきましたので、レポートしたいと思います。
福岡空港から嬉野温泉、宗庵よこ長までのアクセス
今回の旅は金曜日に休みを取り、金土日の2泊3日の行程で福岡・佐賀の温泉地を旅しました。
初日は早朝の飛行機で羽田から福岡空港へ。
福岡空港から電車で佐賀県の嬉野温泉へ向かい、湯豆腐など楽しんだ後は嬉野温泉でそのまま宿泊する予定です。
早朝の飛行機で博多へ向かい、電車とバスを乗り継ぎ嬉野温泉へ
福岡空港から博多駅までは地下鉄でわずか6分。福岡の地下鉄の内装、なんか洒落てるわーと思いながら乗車していると……。
電車ドアに何か書いてありますね。
ちょっと目つきの悪い黒い犬。かわいい。
JR九州の特急「あそぼーい!」のマスコットキャラクターのくろちゃんだそうです。
博多駅からは、JR特急「みどり号」に乗車します。
みどり号の車内。
地下鉄もそうでしたが、JR九州の車内って、なんだか雰囲気ありますね。
途中停車駅の鳥栖(とす)駅。
ここは、藤井フミヤ氏がチェッカーズとしてデビューする前、国鉄職員だったころに半年間ほど働いていた駅です。下車しませんが、ファンなので記念に写真を撮る。
1時間ちょっとの乗車で武雄温泉駅に着きました。ここはもう佐賀県です。実は今回、佐賀県に初めて足を踏み入れました。
武雄温泉駅南口のバス停からバスにのり、嬉野温泉まで30分程度です。
武雄温泉駅南口は、このときは工事を行っていたので、現在は印象が変わっているかもしれません。
30分の乗車で嬉野温泉バスセンターへ到着。
本日宿泊する宿はこのバス停の目の前にあるのですが、チェックイン可能時間までまだ時間があるので「宗庵よこ長」へ向かいます。
嬉野温泉バスセンターから「宗庵よこ長」へ歩く
バスセンターから宗庵よこ長までは徒歩3分ほど。
途中「美肌の神様」だという豊玉姫神社の前を通ります。
嬉野温泉がぬるぬる、ツルツルする泉質で「日本三大美肌の湯」のひとつに数えられることに関連するのでしょうね。豊玉姫神社の遣いは「なまず」だそうです、ぬるぬるするからか……。
宗庵よこ長に着きました。
土日は観光客で混雑するそうですが、このときは金曜日のお昼どきを少し過ぎたぐらいの時間帯でした。
宗庵よこ長の営業時間・定休日
宗庵よこ長の営業時間は午前10時から午後9時まで。
ラストオーダーは午後8時30分です。通し営業なので、昼食と夕食の間の時間を狙えば入りやすそうですね。
定休日は水曜日ですが、水曜日が祝日の場合は前後に振替のこともあるそうです。
おすすめのメニューが店頭の看板に出ています。
湯豆腐のほか、カツ丼などの丼ものや、天ぷら定食などの定食メニューもあるようです。
「ふわふわのとろける食感」の湯どうふ……。
向こうにソフトクリームの模型も見えますね。では、入ってみたいと思います!
宗庵よこ長の店内、テーブル席と座敷席あり
宗庵よこ長には座敷席とテーブル席があり、4人掛けの席が中心のようです。 テーブル席に案内されました。
この日は一人で来ているお客さんも多かったですね。
お隣の席では、スーツ姿の男性1人客が、食事を終えた後、電話で商談をしていました。それが許されるぐらいの混み具合のほうが気楽でいいですね。
座敷席には大人数で座れる席も。
地元の高校生らしい女子4人組が座敷にいました。
高校生が湯どうふ……?いや、湯どうふ以外のメニューもあるからか。
壁には有名人のサインがたくさん飾ってありましたが、美味しんぼの原作者である雁屋哲さんのサインもありました。作画は別の方なので、イラストはありません。
宗庵よこ長のメニュー
湯どうふ以外も実はバリエーション豊富だった、宗庵よこ長のメニューをご紹介したいと思います。
ドリンクメニュー
まずはドリンクメニュー。生ビールは一番搾り。
そのほか、サワー、酎ハイ、ハイボールなど。
ワインは甲州ワインなんですね。グラスでもオーダー可能です。
焼酎は芋、麦、米。日本酒も1合からオーダー可能なお酒が5種類あるのがうれしいですね。
それから、嬉野と言えば「嬉野茶」の産地ですから「いいちこの嬉野茶割り」というメニューがおすすめされていました。私は焼酎はあまり飲まないのですが、これはちょっと気になってしまいましたね。
お茶割りのほかに、嬉野茶の風味のついたいいちこもあり、トニックウォーター割りかソーダ割りがおすすめとのこと。こちらも気になる。
しかし、日本酒好きな私は、テーブルの調味料置き場のところに目立つように置かれた「能古見(のごみ)」なる日本酒に、やっぱり一番心惹かれてしまいました。
「メロンやバナナを思わせる芳しい果実香」
すごく好みな感じです……。
甲州ワインとノンアルコールビール。赤ワインのハイボール。
それから自家製の豆乳もありました。こちらのお店、お豆腐も自家製なんですね。
ということは、豆乳はその日出来たてなのではないでしょうか。お酒を飲まないなら豆乳もいいなあ。
食事のメニュー
続いて食事のメニューです。まずはやっぱり、名物の湯どうふから。単品と定食でオーダーできます。
基本の湯どうふのほか「月見湯どうふ」「寄せ湯どうふ」「肉ちり湯どうふ」「魚ちり湯どうふ」などもあるんですね。
「よこ長会席」も気になるけれど……今日は旅館で夕食をいただくし、お昼の時間としては少し遅めなので、あまりガッツリはいかないほうがいい気がしますね。
うどんや蕎麦などのメニューも豊富です。
玉子丼、カツ丼など丼ものに、とんかつ定食などの定食メニュー、カレーも。ぜんざいなどのデザートも少し。
女子高生グループが何を食べていたのかはわかりませんが、定食や丼ものは値段も高くないので、普段の食事にも使えそうですね。
それから「冷ややっこ」や「ごぼうから揚げ」「かしわのから揚げ」などのおつまみメニューもわりと豊富に揃います。
うーん、ここはやっぱり、おすすめの湯豆腐の定食に、何か一品おつまみを追加、とかが良いような気がしてきました。
おからコロッケもおいそうですね。おからも、豆腐を作る際の副産物ですから、豆乳と同様に自家製なんでしょうね。
名物の湯どうふはお持ち帰りも可能なようです。
お豆腐は地方発送も可能とのこと。
さて、何を注文しましょうか。
湯どうふ定食と冷ややっこで冷酒を一杯
おつまみを1品とお酒、それから湯どうふ定食を注文しよう!と思い、迷った末にオーダーしたおつまみは、冷ややっこです。
夕食までの時間も考えてさっぱりめのつまみで……と思ったのですが、かなりガツンと大きなお豆腐です。
そしてお酒は、やっぱり一番気になった「能古見(のごみ)」の純米吟醸を!まずは一口、いただきます!
バナナのような香り、ほんのり甘みがあり、おいしいお酒です。
続いて大きな豆腐に醤油を回しかけます。
ずっしりと中身が詰まった固めの木綿豆腐です。
箸で切って口に運ぶと、たしかに、豆腐の味が濃いです。これはいい冷ややっこだわ……と思いつつ、お酒を飲んでいると間もなく、来ましたよ湯どうふ定食が!
一人用の土鍋に湯どうふ、ご飯、薬味、タレ。
土鍋を開けるとふわーっとお豆腐のよい香りが漂います。
定食なので小鉢や漬けものも何品か。
ポテトサラダ、煮豆など。九州ということで醤油が甘いからか、この店の味付けがそういう傾向なのかわかりませんが、お惣菜はどれも甘みを感じる味付けでした。私は嫌いではないです。今日のお酒にはちょうど合いましたし。
湯どうふの食べ方の解説もありました。
美味しんぼにも書いてあったのですが、こちらの湯どうふは、豆腐はタレにつけずにそのままいただくのです。湯どうふ自体に味が付いているんだとか。
タレは、豆腐以外のエビや野菜をいただくとき用です、ということが説明されていました。
鍋の中にはエビ、白菜、かまぼこ、椎茸、そしてお豆腐が、白っぽい汁の中に浸かっています。
美味しんぼの中では、このお店に連れてこらてた人たちが「牛乳の中に豆腐が入っている」と勘違いしていました。牛乳というほど真っ白ではないけれど、表面に白いものが浮いて固まってる感じは、そんな風に見えなくもないかな……。
39巻に掲載されています。
れんげで豆腐をすくってみると……。
豆腐の角が取れて滑らかな形になっています。
これは、嬉野温泉の源泉がアルカリ性なため、豆腐が柔らかくなり、一部は溶け出してしまうんだそうです。
何も付けずにこのまま口に入れると、ほんのりと出汁と塩味が付いており、優しい味わいで大変おいしい!
しっかりとした腰のある豆腐なのに、とろりと口の中で溶けるのよ!
それも今できたばかりのような芳醇な味!
と、作中で栗田さんがおっしゃってましたが、たしかに、豆腐自体の腰はしっかりあるのに、表面が溶けて、汁と一体になっている感じがおもしろいというか、他では食べたことのないお味です。
薄味なんですが、お酒にもご飯にも合います。
豆腐が溶け出した汁がおいしくて……ご飯をれんげですくって、汁に浸していただいたりしました。
あっという間になくなってしまい、名残おしい……。
こりゃあいかん!東京から佐賀まで通って来なけりゃならなくなる!
などと作中で言われており「そんな大げさな」と思っていましたが、たしかに、他ではまったく食べたことのない湯どうふだったので、これを食べにまた嬉野温泉に来なくては!と思ってしまいました。
【再訪したい度】★★★★★ 休日は混みそうなので、平日にまた必ず行きたい
この日は、平日の午後ということもあってすんなり入れましたが、休日は混むらしく「相席をお願いする場合もある」と書かれていました。
伺ったのは2020年の1月の話ですので、現在は感染症対策で相席はしていなさそうな気もしますが、そうなると時間がかかりますから、混雑する日は待ち時間が発生する可能性もあると思います。
できれば平日に伺うか、通し営業で午前10時から営業していますので、食事時をはずした時間帯に伺うのが良さそうだなと思いました。カウンター席や2人掛けのテーブル席がないので、1人で混んでいるタイミングで伺うのはちょっと勇気がいりますので。
メニューも豊富で、食事にも飲みにも使える良い店で、看板メニューの豆腐メニューは大変おいしかったです。次回は湯どうふ単品で頼んで、他に気になったつまみを何品か頼んでみたいですね。
この後は……まだ宿のチェックインまで時間があるので、一軒日帰り入浴に伺います!