阿賀野川のほとりの鄙びた温泉地でひとり、美肌の湯に浸かる
咲花温泉(さきはなおんせん)は、新潟県下越地方の五泉市の、阿賀野川沿いにある温泉地です。
近いエリアにある月岡温泉のお湯に似たエメラルドグリーンの硫黄泉が毎分2000L湧出していますが、大型ホテルなどはなく、小中規模の旅館が10軒ほど軒を連ねる静かな温泉地です。
いろりの宿平左エ門(へいざえもん)は、全8室の小旅館で、大浴場や露天風呂からは阿賀野川を眺めることができます。*1
1人泊ができるのは平日のみですが、2022年の12月に1人で泊まってきました。2023年2月現在、2食付き16,500円で1人泊のプランが出ています。
アットホームで居心地のいい宿で、かけ流しの源泉とおいしい食事をゆったり楽しむことができましたので、レポートしたいと思います。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。
- 阿賀野川のほとりの鄙びた温泉地でひとり、美肌の湯に浸かる
磐越西線「咲花駅」から徒歩3分、公共交通機関でもアクセスは不自由ない
咲花温泉の最寄り駅は磐越西線の咲花駅。
東京方面から向かう場合は、上越新幹線で新潟駅か長岡駅まで行って信越本線に乗り換えて新津駅へ。新津駅から磐越西線に乗り換えて7駅、30分ほどで到着します。
前日に魚沼市の大湯温泉(上越線の小出駅が最寄り)の宿に泊まっていたので、新幹線には乗らず上越線で長岡まで来て信越本線に乗り換えました。
長岡駅を12時40分に出発し、咲花駅に着いたのは14時23分。咲花駅は無人駅で、駅舎は比較的新しいですが待合室とトイレがあるだけの小さな駅です。
この日、新潟県は雪予報で上越線は夕方から計画運休することになっていましたが、咲花駅周辺は小雪がちらつく程度。
チェックインできるのは15時からですが、駅から宿までは徒歩3分なのですぐ着いてしまいます。駅の回りに時間を潰せそうな場所もないし、寒いしどうしようかな……。
そこで宿に電話し「電車で来たので今駅にいるのですが、少し早いですけど中で待たせてもらうことはできますか?」と聞いてOKをもらい、宿に向かうことにしました。
徒歩3分、本当にすぐです。
駅から宿までの間には何軒かの旅館と住宅が点在していますが、温泉街はもちろん、商店のようなものもありません。
だけど、どこの温泉地も混雑するこの時期に1人で来るには、こういう静かな温泉地がベストのような気がします。
実は年末年始に月岡温泉に行ったこともあるんですが、あちらは温泉街が賑わっているけれど、1人だとあまり賑わっていても「混んでるなー」としか思わなかったりするのでね……。
賑わう場所には年末とかじゃなく、人のいない平日に行きたいのですよ、できればね。
14時30分過ぎに本日のお宿「いろりの宿 平左エ門 」に着きました。
中に入ると……おお!全館畳敷きの宿だ。
部屋の用意はできているとのことで、少し早いけれどチェックインさせてもらい、お部屋に案内していただきます。
【部屋】★★★★ Wi-Fiはないがトイレ洗面付きで快適な客室
いろりの宿 平左エ門は2階建てで、館内案内図だと10部屋以上客室がありますがじゃらんでは「全8室」となっていました。現在は8室が稼働しているということかもしれません。
この日案内いただいたのは2階にある「若鮎」のお部屋。
階段で2階にあがってすぐ手前の「若鮎」のお部屋に案内いただきました。
館内は畳敷きでスリッパを履かなくて良いので、階段の上り下りも楽ですね。
ドアを開けて部屋に入ると、客室の手前の踏込の部分もすべて畳になっています。
8畳の和室で、布団が既に敷いてありましたが、1人なのでスペースは十分あります。
空気清浄機や金庫も設置してありました。
床の間のところに液晶テレビと内線電話。
座卓の側に鏡台や箱ティッシュ、お茶セットとポットなど。ポットは湯沸かし機能はないタイプです。
縁側もしっかり畳が敷いてあり、空の冷蔵庫と石油ヒーターが。
雪国では暖房がエアコンだけだと寒かったりするので、ヒーターはありがたいですね。雪がちらつくこの日も寒くなかったです。
座卓の上にはお茶菓子の温泉まんじゅうが置いてありました。
縁側の手前に洗面所とトイレ。
新しくはないけれどしっかり掃除してあります。
クローゼットの中には浴衣と羽織やバスタオル、ハンドタオルが。
足袋ソックスと歯ブラシなど、基本的なものはしっかり揃っていました。
Wi-Fiの提供はないので、ネット環境が必要な場合は自分で準備をする必要があります。スマホの電波がしっかり入る場所なので、個人的には問題はありませんでした。
【風呂】★★★★☆ 阿賀野川を望む露天風呂と、フレッシュな源泉を楽しめる内湯
浴室は2箇所あり「チェックインから23時まで」と「朝6時から10時まで」で男女が交代します。
深夜は入浴することができません。また、硫黄泉なので金属類の変色に注意するよう説明書きがありました。
チェックイン~23時は、広めの内湯+木の露天風呂(内湯とつながっている)が女湯
浴室は1階の奥に2室並んでいます。
宿泊した日は、チェックインから23時まで、手前の浴室が女湯でした。
こちらの浴室は「内湯と露天風呂が隣り合っていて直接行き来できる」浴室です。一般的な「露天風呂付きの大浴場」ですね。
もう1箇所のほうは内湯から露天風呂に直接行くことができないので、詳細は後述します。
脱衣所入って左側に脱衣カゴ、右側に洗面所。
洗面台には化粧水などのアメニティはありませんが、ハンドソープとアルコールスプレー、Panasonicのドライヤー、カミソリが置いてありました。水分補給用の水*2のポットも置いてあります。
温泉分析表が掲示してありました。
源泉温度48.3度の含硫黄ーナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩泉です。
加水加温・循環ろ過消毒すべて無しのパーフェクトな源泉かけ流し。浴槽のお湯は毎日抜いて清掃しているとのこと。すばらしいですね!
浴室へ。
中央に半円型の浴槽があり、両脇にシャワー付きの洗い場が。
洗い場にはシャンプー&コンディショナーとボディシャンプー、石けんやクレンジングなどが設置してあります。
向かって左側の洗い場の横にあるドアが、露天風呂への入口ですね。
体を洗ってまずは内湯へ。
透明度の高いグリーンのお湯が美しい……。
浴槽の真ん中に湯口があり、湯口から少しずれたぐらいの位置で浴槽が仕切られています。
これは……湯口がある広い側に浸かれば熱めの湯を、湯口がない狭いほうに浸かればぬるめの湯を楽しめるというわけですね!すばらしい……。
湯口からは常時、源泉が注がれています。
少し内湯に浸かって温まってから、露天風呂に行ってみることにします。
露天風呂へ。
あれ?お湯が透明ですよ!
硫黄泉の多くは、湧き出たときは透明で時間の経過と共に白や緑などの色がついたりするものですが……こちらのお湯は香りや肌触りなども内湯のお湯に比べると温泉っぽさが弱め……。
ただ、湯温は内湯よりも熱いのです。
おそらく、内湯は加温なしのかけ流しだけれど、露天風呂は気温が低く温度が下がりすぎてしまうため、加温ありなのではないでしょうか。
じゃあ、内湯に戻ろうかな。
内湯は本当にすばらしいお湯!です。
月岡温泉のグリーンの湯にも少し似ているけれど、咲花温泉のほうが透明度が高く、油臭は少なめ。硫黄泉の香りです。
そしてとろみを感じるようなすばらしい肌触り。美肌の湯だと思います。
後で露天風呂の温泉分析表を見てみると、露天も源泉は同じですが「加水加温あり」とのこと。なるほど納得。
個人的には、かけ流しのお湯を楽しめる内湯のほうがだんぜん気に入ったのですが、夕食のときに隣のテーブルの方が
「内湯はちょっとぬるかった。露天風呂はちょうど良い温度だったので露天にばかり浸かっていた」
と話していたので、重視するポイントは人それぞれだなあと……。
内湯では泉質にこだわり、露天では熱めのお湯に浸かりつつ景観を楽しめる、ということで、多くの方が満足できるように工夫された浴室なんだなと思いました。
6時~10時は小さめ内風呂と岩の露天風呂(内湯とつながっていない)が女湯
翌朝は6時から入浴可能です。
男女が交換して、奥のほうの浴室が女湯になりました。
脱衣所は、若干コンパクトなような気もしますが、設備的にはすべて同じものが揃っていました。
違うのは、鏡の横に掲示された「露天風呂のご案内」と、その前にある「露天風呂用ゆかた」です。
露天風呂に行く際に1度服を着て廊下に出る必要があるので、それ用の浴衣を別途用意してくださっているんですね。なんて親切なんでしょうか!
たしかに……部屋から浴衣で来たなら着替えもそれほど面倒ではないけれど、もし「浴衣は寒いし……」とか思って私服でお風呂に来てしまったら、1度着替えて露天風呂に行くのは億劫ですもんね。ありがたい心遣いです。
温泉分析表がこちらの脱衣所にもありました。
泉質・利用上状況ともにもう1箇所の内湯と同じ。加水加温・循環ろ過消毒すべてなしのパーフェクトな源泉かけ流しです。
では浴室へ。
こちらの内湯は、浴槽内に仕切りがなくややコンパクトです。
入浴時の目線からは見えないけれど、浴室からは阿賀野川が見えます。
40度ほどの、冬にはやや温めのお湯ですが、ぬる湯好きなのでちょうどいい。
ほのかな硫黄臭も心地良いです。
体が温まったところで、浴衣に着替えて廊下に出て、露天風呂へ。
のれんをくぐった先にあるドアを開けていったん外に出て、20メートルぐらい歩きます。
湯小屋の扉には「内湯に入浴後お入りください」との貼り紙が。
露天風呂のほうには洗い場がないのでしょうね。
扉を開けると、脱衣棚と、その前になぜか臼と杵が・笑
露天風呂からも、入浴目線では見えませんが、立ち上がると阿賀野川が見えます。
こちらの露天風呂は石造りです。
雪がついた山が見えるし、浴槽の作りもなかなか雰囲気がありますね。おそらく露天風呂のほうが内湯よりも新しく作られたんでしょう。ちょっと作りが洒落ている気がします。
湯力はやっぱり内湯には劣るのですけど、雪景色を眺めながら熱い湯に浸かれる、という意味では良い浴室だと思います。
やはり露天風呂は、加水加温ありでした。でもいいよね……お湯重視なら内湯に入ればいいんですもの。
というわけで、露天風呂に浸かった後にまた、内湯に浸かって部屋に戻りました。
【食事】★★★★ 朝も夕もしっかり手がかかった料理でおいしくいただいた
食事は、1階にある広間でいただきます。畳の上にテーブルと椅子が置いてある食事処でした。
かなり広々としており、隣のテーブルとの距離も十分すぎるほど。
衝立もあるので席に着いてしまえば他のテーブルからの視線も気になりません。
ちなみにこの日は、私以外にもう1人、1人で泊まっている方がいることがわかりました。
平左エ門のドリンクメニュー
実は平左エ門さんは「チェックインの際に夕食時のファーストドリンクオーダーを聞いてくれる」タイプのお宿でした。
お部屋に案内いただいた際にドリンクメニューを見せられ「夕食の際の飲み物の注文があれば伺います」と言われたのですが、これまでの経験上、私はそのタイミングで慌てて決めると大抵失敗する(後からじっくりメニューを見て「こっちにすれば良かった!」となりがち)んですよね。
なので「夕食のときに決めていいですか」と言って注文しなかったのですが、そうしたら夕食の際に、ドリンクメニューがどこにもない!というちょっとしたハプニングがありました。
どうも1枚しか用意がないようで、他の場所で食事されてたお客さんのところに行ってしまったのか?しばらく見つからず……。食事が始まってから10分ぐらい飲み物を注文できなかったので、やっぱり先に頼んでおけば良かったかなあと。
泊まられる際はご紹介するメニューと料理を見て、何を頼むかをだいたいイメージしておいてチェックインの際に注文されると良いかと思います。だいたいどんな飲み物があるか、どんな料理が出るかあらかじめわかっていると、注文しやすいですよね。
さて、ドリンクメニューです。
ビールは生ビール(銘柄は不明)と瓶ビールがアサヒ、キリン、サッポロと揃っています。ウィスキーと焼酎、ウーロン茶などの基本的なソフトドリンクあり。
日本酒はすべて1合からオーダー可能でうれしい。全部で7種類あり、そのうち4種類が阿賀町の酒蔵「麒麟山」のお酒でした。
新潟県上越市のワインメーカーが造る「岩の原ワイン」も「善」と「深雪花」の2種類。
どちらもグラスでもいただけるのはうれしいですね。
そのほかには酎ハイと、麒麟山酒造が造るレモネードがありました。ちょっと珍しくて気になりますね。
夕食は塩レモンだれでいただく「もち豚のしゃぶしゃぶ」をはじめ、バラエティに富んだメニュー
お酒は、麒麟山も気になったけれど、軽やかでフルーティだという「雪影」を選択。
ほのかに甘みがあり、柔らかな香りで料理に合うおいしいお酒です。
席に着いてから温かい料理を持ってきていただく形でしたが、概ね一気出しな感じ。
揚げ物など、熱々じゃないと!というものはなく、冷めにくい蓋物が多かったので最後までおいしくいただけました。
いただきます!
前菜のあんかけのごま豆腐や、蕗と身欠きニシンの煮物は私の地元の味にも通じるものがあり、ちょっと懐かしい味わいでした。甘めの味付けでお酒が進みます。
お刺身はかんぱちと鮪。貝は何の貝かわからなかったけれど、新鮮だしおいしいです。
冷やし鉢は会津の郷土料理「こづゆ」に似た雰囲気。咲花温泉は磐越西線沿いだから、会津につながっているのですね。干し貝柱が入っており、イクラも乗っていてなかなか豪華。
茶碗蒸しも甘めの味付けで、具だくさんでおいしい。
メイン料理の「もち豚のしゃぶしゃぶ」は、塩レモンだれでいただきます。
野菜たっぷり。たれの味も爽やかでおいしい。
煮物は、しめじと魚を甘辛く炊いて、とろろをかけてありました。体の温まる、冬らしい煮物です。
海老入りの味噌汁とご飯をいただき、お腹いっぱい。
デザートはメロン。季節はずれだけどしっかりと甘く、すべておいしくいただきました。
朝食はシンプルながら野菜もたっぷり、食後のコーヒーもうれしい
朝食は同じ食事処で、8時からいただきました。
お米がおいしい新潟の宿なので、朝ご飯も楽しみ。
空の小鉢には何を入れるのだろう……?と思ったら、生卵でした。
焼き鮭、きんぴらごぼう、卵焼き、干し柿と大根おろしの酢の物。
甘い辛い酸っぱいのバランスが取れた献立で、おかずはどれも手がかかっているのがわかるお味です。
サラダには生野菜だけでなく卵サラダが乗っているのがいいですね。飲むヨーグルト、生のパイナップル。
蒸籠の中は蒸し野菜でした。ポン酢を付けていただきます。
食後にはサービスでコーヒーが出てきました。
【再訪したい度】★★★★☆ 非加熱にこだわったかけ流しの内湯に入りにまた来たい
お部屋はWi-Fiを使えないことを覗けば快適ですし、食事もおいしく、そして何と言ってもお風呂がすばらしい宿です。
咲花温泉でも非加熱のかけ流しにこだわっている宿は少ないと聞きますし、この宿の内湯は貴重だと思います。深夜は入浴できないのですが、お酒を控えて夕食後もお風呂に入りに行きたい!と思える、すばらしいお湯でした。
また、宿の方たちの接客も温かく、素直に「また来たいな」と思える宿だったと思います。土曜日に1人で泊まれたら、毎年泊まりに来てしまいそう……。
そう言えば、宿の名前は「いろりの宿」なのに今回は客室でも食事処でも囲炉裏にはお目にかからなかったのですが、どうやら、ちょっと広めの客室には囲炉裏が設置してあるようです。食事などで使うわけではないようですけどね。
2名以上だと食事プランがいろいろ選べるけれど、1人だとスタンダードなお食事限定になってしまうのはちょっと残念ですが、仕入れの問題もあると思うので仕方ないのかな。とは言え、タイミングが合えばまた泊まりたい宿です。
【1人旅に優しい度】45点:1人で泊まりやすくはないけど、それでもまた泊まりたいなと思う
泊まりやすさ 10/20
平日のみ1人泊可能。
今回は年末年始の休暇中だったが、まだ平日扱いだったので予約できた
食事場所の配慮 15/20
食事処での食事だが、テーブル間の間隔は広く取ってあり、衝立もあるので視線は気になりにくい。
プランの選択肢 5/20
1名宿泊の場合は「一人旅プラン」限定になってしまう
ドリンクオーダー 10/20
日本酒7種類が1合オーダー可能で、ワイン2種類×赤白がグラスオーダー可能。
焼酎やウィスキー、チューハイなどはグラスオーダーできるので1人でもそれなりに楽しめる。
利き酒セットのようなものがあればさらにうれしいな、と思った。
フリーWi-Fi完備 5/20
Wi-Fiの提供はなし。スマホの電波状況は問題ない。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。