温泉ブログ 山と温泉のきろく

山好き女子の温泉と食と山旅の記録です。

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湯野浜温泉 亀や 宿泊記 全室オーシャンビュー!日本海に沈む夕日を眺めながら湯に浸かれる宿に一人泊

創業200年の歴史を誇る、地元では知らない人のいない老舗旅館

亀やは、山形県鶴岡市の湯野浜温泉にある、文化10年(1813年)創業の200年以上の歴史を誇る温泉宿です。

60室ほどある客室はすべてオーシャンビュー。晴れていれば日本海に沈む夕日を客室や浴室から眺めることができます。

私はこの近くの出身なのですが、亀やさんは同窓会やお祝い事などの宴会で使われることが多いので、地元の人にとってもお馴染みの宿だと思います。

私は一人旅がほとんどですし、こういう規模大きめで団体客が入る宿に泊まる機会は少ないほうです。しかし、亀やさんでは最近客室をリニューアルして温泉浴室付きの部屋を増やしており、ハイシーズン以外は平日なら1人でも予約可能となっています。湯野浜温泉のすばらしいけれどけっこう熱い源泉を、客室内で好きな温度に調節して楽しめたら幸せだろうな……と思い、GWの谷間の平日に宿泊しました。

リノベーションされたばかりのこだわりの感じられる部屋で、夕日とすばらしい源泉を楽しめましたので、レポートしたいと思います。

◆ お知らせ ◆
2020年10月に著書が発売となりました。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。

 

湯野浜温泉で宿を取るなら、同窓会で泊まりそこねた「亀や」がいい

私の温泉好きは、幼いころに祖父が逗留していた近場の温泉宿でお風呂に入り、昼食をいただいた経験から始まっていると思っています。このお話については著書にも書きました

祖父が毎年のように湯治に行っていたのは、鶴岡市の海沿いにある温泉地、湯野浜温泉の宿でした。温泉旅が趣味になってから「ひさびさに湯野浜に行ってみたいなあ」という思いはあったものの、湯野浜温泉は大型の温泉ホテルが多くて「泊まってみたい!」と思える宿が思い当たらず……。鶴岡市の内陸部にある湯田川温泉に九兵衛旅館というお気に入りの宿を見つけてしまい、そちらにばかり泊まっていたのでなかなか湯野浜に足を運ぶことができずにいました。

湯野浜には海水浴場があるので、夏休み期間中が一番のハイシーズンです。夏休み中は1人では予約が取れなくなる宿も多いので湯野浜に行くなら夏以外だなと。さて、泊まるならどの宿に……?考えたときに思い浮かんだのが亀やさんでした。

実は数年前の夏に亀やさんで高校の同窓会が開催されたのですが、予定が合わず出席しなかったのです。しかし、同窓会に出席した知人から「宿の窓から見える日本海に沈む夕日の写真」が送られてきて「ロケーションのいい宿だなあ」と印象に残っており、いつか泊まってみたいと思っていたのでした。

庄内空港からタクシー10分、鶴岡駅からバス40分

公共交通機関で湯野浜温泉にアクセスする場合、庄内空港からならタクシーで10分、鶴岡駅からならバスで40分、タクシーで30分ほどかかります。

また、鶴岡駅からのバスはそこまで本数も多くなく、鶴岡駅に到着する特急電車との乗り継ぎが良いわけでもないので、今回は行きのみタクシー利用。

コンビニで買いたいものもあったので、湯野浜温泉唯一のコンビニのファミリーマート前でタクシーを降り、ここから宿まで歩いていくことにしました。

昔、湯野浜温泉には某チルドレンというバンドのボーカルの方が別荘を持ってらしてね……。彼が買い物に来るというので、当時はサンクスだったこのコンビニに、バイト希望者が殺到したそうですね……懐かしいな。

ファミリーマートから亀やまでは徒歩15分ほど。

海岸沿いに多くの旅館が建ち並び、足湯や共同湯のある湯野浜温泉の中心街を歩いていきます。

しかし……連休の谷間の平日とは言え、静かですね。

湯野浜温泉には、お土産屋さんが並んでいるような、いわゆる「温泉街らしい温泉街」が、昔はあったように記憶していたのですが。

飲泉所と足湯の側を通り抜けます。足湯には家族連れの方が数組。

海が見えてきました。

夏には海水浴場として賑わう湯野浜ですが、この季節は静かです。

さらに歩いていくと正面右手に「湯野浜温泉 上区共同浴場」が見えてきました。

200円というリーズナブルな料金でかけ流しの源泉を楽しめる共同浴場です。ただ、浴槽のお湯はかなり高温で、もともと共同浴場があまり得意でない私はこちらには立ち寄りません。

上区共同浴場の斜め向かいにある宿が、本日のお宿「亀や」です。

立ち止まって宿の写真を撮っていたら、宿の方が玄関から出てきて「お泊まりのお客様ですか?」とお声がけいただいたので、案内に従って中へ。

少し昭和的な懐かしさを感じさせる、広くキラキラした雰囲気のロビーでチェックイン手続きを済ませて、お部屋に案内していただきます。

ちなみにですが……チェックインの際に夕食時にいただける飲み物のメニューを見せられ、ファーストドリンクオーダーを訊ねられました。昔ながらの宿ではときどきあります。

「とりあえずビールでいいか」と思い、グラスの生ビールをオーダーしておいたのですが、夕食時に再度メニューを見せていただいて「え?こんなメニューもあったのか……こっちを頼めば良かったかも」と思ったりも。ファーストオーダーは夕食のタイミングでも大丈夫でしょうし、慌てて決めないほうがいいですね。

【部屋】★★★★☆ デザイン優先すぎるきらいはあるが、眺めと温泉浴室はすばらしい

宿泊するお部屋は8階にあります。

8階は全室がリノベーションされたフロアで、廊下の雰囲気やBGMも他のフロアとは雰囲気が異なっていました。

お部屋の前には砂と貝のようなオブジェが飾ってあり、じゅうたんやドアもシックな色あいで統一されていました。

室内に足を踏み入れ、靴を脱いで中へ。

室内の間取り図が置いてありました。「さがん」という名のお部屋です。

8階には「温泉付きデザイナーズルーム」が、この部屋を含めて6室あり、すべての部屋が別のデザイナーによって設計・デザインされたこだわりの部屋です。

客室 | 湯野浜温泉 亀や | 東北 山形県 湯野浜温泉の老舗旅館

「さがん」は、お部屋の中央に浴室があり、窓に面した部屋の奥側がベッドスペース、その手前に畳スペースがあります。

畳スペースにはコンパクトなソファが2つと小さなテーブルが。

窓からは砂浜と日本海。こちらの方角が西ですので、海に沈む夕日を眺めることができるのです。

ベッドが2つ並んでいます。

ベッドの頭のところにあるパネルで、室内のすべての照明(トイレ以外)を操作する仕組み。

これ、便利なようで実は若干不便で……というのも、照明パネルがこの、ベッドのところにしかないんですよ。浴室や洗面所には照明のスイッチがなく、電気を消したり点けたりしたかったらベッドまでやってきて操作するしかないという。
なので、この後バスルームの電気を消して、夕日を眺めながらお風呂に入ったんですが、そのうち日が沈んで暗くなったので電気を点けよう!と思ったんですよね。ところが、お風呂の電気を点けるにもベッドまで行かなければいけない、という……。

それから、2022年5月時点での話ですが「ゴミ箱が洗面所にしかない」ところもちょっと不便だなと感じました。リノベーションしたばかりの新しい部屋とのことですので、今後使いやすく改善されていくかもしれません。

テレビとエアコンは、見えないように壁の中に収納されています。

引き戸を開けるとテレビが現れました。

室内履きの使い捨てスリッパ、羽織もあり。お茶は煎茶とほうじ茶、ごぼう茶が用意されていました。

お茶うけのお菓子は「合わせ焼き」もちもちとした食感の和菓子です。

暗証番号式の金庫と、空の冷蔵庫。

このお部屋の壁は、触るとざらざらしていて見た目にも少し凹凸があるのですが、これは「砂浜」をイメージした壁だそうです。

トイレは浴室の隣にありました。

それから、トイレの対角線上、畳スペースの横に、ライティングデスクがありました。

デスクの上には宿の紹介コンテンツなどが詰まったタブレットが置いてあります。
Wi-Fiも、もちろん完備していて速度も十分でましたので、PC作業もしやすいですね。

玄関入って右手側に、洗面所と浴室があります。

洗面所には、タオル、ヘアブラシ、ヘアゴム・コットン・綿棒セット、歯ブラシが置いてありました。おそらくこちらは女性向けのアメニティでしょうね。男性が宿泊する場合はカミソリなどが入るんじゃないでしょうか。

化粧水などのアメニティは、ラフランスを使った自然派コスメブランド「Franus Branche」のパウチのセットが。
亀やさんは、浴室には化粧水などの設置はなかったので、何度もお風呂に入る人は置いてある化粧水だけでは足りないかもしれません。持参したほうが良さそうです。

ドライヤーは、高級宿の証(と個人的に思っている)Panasonicのナノイーなのはうれしいポイント。

バスローブと浴衣が2枚、置いてありました。

部屋付の浴室はこちら。

お部屋の真ん中にお風呂があります。

洗い場もあり、シャンプー&コンディショナーとボディソープが設置してありました。

浴槽は、1人で浸かるのにちょうどいいサイズ!家庭用のお風呂ぐらいの大きさですが、湯野浜温泉の源泉が、常時静かに注がれています。

湯口にこびりつく温泉成分の白い結晶が、源泉の力強さを物語っていますね。

暖かい季節ということもあり、このぐらいの勢いでお湯を入れ続けていると浴槽の中はめちゃめちゃ熱い!です。
チェックインしたら1度源泉の蛇口を止め、入浴するときにまたお湯を足してちょうどいい熱さに調節すれば、源泉100%のお湯を好みの湯温で楽しむことができます。

日本海に沈む夕日を眺めながら湯に浸かり、ベッドでごろごろ

部屋の中央にある浴室には大きな窓がついており、窓越しに海を眺めることができます。

日が傾き始めたころ「お湯に浸かりながら夕日を眺めるのもいいかも」と思い、浴室へ。

しかし、夕日がまぶしすぎて眺めていられず、カーテンを閉めてしまいました。

浴室内にはロールカーテンが設置してあります。カーテンを閉めないとベッドルームから浴室が見えてしまうのでご注意を。

でもやっぱり夕日はみたいし……で、お風呂あがって部屋へ。

今にも夕日が海に沈もうとしているところでした。

ベッドの上でのんびり、夕日を眺めます。

雲一つないいい天気でした。

山に沈む夕日はよく見ているけれど、海に沈む夕日はひさびさに見ました。

夕日を眺めたいあまりに中途半端なところで入浴を中断してしまったので、日が沈んでからもう1度お風呂。

源泉100%の湯野浜の湯は、とろみが感じられるような濃厚さ。
後でご紹介する大浴場のお湯はあっさり目だったので、小さい浴槽でかけ流しにするとこんなに違うのか!と感動を覚えました。

値段は少し張りますが、温泉浴室付きの部屋を予約して良かったです。

1階「酒処 蔵」では庄内の地酒が楽しめる

館内施設で特に印象に残った1階のバー「蔵」についてご紹介したいと思います。
バーと言いましたが営業時間は15時から17時30分。チェックインから夕食前の時間に、庄内の地酒やビール、ワインを楽しめるお店です。

蔵を模したのか、あるいは移築したのか。近代的な建物の1階に、蔵があります。

中に入ると、右側の壁には亀やさんの歴史がわかる写真のギャラリーが、左側にはテーブルと椅子が置いてあります。

ワイン・クラフトビール・生ビール・ハイボールをグラス1杯500円で。
地酒はお猪口3杯500円でいただくことができます。

ワインは月山ワインの赤と白。ビールやハイボールは山形とは関係ない銘柄なので、ここは飲むならワインか日本酒ですね。

日本酒は庄内産の地酒が10種類。それぞれのお酒の特徴も書いてあり、選びやすいです。

日本酒をお願いすると、お猪口とおつまみの柿の種が載ったお盆を手渡されました。自動販売機からお酒を選んで、お猪口に注いでいただきます。

少量ずつなので、酔いすぎずにさまざまなお酒が楽しめるのがいいですね。
ワインも飲んでみたかったけれど……夕食前に酔っぱらってしまうのも困りますから、1セット3種類いただいて、ごちそうさまでした。

夕食前の時間を過ごすのにちょうどいい、素敵なバーでした。

1階ラウンジではコーヒーサービスあり

1階には庭園を眺められる広々としたラウンジがあり、セルフでコーヒーなどを無料でいただくことができます。

提供時間は15時から17時30分までと、翌朝7時から10時まで。

UCCのコーヒーやカフェオレが、アイスとホットと両方あります。

そのほかにもウーロン茶やオレンジジュース、冷水、炭酸水などがありました。

お部屋が快適でひたすら部屋でだらだらしてしまったので、コーヒーサービスは利用しないでしまいましたが、朝食後にコーヒーをいただけるのはうれしいですね。

売店では地酒の小瓶や地ビールの販売も

1階には売店もあり、お土産品のほか、地酒やビール、アイスクリームなどを販売していました。

ビールはキリンの缶ビールのほか、地ビールの月山ビールの小瓶が2種類。「蔵王チーズの粕漬け」などのおつまみも気になります。

日本酒は「大山」や「くどき上手」など、庄内を代表するお酒が小瓶サイズで販売されており、お土産にするにも部屋で飲むに良さそうです。大きい瓶だと、持って買えるのも重いし、部屋でも飲みきれないですからね……。

あとはハーゲンダッツのアイスが何種類か。

品数はそれほど豊富ではないですが、ポイントを押さえたラインナップでした。

【風呂】★★★★ 広く清潔な大浴場は、部屋にいても混雑状況が確認できる

亀やさんの3階には、3つの大浴場があります。

「大浴場・檜風呂・露天風呂・サウナ」を備えた男湯の「亀の湯」
「大浴場・サウナ」のある女湯の「天女の湯」
「檜風呂・露天風呂」のある女湯の「羽衣の湯」です。
設備的には男女ともに同じですが、すべて楽しむには女性は2つの浴室に入る必要があります。また、男女の浴室の交代はありません。

客室内に設置してあるタブレットでそれぞれの浴室の混雑状況を確認することができるので、空いているタイミングで入りに行けて便利です。

しかし……貸切風呂などは「鍵をかけた」ことで使用中とするなどして利用状況を表示したりしますが、大浴場の混雑具合はどうやって計測しているんでしょうね。
ロッカーがあればロッカーの使用状況などでわかりそうですけど、こちらの大浴場、脱衣カゴのみでロッカーもないんですよ。不思議……。

浴室が利用できる時間は、夜は午前0時までと、翌朝の5時からです。

大浴場のある女湯「天女の湯」

まずは「大浴場」と「サウナ」のある女湯の「天女の湯」へ。

入口で脱いだスリッパはビニール袋に入れて脱衣所内に持っていきます。
スリッパを取り違えないようにクリップなどを用意している宿は多いですが、袋に入れて持ち運ぶ方式は少し珍しいですね。

のれんの奥には無料で利用できる貴重品ロッカーもありました。

脱衣所に向かう途中に、パウダールームがありました。
お部屋のドライヤーと同じく、こちらもドライヤーはPanasonicのナノイー。
脱衣所にもパウダールームにも化粧水などの設置はありません。

脱衣カゴは混雑防止のためか半分ほどに減らしてありました。浴室の入口前に冷水機あり。

温泉分析表です。

泉温56.4度。ph7.9のナトリウム・カルシウムー塩化物温泉です。

源泉利用状況はこちら。

加水なし、加温なし、塩素系薬剤による消毒あり。
循環については「かけ流しを行っているが衛生管理のために循環している」とのことで、おそらく「湯口から出るお湯は源泉だが、浴槽内は循環している」というところなのかなと。

塩素消毒もしているので衛生管理のための循環が必要なのかはちょっとよくわからないですが、かけ流しできるだけの湯量があるのだとしたら、循環してしまうのは少しもったいない気がしますね。

浴室へ。

浴槽はひろびろ。

洗い場もたくさんありましたが、お隣との間に仕切りがない洗い場は、バスチェアの数を減らして間隔を開けるように配慮されていました。

体を洗って浴槽へ。

陽の光がたくさん入る清潔な浴室です。ただ、窓の外には庭のような空間があり、目隠しの簾もあって眺望はありません。

湯口から出るお湯をすくって匂いを嗅いでみると、海の近くの温泉らしい香りがほのかに漂います。

いつ行ってもあまり混むことはなく、広い浴槽でゆったりと湯浴みを楽しめました。

ちなみに、こちらの浴室には「サウナ」が設置してあるのですが、感染症対策のためとのことで、2022年5月の時点では休止していました。

露天風呂付き女湯「羽衣の湯」

もう1つの浴室、露天風呂付きの女湯である「羽衣の湯」へ。

こちらも、脱いだスリッパを使い捨てのビニール袋に入れ、持って脱衣所に入ります。

湯野浜源泉の源泉は、集中管理されて配湯されたものなので泉質はすべて同じです。
源泉利用状況は「加水なし・加温あり・循環消毒あり」となっています。

脱衣所へ。

こちらも化粧水などはなく、ドライヤーはナノイーです。
脱衣所も、椅子の数を減らして間隔を空けるようにしてありました。このあたりけっこう徹底されているので、化粧水などが設置されていないのも、感染症対策を意識してのことなのかもしれませんね。

浴室へ。

広々とした内湯の、窓際の隅に檜風呂があり、壁際に洗い場が。

シャンプー&コンディショナーとボディソープはポーラのエステロワイエ。

檜風呂は大きなガラス窓に囲まれており、窓の向こうには海が見えます。

「天女の湯」の大浴場よりも、こちらの檜風呂のほうが眺望は良いように思いました。

そして、何と言ってもこちらの浴室には、露天風呂が設置されています。

浴槽に浸かる前、立ち上がった状態でなら少しだけ海が見えます。

入浴しながらだとこんな感じ。
この写真は明け方に撮影したもので、海は見えませんが、空が朝焼けに染まっているのを眺めることができました。

私は、夕日は部屋で眺めていましたけど、きっとこちらの浴槽からも夕焼け空はきれいに見えるでしょう。

お湯の温度も適温です。

残念ながらこちらも浴槽内は循環しているので、部屋のお風呂のようなお湯の新鮮さは感じられません。ですが消毒臭などは特に気にならず、清潔で気持ちのよい浴室だと思います。

とにかくお湯重視!な方にはぜひ、温泉浴室付きの部屋の予約をおすすめしたいです。「こんなにいいお湯だったのか!」と、私は驚きました。

【食事】★★★★☆ 夕食の「仏蘭西懐石」はほどよく和洋折衷のコース料理

亀やさんの夕食は「HOURAI懐石」「仏蘭西懐石」「亀や懐石」の3種類があります。
料理プランは泊まる部屋によって決まるようで、最上階のHOURAI特別階に泊まればHOURAI懐石、5~8階のお部屋だと「仏蘭西懐石」、9・10階のお部屋は「亀や懐石」をいただくことになります。

食事は、5階にある食事処「千尋房」で朝夕ともにいただきます。

席と席の間隔はかなり広く、ゆったりとした作り。
この日、1人で泊まっていた方が私のほかにもう1人いたのですが、1人客のテーブルは端のほうにして、食事しながら窓の外を眺められるような配置になっていました。ご配慮、ありがたかったです。

亀やのドリンクメニュー

千尋房で夕食時にいただける飲み物のメニューです。
生ビールはキリンの一番搾り。ビールはそのほかに一番搾りとスーパードライの中瓶があります。

ウィスキー、焼酎はグラスでの用意。
ソフトドリンクは山形のラ・フランスジュースやりんごジュースもありました。

日本酒は、県内の地酒を4種類ほどグラスでいただけます。

お、グラスのシャンパンがあるのはいいですねえ。
ワインもすべてグラスでの用意となり、赤・白ともに県内産のワインが2種とフランス産のものが1種。1人でもオーダーしやすいラインナップでうれしい。

実は、チェックイン時にもこのメニューを見せられ「夕食時のファーストオーダー」を訊かれたので「とりあえずグラスの生で」と安易に注文してしまったのですが……実はそのときは気がつかなかったメニューがもう1ページあったのです!

こちらです。

なんと読むのだろうと思っていたんですが、宿の方は「けざけ」と発音していました。
うーん、庄内弁で「食べてください」を「け」と言ったりするから、「食」で「け」と読んでいるのでしょうか。

このメニューがあると気がついていたら、ビールを注文せずに最初からこっちを頼みましたね……。
とは言え「グラス60ml」で3種類いただけるのは魅力的なので、ビールを飲み終わったらこっちをオーダーすることにしましょう。

夕食の仏蘭西懐石は魚介、山菜、山形牛と県産食材をめいっぱい楽しめる

夕食はチェックイン時に18時スタートと19時スタートのどちらかを選びます。
私は「部屋で夕日を眺めてから夕食にしたい」と思い19時を選びました。早めの時間帯にチェックインすると、夕食も早めスタートになってしまう宿も多いので、19時の選択肢があったのはうれしかったです。

席に着くとすぐに、ファーストオーダーでお願いしていたグラスの生ビールが提供されます。
海に沈む夕日が見たくて19時スタートでお願いしたのですが、食事会場の窓も海のほうを向いていたので、夕日を眺めながら夕食をいただくこともできたのかもしれませんね。(まぶしそうですが)

こちらが、この日の仏蘭西懐石のお品書きです。

うーん、肉料理のステーキはビールでも良いけれど、前菜の「海老寿司」「牛肉の八幡巻き」などは日本酒のほうが合うような……。
やはり、日本酒のセットをいただきたかったな。さっさとビールを飲んで日本酒を頼もう。

前菜。左から「さざえの木の芽和え」「筍カマンベールチーズ挟み揚げ」「海老寿司」「牛肉の八幡巻き」「べっ甲卵」「大根奉書巻き」

「べっ甲卵」は卵黄の醤油漬けです。ねっとりとしていておいしい。さざえの木の芽和えも、さざえの肝のほのかな苦みがおいしい。日本酒飲みたいー!

で、前菜が終わると同時に「酒レ食(けざけ?)」をお願いしました。
読み方がわからなくて「これの60mlをお願いします!」とメニューを指してオーダーしたら

「けざけですか?けざけの1杯目は前菜と一緒にお出しすることになっているのですが……」

とちょっと渋られたのですけど、とにかく持ってきてもらいました。利き酒セットのように1度に出すのではなく、料理とのペアリングを楽しむ日本酒のセットなんですね。

そんなわけで1杯目、「大山 純米吟醸辛口生原酒」。
すっきりとした辛口で食欲が湧いてきそうな味わいです。

温物は「筍饅頭」

器が素敵です。
こごみと木の芽、海老が添えてあり季節を感じられる一品。

お刺身。「鯛、うまづらはぎ、ソイ、平目」

あっさりした味わいの白身の魚ですが、それぞれに歯ごたえや味が異なるのがわかります。筍とわかめが添えられているのもこの季節ならではで良いですね。

ちなみに、お刺身の提供と同時に2杯目の日本酒「竹の露 純米大吟醸 Jellyfish」が提供されました。ほんのり甘みのある純米大吟醸で、お刺身と次の魚料理をいただきます。

魚料理「桜鱒のソテー ”ブランタニエール"ソース プールブラン」

白ワインとバター、甲殻類の出汁のソースだそう。
桜鱒は日本海で獲れる「本鱒」という魚で、実は川魚の「ヤマメ」と同じ種類の魚なんだそう。川で孵化し、その後川に残ったものがヤマメとなり、海に下ったものがサクラマスになるんだそうです。最近は数が少なく、高級魚になっているんだとか……。脂がのっているのにあっさりした味わいで、バター風味のやや濃厚なソースによく合います。

肉料理は「山形牛ステーキ ソース ボルドレーズ」ボルドーワインのソースです。庄内産のアスパラを添えて。

肉料理と一緒に3杯目の日本酒「富士 純米大吟醸 無濾過生原酒 煌凜」が提供されました。
このステーキは文句なしにおいしかったです!焼き加減絶妙でソースもおいしい……。
日本酒は、フルーティな香りのする柔らかいお酒で、肉料理にも合いました。
3種類のお酒、どれもおいしかったのですが「大山」「竹の露」「富士」という、地元民にはお馴染みの銘柄で揃えられていたことも、個人的には感慨深かったです。
子供のころ、父親が晩酌で飲んでいたお酒なんですよね。失礼ながら、そんなに「おいしいお酒」のイメージがなかったのですが、どれも繊細な味わいのおいしいお酒で「地元に昔からある酒蔵のお酒のすばらしさ」を知ることができたのは本当に良かったです。

〆の食事は「筍ご飯、孟宗汁、香の物」

この季節ならでは!の料理が並びうれしい!
孟宗汁、食べたかったんですよね……。

デザートは「レモンケーキ マチュドニアフルーツ」

フルーツはさくらんぼのリキュールで香り付けしてあり、ゼリーで固めてありました。
和食だとデザートはあまり手がこんでいなかったりするので、洋食ベースの凝ったデザートはうれしいですね。

お刺身は和食としてシンプルにお醤油でいただけて、和食だと単調になりがちな魚料理はフレンチっぽい調理法で楽しくいただけました。
肉料理も、和食だとなかなか調理法が難しいですけど、ちょうどいい焼き加減でステーキにしてくれて、〆のご飯はたけのこご飯!

和食と洋食のいいとこ取りで、満足度の高い夕食だったと思います。

亀やの朝食は小鉢のおかずまで手抜きなし、サラダのハムがおいしい

翌朝の朝食も、同じ食事処「千尋房」でいただきます。

海は西側にあるので朝日は見えませんが、朝焼けでうっすらと空が赤く染めるのを眺められました。

昨夜と同じ会場なんですが、朝になるとちょっと雰囲気が変わりますね。
そうか……昨日は洋食ベースで、白いテーブルクロスがかかっていたのか。

朝食。なかなか品数豊富です。

ご飯とお粥から選べるそうでしたが、ご飯でお願いしました。

豆乳で豆腐を煮た鍋。

味がついていなかったので、鰹節と醤油でいただいたらおいしかったです。

この、豆腐の鍋だけ少し面食らったけれど、実はそれ以外のおかずはどれも、想像以上においしいものでした。

蓋鉢の中は鶏肉団子ときのこのスープ煮。

鶏肉の味が濃くて滋養がありそうな一品。

煮物は大根とこんにゃくを、柚味噌で。

冷たく冷やしてあり、さっぱりといただける。

刺身はマグロのたたき。

夕食には出なかったまぐろが朝食で!わさびもちゃんとしたわさびで良い。

卵焼きは好みが分かれそうだけど甘い!実は、実家の卵焼きも甘かったのですが、このあたりはそうなのかな……?

納豆は、酒田名物の塩納豆かな?と思いきや、イカの刺身も入っていて豪華。

焼き鮭に添えてある紫蘇巻き味噌も懐かしい味わい。

サラダにはルッコラが入っていて、ハムも高級感ある味。そういえば庄内は豚肉の産地ですからおいしいハムもあるはずなんですよね……特に説明はなかったけれど、庄内のハムだったのだろうか。

ご飯のお供の小鉢もどれも手抜きの感じられない味。

セロリとにんじんのピクルスも爽やかで食欲が湧いてくる味だし、ほうれん草のおひたしもちょうど良く出汁の味がついています。

米どころですからご飯はもちろんおいしく、味噌汁は布海苔と丸い麩が入っています。

飲み物はオレンジジュースとほうじ茶。最後までおいしくいただきました。

朝食後はお部屋で海を眺めながら一休み。
最後に部屋のお風呂できりっと熱い湯に浸かり、身支度をととのえます。

【再訪したい度】★★★★☆ 食事と部屋風呂はすばらしいのでオフシーズンにまた泊まりたい

昔ながらの大型旅館なので、失礼ながら食事にはそんなに期待していなかったのですが、和洋折衷の仏蘭西懐石、まさに和と洋のいいとこ取りで楽しめました。朝食も一品一品手がかかっているのがわかる味で、おいしかったです。

大浴場には正直に言ってあまり魅力を感じなかったので、大浴場だけなら再訪したいとはあまり思わないかな……と。

ただ「温泉浴室付きの部屋」がかなり多く、値段もオフシーズンならそこそこで(あくまで温泉浴室付きの部屋としては、ですが)泊まれます。1人でも夏休み期間中以外の平日なら温泉浴室付きの部屋に泊まれますので、オフシーズンならまた泊まってみたいなと思える宿でした。

【1人旅に優しい度】65点:食事処がややハードル高いが、1人でも楽しみやすいドリンクメニュー

泊まりやすさ 10/20
湯野浜の海水浴場が営業している海の日から8月20日頃までは1人で泊まれる部屋が限定される。夏休みシーズン以外は、平日であれば概ね1人泊可能。

食事場所の配慮 10/20
食事処での夕朝食の場合、1人客はある程度席が近くなり、窓の外を眺めながら食事できる席に通してもらえるなど、ある程度の配慮は感じられる。

プランの選択肢 10/20 
特別フロアの「HOURAI」には1人で泊まれないのでHOURAIプランは1人で予約できない。食事の内容などは1人で泊まっても2人で泊まっても同じ選択肢となる。

ドリンクオーダー  15/20
日本酒、ワイン、焼酎などすべて、基本的にはグラスオーダーなので1人でも注文しやすい。地酒のペアリングセットがあるのも良い。

フリーWi-Fi完備 20/20
客室内でWi-Fi利用可能。問題なく快適に使えた。

◆ お知らせ ◆
2020年10月に著書が発売となりました。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。う