庄内の旬の食材を朝夕個室食事処でいただける、一人旅に優しい宿
湯田川温泉九兵衛旅館(くへえりょかん)は、山形県鶴岡市の奥座敷と呼ばれる、三方を山に囲まれた静かな温泉地です。
鶴岡市のもう一つの代表的な温泉地である湯野浜温泉は、団体客も泊まれる大型旅館やホテルも多く、海辺のため海水浴シーズンに特に賑わいを見せるのに対し、湯田川温泉は小規模旅館ばかりで本当に静かです。
鶴岡市内の高校を卒業している私にとって、湯田川温泉は身近すぎて「わざわざ泊まりに行きたい」と場所ではありませんでした。
しかし、国内旅行が趣味になってから、温泉旅行好きの知人たちの間で「湯田川のあの宿はすごい」という噂を聞くことが多く、2017年の3月についに泊まりに行ってみたところ、あまりにもすばらしい宿だったので、同じ年の12月にまた泊まってしまいました。
特に、食事は目にも舌にもおいしく、2017年に泊まった温泉宿の「部屋」「風呂」「食事」が良かったおすすめ宿ランキングの記事では、九兵衛旅館さんを食事部門の1位に選ばせていただきました。
お風呂やサービスもすばらしく、しかも休前日の1人泊もOKという宿なので、この5年間、著書やメディアでも何度も紹介させていただいています。私自身、2021年9月と2022年6月に再訪しましたので、最新の情報と写真を追加して再度レポートしたいと思います。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。
- 庄内の旬の食材を朝夕個室食事処でいただける、一人旅に優しい宿
全13室、朝夕食とも個室料亭でいただく、10歳未満お断りの大人がゆったり過ごせる宿
九兵衛旅館に宿泊してみて思ったのは「とても静かでくつろげる宿だ」ということです。
湯田川温泉はもともと静かな温泉地ではありますが、その中でも九兵衛旅館さんは、バスが通る一番大きな通りから少し奥まったところにあります。宿の中にいて外を歩く人の声が聞こえるということはありません。
また、九兵衛旅館さんは2007年4月1日より、お子様のご利用を10歳以上(4年生)に制限しているそうです。そう言えば、浴室や共同スペースでお子さんの声が聞こえるということがありませんでした。
すぐ近くにある姉妹館の湯田川温泉 珠玉や(たまや)では特に年齢制限などはなく、きちんと子供料金の設定もあるようですから、小さなお子さんと一緒に泊まる場合は珠玉やさんを利用されると良いのかなと。
ちなみに九兵衛旅館さんは大浴場がメインの旅館ですが、反対に珠玉やさんは貸切風呂のみの宿なんですよね。そういう意味でも、宿のほうで考えてコンセプトを分けているんだろうなと思います。
湯田川温泉までのアクセス
湯田川温泉は、最寄り駅の鶴岡駅からは車で20分ほど。
駅からバスも運行していますが、土日は少し本数が減って5往復の運行となり、少々少なめ。
タクシーを使うとだいたい3000円ぐらいでした。
鉄道ではなく空の便を使う場合は最寄りの空港は庄内空港です。庄内空港からリムジンバスで鶴岡駅に向かい、そこから路線バスに乗り換えることになるので少々面倒かもしれません。
九兵衛旅館の送迎
九兵衛旅館の公式サイトによると、送迎は「庄内観光物産館から旅館まで」かつ「2名以上で宿泊のときのみ」承っているそうです。
「庄内観光物産館」は、「山形市内」やあるいは「仙台方面」「東京方面」からの高速バスの停留所となっている施設です。鶴岡駅前まで運行している高速バスも多いのですが、物産館にのみ停車して駅をスルーしてしまうバスもあるため、九兵衛旅館さんでは観光物産館までのみ、送迎を行っているのですね。
送迎可能な時間は14時~18時までと、翌日は8時から11時までだそうです。
1人で泊まる際は送迎は利用できないため、バスかタクシー利用になります。九兵衛旅館は11時が最終チェックアウト時刻ですが、土日は湯田川温泉を「9時31分発」か「12時15分発」のバスを利用することになるため、ちょっと不便でしたね。結局11時にタクシーを呼んでもらいました。
鶴岡駅からバスで湯田川温泉へ
鶴岡駅の1番バス乗り場から、13時18分発のバスに乗ります。
13時45分ごろ、湯田川温泉停留所にバスが到着します。終点ではないので、乗り過ごさないようにきちんとアナウンスを聞いておかないといけません。
九兵衛旅館さんのチェックイン可能時刻は14時からなので、それまで時間を潰す意味もあり、ちょっとお店に立ち寄ります。
湯田川温泉内にコンビニなどはないですが、こちらの「ばろす湯田川」さんで、お酒やソフトドリンク、ちょっとしたおつまみなどを買うことができます。
バス通りから1本奥に入った場所に九兵衛旅館はあります。
「田の湯」という小さな共同浴場の隣に九兵衛旅館さんはあります。
14時ちょうどに、九兵衛旅館さんに向かいました。
九兵衛旅館にチェックイン
九兵衛旅館さんは全館畳敷きでスリッパ不要の宿です。
冬の間は裸足で歩いても足が冷たくならないよう廊下にも床暖房が入っていてました。
チェックインの手続きを行います。ロビーからは美しい中庭を眺めることができ、中庭に出ることもできます。
春から秋にかけては、中庭の池では鯉が泳いでいました。
12月下旬は雪景色も楽しめます。
コロナ禍以前はチェックイン時にロビーでウェルカムドリンクをいただいていましたが、現在はお部屋の冷蔵庫に入っているものをいただく形に変わっています。
【部屋】★★★★☆ すべての客室でBlu-ray視聴可能、お茶うけが非常においしい
九兵衛旅館の建物は3階建てで「花の館」と「時の館」の2つの棟に分かれています。
また、お部屋のタイプは一般的な和室のほかに「メゾネット」や「温泉浴室付きの部屋」など6種類のお部屋があり、1人でも4種類のお部屋に泊まることができます。
何度か1人で宿泊していますが、最もリーズナブルな8畳和室の部屋を予約しています。8畳の和室は「時の館」の2階と3階にある客室です。
九兵衛旅館さんはエレベーターがないので、下の階を希望する場合は、あらかじめ申し出ておいたほうが良さそうです。
全室禁煙&全室インターネット利用可能
九兵衛旅館さんは、室内&個室料亭&ラウンジなどはすべて禁煙です。
館内に1箇所だけ喫煙所があり、吸いたいときはそちらへどうぞ、という対応でした。
また、九兵衛旅館さんでは全室にWi-Fiが完備されており、接続してみるとスピードも問題ありませんでした。ありがたいことですね。
2021年9月に宿泊した時の館2階の8畳和室「新緑」
2021年9月に宿泊した際は、時の館2階にある「新緑」のお部屋に宿泊しました。
8畳の和室で、チェックイン時から布団が敷いてありますが、1人なら特に狭苦しさは感じません。
テレビは比較的大きめで、全室にBlu-rayプレイヤーが設置してあります。
DVDの貸し出しもしており、庄内地方は映画の撮影誘致を盛んに行っているので(「おくりびと」などが有名ですね)庄内で撮影された映画や、鶴岡市出身の作家藤沢周平さん原作の映画などが置いてあるようでした。
これは2台とも空気清浄機、なのでしょうか……。
ちなみに扇風機も置いてありますが、エアコンもしっかり効きます。
お布団は厚手のマットレスでとても寝心地が良いです。
お部屋に置いてある寝間着は作務衣タイプのものですが、希望すれば浴衣をお借りすることもできます。歯ブラシやタオルのセットと、足袋ソックス。
縁側も畳敷きです。
広縁からは庭を眺めることができます。
広縁にあるドアを開けると、洗面所とトイレが。
いずれも清潔で、トイレはもちろんウォッシュレット付き。
ちなみに、冷蔵庫やお茶セットはお部屋に入ってすぐの、踏込みの橫にあります。
下の扉を開けると冷蔵庫があり、中にはサービスのお水のペットボトルと、ウェルカムドリンクサービスがなくなった代わりのフルーツジュースが。
お茶セットと湯沸かしポット、グラスと栓抜きも置いてありました。
フルーツジュースは、2021年に宿泊した際に入っていたのは「ぶどうジュース」。高級感のあるジュースでした。
また、9月に宿泊した際のお茶うけのお菓子は「芋きんとん」でした。
舟和の芋ようかんにバター風味を加えてさらに滑らかにしたような味わいで、大変気に入りました。
2022年6月に宿泊した時の館3階の8畳和室「紅葉」
2022年6月も、前年と同じ「8畳和室」のお部屋を予約しましたが、今回は同じ時の館の1つ上の階の「紅葉」のお部屋に案内いただきました。
室内の造りや設備はほぼ同じなので、簡単にご紹介します。
チェックイン時からお布団が敷いてあるのも同じ。
広縁の椅子とテーブルは、2階のお部屋とは少しタイプのことなるものでした。
また、このときのお茶うけは「庄内の若草餅」です。
実は若草餅は「春限定」で、それ以外の季節はきんとんが出ているのだそう。若草餅もきんとんも「旅館の部屋に置いてあるお茶うけ」のレベルを超えたおいしさで「食事がおいしい宿はお茶うけもおいしいんだな」と感心したり。
また、ウェルカムドリンクのジュースは、このときは「ミックスジュース」でした。
【風呂】★★★★☆ 幻想的な内湯から展望貸切風呂までバリエーション豊富に楽しめる
湯田川温泉九兵衛旅館で使用している源泉は1種類のようで、すべての浴室に同じ温泉分析票が置いてありました。
ナトリウム・カルシウムー硫酸塩温泉。ph8.7のアルカリ性の源泉です。
お風呂は、九兵衛旅館内に大浴場が2つと貸切風呂が1つ。
大浴場は20時で男女の浴室が交代になりますが深夜も入浴可能で、朝10時まで入れます。
貸切風呂は空いていれば内側から鍵を掛けて自由に貸し切れる仕組みで、24時間入浴可能とのこと。
それと、すぐ隣にある姉妹館「珠玉や」さんの貸切風呂も利用できます。利用時間は「14時~16時」と「18時~24時」「8時~10時30分」です。
混み合う夕食前の時間帯と深夜以外はいつでも入れるということで、こちらもかなり自由がきく仕組みですね。
金魚と一緒に入浴できる!幻想的な内湯・川の湯
まずは、チェックインから20時の間女湯となっている「川の湯」に入りに行きます。
ちなみに「川の湯」に向かう途中に、飲み物の自動販売機が設置してありました。こちらが館内にある唯一の自動販売機になります。
ジュース類はなく、お茶や缶コーヒー、ハイボール、アサヒスーパードライなどわりと硬派なラインナップです。ナッツなどのおつまみの販売もあり。
川の湯の脱衣所。
アメニティ類も豊富です。男女別の化粧水と乳液、コットンと綿棒、シャワーキャップにブラシ。
ドライヤーはPanasonicのイオニティです。
脱衣所の奥には冷水機も。
入浴前の水分補給をすませてから、いざ浴室へ!
壁面に金魚が泳いでいる大きな水槽が埋め込まれており、金魚を眺めながら湯に浸かるというちょっと不思議な雰囲気の浴室です。
洗い場に設置してあるシャンプー&コンディショナーとボディシャンプーは、ポーラのアロマエッセシリーズと、お茶シリーズ。
体を洗ってから浴槽へ。し金魚、いっぱいますねえ……大きいし。
みんな元気に泳いでいます。温かいから大きくなるのかしらね……。
金魚たちを眺めつつ、白い、美しい楕円形の浴槽に身を沈めます。
腰掛ける段差がしっかりあるのがうれしい。お湯は41度ほどの熱めの適温です。
湯口のお湯は、時折止まることもありましたが、ほのかに硫黄の香りがして、新鮮さを感じさせる良いお湯でした。
堪能して浴室を出ると、源泉使用状況が書いてありました。
加水なし、加温あり、かけ流し、消毒は深夜のみありとのこと。
入浴する人の少ない深夜の間に消毒するなど、工夫しているなと思いました。
露天風呂のある山の湯
さて次に、20時以降女湯になる「山の湯」へ。
「川の湯」では冷水機は脱衣所内にありましたが、「山の湯」は浴室に入る前に湯上がり処スペースがあり、そこに置いてありました。
イスやマッサージチェアなどもあります。
脱衣所は「川の湯」とほぼ変わらないつくりです。
アメニティも同じ。ドライヤーも同じPanasonicのイオニティ。
ちょっとレトロな感じの体重計と、無料で使用できる貴重品ロッカーもありました。
川の湯のほうにも貴重品ロッカーはありましたので、部屋の鍵などしまうことができます。
洗い場も、川の湯と同様に「アロマエッセ」とお茶のシリーズ。
山の湯の浴室は、 大きなガラス窓を中心に、内湯と露天の浴槽がちょうど対称な形で設置されています。
内湯からガラス越しに外を眺めると一瞬、鏡を見ているかのような錯覚に陥りますね。
いや、よく考えたら向こうは外でこっちは室内で完全に違うのですけど……。
山の湯の浴槽の温度は、川の湯よりもやや熱めに感じました。
露天に出てみます。
やはりちょっと熱めのお湯ですが、外気にあたりながらだと気持ちいいです。
湯口には、白い温泉成分がびっしり。
掲示されていた源泉使用状況によれば、山の湯も川の湯と同様に「加水なし、加温あり、循環なし、消毒あり」でした。
実は……2017年に初めて宿泊した際、山の湯は「加水なし、加温あり、循環あり、消毒あり」だったんですよね。
当時は「湯口から出ているお湯はすべて源泉だけど、温度調節のために浴槽内を循環していた」ようでした。しかし現在は山の湯も浴槽内循環をせず、かけ流しで提供しているようです。
雰囲気もすばらしく湯使いも向上していた山の湯でゆったりと湯浴みを楽しめました。
九兵衛旅館内の空いていればいつでも入れる貸切家族風呂
九兵衛旅館内には、空いていれば内側から鍵をかけて好きに貸し切ることのできる、家族風呂のような小さな浴室があります。
宿泊していた「時の館」の3階にあり、空き状況がチェックしやすくて良かったです。
「空いております」になっていたら、札を「入浴中」に返して、中から鍵をかけて入ればOK。
利用は30分以内で、とのこと。そして、脱衣所にはドライヤーが置いてありません。
女性の方が髪を乾かすとそれだけで時間がかかってしまいますから、お部屋か大浴場の脱衣所で、ということなんでしょう。
洗い場もちゃんとありますし、ポーラのアロマエッセシリーズのシャンプー&コンディショナーとボディーソープ。そしてクレンジングとフェイスウォッシュもしっかり置いてあります。
特に眺めはなく、すだれのようなもので目隠しされていました。
こぢんまりとした浴槽で、湯温は大浴場に比べてもけっこう熱めな気がします。
あまり長湯はしづらい浴室ですが、いつでも入れる貸切風呂があるのはありがたいことです。
姉妹館 珠玉やの展望貸切風呂からは、晴れていれば鳥海山が眺められる
せっかく無料で入れるので……お隣にある姉妹館「珠玉や」の貸切露天風呂にも入りに行くことに。
冬に宿泊した際はショート丈のレインシューズをお借りしました。
九兵衛旅館の玄関を出るとすぐ前方右方向に見える建物が珠玉やさん。 九兵衛旅館側は建物の裏側で、玄関は表通りに面しているので、回り込みます。
正面から見るとこんな感じの、4階建ての宿です。
珠玉やさんの浴室は1階に2つと、最上階に1つの3つです。
1階の2つの浴室は、1人で入るにはもったいないくらいゆったりとした広さで、貸切なので窓を好きなように開けて、半露天のようにして入ることができるのが良かったですね。
41~42度の熱めの適温に調節されています。
いいお湯でした。
珠玉やさんの最上階にある展望浴室には、チェックアウト直前にお邪魔しました。
エレベーターで3階まで上がると、階段の下のところに「空いております」「入浴中」の小さな札が出ています。
「空いております」になっていれば札を「入浴中」にして、階段を1階分上ります。
最上階の浴室は窓が大きく、湯田川の街並みを見下ろしながらお湯に浸かれます。
シャワー付きの洗い場も、すべての浴室に設置してありました。
そして、窓の外をよく見ると……
おお……どーんと鳥海山が!!!
おそらく、夜景とかはあんまりだと思いますので、こちらの浴室は晴れた日の日中に入るのが眺め的にはベストな感じがしますね。
たまたまかもしれませんが、こちらの浴室のお湯はあまり熱くなく、ゆっくりと温まってから外に出ました。
源泉使用状況。使用している源泉の「湯田川1号」は九兵衛旅館さんと同じです。
「加水なし・加温あり・循環なし・消毒あり」で、九兵衛旅館の浴室と同じです。いやー、いいお湯でした!
珠玉やさんの3つの貸切風呂にはいずれも、ドライヤーは置いてありませんでした。
九兵衛旅館の貸切風呂になかったのと同じ理由で、なるべく多くの人に利用して欲しいから、ドライヤーは部屋で使って欲しいとのこと。
珠玉やさんには、1階の内湯にはチェックイン後の早めの時間(15時~16時)、展望風呂には翌日の朝食後(8時30分以降)に入りにいきました。そのあたりの時間帯であれば、混み合うことなく利用できると思いますので、九兵衛旅館に泊まる際はできる限り早めのチェックイン&遅めのチェックアウトにして、のんびり滞在できるように計画しています。
【食事】★★★★★ 文句なしの満点。毎月メニューがガラリと変わるのもすばらしい
九兵衛旅館さんに初めて宿泊した2017年には「2017年に泊まった宿の中で最も食事がおいしかった宿」に九兵衛旅館さんを選出しました。
季節の食材に合わせて、毎月のようにがらりと夕食のメニューが変わるのが本当に素敵です。料理プラン例はホームページに掲載されています。
また、九兵衛旅館さんでは食事はすべて「個室料亭」でいただきますので、一人旅でも人目を気にせず気兼ねなく食事が楽しめます。
2022年6月宿泊時のドリンクメニュー
まずは夕食時にいただけるドリンクメニューについて。
少しずつメニューが変化していますので、一番最近宿泊した、2022年6月のメニューをご紹介したいと思います。
こちらは、定番のビールやウィスキーのメニューです。
サントリーのプレミアムモルツの生ビールのほか、ヱビスビールの中瓶、地ビールの小瓶もあります。日本酒も3種類ほど記載がありますが、こちらは通年で提供している定番のお酒で、季節限定の日本酒のメニューが別途あります。
焼酎が3種類と、ソフトドリンクには「山形県産フルーツ100%ジュース」各種と「山形パインサイダー/りんごサイダー」の用意も。
山形県内に醸造所のある「月山ワイン」と「高畠ワイナリー」のワインが数種類ずつありますが、ハーフボトルからでグラスワインの提供はないようでした。
そして、九兵衛旅館はやはり日本酒です!
庄内にある18の酒蔵のお酒がすべて勢揃いしており、1合からオーダー可能です。
それぞれの日本酒について、受賞歴や味の特徴がしっかり書いてあるので選びやすくてありがたいです。
こちらに掲載されているお酒は季節限定の銘柄がほとんどで、泊まる度に異なるラインナップのお酒がいただけるのがすばらしいです。
1人なので、90ccなど1合より少ないグラスでいただけたり、利き酒セットなどあればよりありがたいですが、とは言えすべてのお酒を1合からいただけるので、1人でもまあまあ頼みやすいと思います。
2022年6月の「孟宗の膳」では筍ご飯と孟宗汁を
2022年6月に宿泊した際は、1階にある個室食事処で夕食・朝食共にいただきました。
1階の個室食事処は掘りごたつの席で、卓上には液晶テレビがセットしてあり、テレビを見ながら食事をいただくこともできます。
かなり快適な個室ですが、一つだけ。インターフォンやベルのようなものはなく、ドリンクの追加オーダーや朝食のおかわりをしたくてもなかなか来てもらえない……ということはありました。まあ、些細なことですが。
最初にセットされていた料理はこんな感じです。
お品書き。
九兵衛旅館では5月10日ごろから6月初旬まで「孟宗の膳」という、湯田川名物の朝掘りの湯田川孟宗を使ったコース料理が楽しめます。
お酒は「はくろすいしゅ 純米吟醸 Fairy」を。
端麗やや甘口のお酒。
「ワイングラスで美味しい日本酒アワード」で何度も最高金賞を受賞しているお酒だそうで、小さなワイングラスをお猪口の代わりに出していただきました。
「百合根の和風ムース」
九兵衛旅館では、夕食の最初に必ずムース系の料理が1品入るのですが、これが本当においしくて毎回感動します。
前菜4品。
左上から時計回りに「孟宗とコシアブラの天ぷら抹茶塩」「フルーツトマト、孟宗姫皮の土佐酢ジュレ」「孟宗土佐和え」「チーズ豆腐」
前菜から孟宗づくしですが、調理法や味付け、切り方が異なるので「孟宗をこんな風に食べさせてくれるのか!」と感動を覚えます。
お造りのお皿は、孟宗筍の皮でカバーしてありました。
スズキ、本マグロ、平目、活生蛸。
盛り付けも美しく、すべて新鮮でおいしい……。
焼き魚は「天然桜ますの塩焼き」です。
脂が乗っていて食べやすいですね。付け合わせは山菜の「みず」です。
「むき蕎麦まんじゅう孟宗餡かけ」
「むき蕎麦まんじゅう」は、お隣の酒田でよく食べられている、蕎麦の実を剥いて茹でたものを餡かけにしていただく料理です。餡には孟宗筍のほか、白身魚の切り身も入っていて豪華でした。
最初の日本酒がこのあたりでなくなり、次は肉料理ということで……。
地ビールの「月山ビール」の「兎乃」です。
以前泊まったときにいただいて大変おいしかったのですが、九兵衛旅館以外で見かけないんですよね……。さっぱりとした味わいのビールで、肉料理に合うだろうなと。
「孟宗ステーキ」です。孟宗筍と山形牛を焼いてステーキソースで味付けし、山菜のこごみを添えています。焼き加減絶妙で、ソースの味もおいしい。
温泉旅館でステーキが出るときって、固形燃料で卓上で陶板焼きにしていただくことが多いですが、なかなかちょうといい焼き加減・味付けでいただくことが難しいので、予め焼いて持ってきてもらえたほうが個人的にはうれしいですね。
最後に!お楽しみの筍ご飯と孟宗汁です。
孟宗汁は庄内地方の郷土料理で、孟宗筍と厚揚げ、椎茸などを具にして、酒粕汁にしたもの。豚肉を入れることも多いですが、九兵衛旅館さんの孟宗汁は豚肉が入らない、シンプルなタイプでした。
最後に、デザートがなんと2品です。
「オレンジカラメルソースのほうじ茶ぷりん」と「赤粒胡椒アイス 庄内麩のフィユタージュ」
フィユタージュはパイ生地のことで、庄内の名産品である「庄内麩」を重ねて焼いてパイ生地に見立てたもの。胡椒のアイスはかなりしっかりと胡椒の風味があり、本格的な味わいでした。
和食のコースはデザートはアイスクリームやフルーツなど簡単に終わることが多いですが、九兵衛旅館さんのデザートは2品とも手抜きなしの手作りで、
2021年9月の夕食「秋の膳」の〆は焼き鯛茶漬け
2021年9月に宿泊した際も、1階のほりごたつの食事処でいただきました。
9月初旬のまだ暑さの残るころですが、メニューは「秋の膳」です。
地酒のメニューは今回も18種。
初めて見る「栄光富士 純米大吟醸 無濾過生原酒 サバイバル」を。
日本酒とは思えない派手なボトルでした。
やや甘口で、女性好みな感じのお酒です。
季節野菜のムースは今回「とうもろこし」です。もちろんめちゃくちゃおいしい。
前菜は上から時計回りに「黒バイ貝旨煮」「酒田沖船凍イカの塩辛」「ズワイガニのごま酢」「チーズ豆腐」
6月は孟宗筍が主役でしたが、今回は筍がいないぶん、魅力的な魚介類が増えています。これだけでかなり飲めてしまう前菜ですね……。
6月は孟宗筍の皮に包まれていたお造り、今回は笹の葉に包まれています。
笹を開くと、今回も食べるのがもったいないくらい美しいお刺身。
「アラ、活け生蛸、本マグロ、鰆」の4点盛りです。
「口細カレイの南蛮だれ」やや甘辛いたれとたっぷりのネギと一緒に、揚げたカレイをいただきます。エリンギやアスパラ、かぼちゃなどの野菜も一緒に揚げてあり、なかなか食べ応えがありました。
そして、鶴岡と言えば「だだちゃ豆」です。
コースの中には含まれないのですが、お部屋に「ご夕食に追加でどうぞ」という紙があったので、夕食前に1人前お願いしていました。
だだちゃ豆、豆自体の味が濃くてやはりおいしい。
お酒が進む料理が多くて1合なくなったので、次は「上喜元 純米大吟醸 雪女神」を。
山形県限定のお酒だそう。端麗甘口。
「地野菜 なすそうめん」
どうやって作っているんでしょう?ものすごくモチモチして、本当に麺のようなつるつる食感でした。
蒸し物は「紅海老とさざえの茶碗蒸し」
柚胡椒風味のアオサ餡がたっぷりかかった、豪華で味わい深い茶碗蒸しです。
肉料理は「大豆と庄内豚の八丁味噌角煮」。
肉料理が豚肉なのは珍しい気がしますが、庄内地方はもともと養豚が盛んな地域なんですよね。八丁味噌は甘すぎなくてお酒にも合います。
〆のご飯は「焼き鯛茶漬け」です。
ご飯に焼いた鯛とあられ、刻み海苔、梅干し、山葵などを好きなだけのせて、お出汁をかけていただきました。
デザートは自家製あんみつ。甘さ控えめのあんこと、抹茶の寒天が本格的な味わいでした。
2017年12月の夕食「初冬の膳」は天然ぶりの酒粕汁が!
12月下旬のメニューは「初冬の膳」。
このときは2階にある食事処で、テーブルと椅子でいただきました。
初冬の膳のお品書き。
最初にテーブルに出ていた料理はこんな感じです。
今回も、1杯目から日本酒をいただきます。
上喜元の純米吟醸。平盃に描かれたひょっとこ?がかわいい。
百合根のムース。
とうもろこしの季節以外は百合根のムースなんでしょうか。おいしいので何度でもうれしい。
前菜。左から「カシューナッツ豆腐」「 あさつき岩のり」「鶏の松風といぶりがっこチーズ」「春菊と黄菊の煮びだし太白ごま油」
どれもこれもおいしいけど、いぶりがっこチーズは特に、日本酒が進むお味です。
竹皮の包みを開くと……現れたのはお寿司でした!
庄内浜たらば海老のにぎり寿司とカステラ卵。お米は温泉で炊いたササニシキとのこと。たらば海老、ねっとりと甘く、おいしい。
お造りは、鯛、平目、生だこ。
今回も、美しく盛り付けられています。
ヤリイカの磯辺香り揚げ。
花塩でいただきます。この塩、これだけで日本酒が飲めそうなおいしい塩です。
ずわい蟹 真丈蒸し 銀あんかけ。
見た目にも美しく、繊細な味付け。
山形牛サーロインの味噌幽庵焼き。脂の載ったサーロインですが、味噌ベースの味付けなので、やはり飲めます。
野菜も肉もすべて、絶妙の加減で火が入っているのがすばらしい。。。
二杯目に頼んだくどき上手がどんどんなくなります・笑
〆のご飯はいくらご飯。
そして、天然ぶりの酒粕汁!!!
こんなに大きなぶりがゴロッと。。。
生臭さはまったくなく、〆のご飯と汁物まで、酒が進む組み合わせでした。
デザートは、木イチゴソースのクリームブリュレとほうじ茶アイス。庄内麩のフィユタージュ。
初冬の膳も大満足。ごちそうさまでした!
2017年3月の夕食「ひなの膳」では豪華なちらし寿司が
2017年3月に初めて宿泊した際の夕食は「ひなの膳」というプランでした。
最初から日本酒をいただきます。
種類は忘れてしまったのですが、濁り酒を、涼しげなガラスの器でいただきます。
前菜。雛飾りと一緒に盛り付けられており、美しいです。
左上から時計回りに「百合根の和風ムース」「うどのきんぴら」「鮟鱇共和え」「うるいと子持ち昆布」
「百合ねの和風ムース」は滑らかかつ濃厚!「鮟鱇共和え」も日本酒がいくらでも飲めそうです。。。
お刺身。運ばれてきたときかなり驚きました。まるでケーキのような、花束のようなあしらいです。
「平目、生だこ、鯛、本マグロ」本マグロは見事な脂ののり方で、口の中でとろけました。
春キャベツと桜美豚のとろり鍋。
春の野菜をサッと煮て歯触りを楽しみます。もちろん、日本酒にあう味付けです。
ここらで2杯目。
酒器の雰囲気ががらりと変わるのもよいですね。
揚げ物。 ばんけチーズと山菜の天ぷら。タラの芽。こごめ。
「ばんけ」とは庄内弁で「ふきのとう」のこと。春の恵みですね。右下に見える塩の結晶は庄内産の「花塩」とのこと。こちらでいただきます。
鰤の照り焼き。
なんの生臭さもなく、ブリの実が口の中でほろりとほどけます。お酒が進みますね。
添えてあるネギやエリンギもちょうどよく煮えており、おいしい。。。
重箱に入って登場したのは……自家製海老真丈シュウマイ風。
ここに来てまさかの変化球!
しかし、シュウマイそのものはもちろんのこと、少し辛味のあるタレが最高においしく、何個でも食べられそうです。
〆は「雛の膳」の名物だというちらし寿司。
「大きさが大・中・小から選べます」と言われましたが、私はかなりお腹いっぱいで、小でお願いしました。
それでもこんなにたっぷりと、豪華なちらし寿司が!
あさり汁と一緒にゆっくりと味わいつつ、最後に残ったお酒も飲み干しました。
デザートは「ダージリンティーゼリーとバナナのコンポート」と「きなこ黒蜜あいす 庄内麩のフィユタージュ」です。
満たされて部屋に戻りました。ごちそうさまでした!
2022年6月宿泊時の朝食
朝食は、わりと定番メニューが多いので、直近の2回ぶんをご紹介したいと思います。
前日に夕食をいただいたのと同じ食事処でいただきます。
朝食も、しっかりとお品書きがあるのがありがたいですね。
「小松菜の野菜ジュース」は作りたてです。山形県産りんごジュースとヨーグルト入り。
サラダは、たっぷりの新鮮な野菜と海老。
お粥とご飯から選べるので、この日はお粥を。お味噌汁は海苔とネギです。
「長芋煮」は九兵衛旅館の朝食の定番メニュー。滋養あふれる優しい味わい。
「孟宗膳」の季節だったので、朝も「孟宗けんちん」が。
焼き魚は鯖です。卵焼きも美しい。
イカのお刺身。実は、お隣の酒田市はスルメイカの漁獲量が全国トップクラスなんだそう。
ねっとりと甘いイカ刺し。朝から贅沢ですね。
庄内の郷土料理「塩納豆」が添えられていたので「やはり白いご飯も食べたいなー」と思い、茶碗に半分だけいただきました。
特別栽培の「つや姫」です。
デザートは「宇治抹茶アイス」と「きなこプリン」と朝から2種類!
抹茶アイスが、甘さがかなり控えめで抹茶の味が濃く、まるで抹茶を飲んでいるかのような味でした。
食後はロビーにてコーヒーか紅茶をいただけます。
ロビーで庭を眺めながら飲むのもいいですが、このときは紙コップに入れていただいて、お部屋でゆっくりいただきました。
2021年9月宿泊時の朝食
2021年9月に宿泊した際の朝食についても、簡単にご紹介したいと思います。
お品書きはこちら。
定番のメニューもいくつかあり、サラダと小松菜ジュースは同じです。
自家製の黒ごまドレッシングがおいしい。
塩納豆と海苔の味噌汁、長芋煮、けんちん、お漬物。だいたい同じ。
イカの刺身と出来たて熱々の豆腐も同じ。
焼き魚の種類が、このときは鮭でした。
デザートは「ババロア」と「庄内産花塩の塩キャラメルアイス」の2種。こちらは2種類とも変わっていますね。
焼き魚とデザート以外はだいたい同じメニューでしたが、すべて完璧においしいものばかりなので、これはこれで大満足です!
朝から本格的なデザートが2品いただけるのもうれしいですね。
ロビーで食後のコーヒーをいただいて部屋に戻り、チェックアウトの11時までのんびりと過ごしました。
【再訪したい度】★★★★★ 季節を変えて何度でもおとずれたい大好きな宿
最初に九兵衛旅館に泊まったときは「地元にこんなすばらしい宿があったのか!」と驚き、今もこの宿が鶴岡にあることを誇らしく思っています。
とにかく食事がすばらしいので、これまでに「3月」「6月」「9月」「12月」と泊まっていますが、また別の季節にも泊まりに行きたいなあと。
1人泊だと寒鱈などの特別料理プランは予約できないのが少し残念ですが、誰を連れてきても喜んでもらえる宿だと思うので、いつかまた、誰かと一緒に特別料理プランを予約して泊まってみたいです。
【1人旅に優しい度】75点:個室食事処がうれしい、一人でも美食を楽しみつくせる宿
泊まりやすさ 15/20
土曜日でも1人泊可能。年末年始や連休・お盆なども1人泊の設定はあるが、人気の宿なので早くから予約は埋まる。宿泊料金は2人で泊まるときの1人分の料金よりも、1人泊の場合数千円アップする。
食事場所の配慮 20/20
朝夕個室食事処。1階の個室食事処にはテレビまで置いてあって快適。
人目はまったく気にせず、快適に食事できる。
プランの選択肢 10/20
公式サイトから予約が必要な「鮟鱇」や「寒鱈」などの特別料理プランは1人では予約できない。ただ、旅行サイトから予約可能なプランの数は、1人で泊まっても2人以上で泊まっても同じ。また、メゾネットなど1人では予約できない部屋はいくつかある。
ドリンクオーダー 10/20
1合でオーダーできる日本酒が常時20種類ほどあるので、日本酒好きならオーダーには困らないが、1人だとあまり種類を飲めないので90ccのグラスオーダーや利き酒セット的なものがあればさらにうれしいなと。また、グラスワインはない模様。
フリーWi-Fi完備 20/20
客室内でWi-Fi利用可能。問題なく快適に使えた。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。う