日本で最も登りやすい3000m峰と称される乗鞍岳
乗鞍岳は、最高峰の剣ヶ峰の標高が3026メートルある、日本で19番目に高い山です。
シーズン中は標高2702メートル地点にある「畳平」までバスが通っており、そこからなら標準コースタイムで3時間足らずで往復することができます。そのため「最も登りやすい3000メートル峰」と呼ばれたりするようです。
登山を始めたばかりの頃にも登ったことがあったのですが、今回、まだ雪がたっぷり残る乗鞍岳の剣ヶ峰に、春山登山バスを利用して登ってきました。
6月最初の週末。乗鞍高原温泉に前泊し、残雪の乗鞍岳に登る計画を立てた
2017年6月最初の週末は、土曜日の天気はいまいちなものの、日曜日は晴れそうな予報が出ていました。
それならば山麓の宿に前泊して、日曜の朝早めの時間帯から日帰り登山をしよう!と考え、まずは宿を検索。
諏訪に泊まって霧ヶ峰、増富温泉に泊まって瑞牆山などを検討しましたが、エリア的に天気も良さそうで、かつ行ってみたいなと思ったのが「乗鞍高原温泉に泊まって残雪の乗鞍岳登山」でした。幸いにも、乗鞍高原温泉で以前から泊まりたかった宿に空室があったので即座に予約。
前日の土曜日、松本から電車とバスを乗り継いで乗鞍高原へ
松本まではあずさで、松本からアルピコ交通上高地線の2両編成の電車に乗り込むと……なんと、何かイベントをやっている日だったようで、電車の中でバイオリンの生演奏がありました。びっくりw
しかし私は寝たかったので、バイオリンを演奏している車両とは別の車両に乗りました。
電車が新島々に着くと、おそらく同じイベント絡みだと思うのですが駅のホームに。。。
アルクマがいるよーーーー!
いやー、動くアルクマがめちゃめちゃかわいかったです。
赤いリュックを背負った後ろ姿もなんとも愛らしい。。。
イラストで見てもかわいいと思っていたのですが、実物を見てファンになってしまいましたよ。
ちなみに、電車に詳しくないのでよくわからないのですが、乗ってきた電車はこっちの電車です。
アルピコ交通カラーですね。
さて、新島々で電車を降りたら乗鞍高原行きのバスに乗り換えるのですが、その前に窓口で乗鞍高原までの乗車券を購入します。
販売されているのは「松本~乗鞍高原」までの乗車券で、私は松本~新島々までの電車の乗車券のみ、松本駅で購入してしまっていたので、窓口で精算します。
乗鞍高原行きの乗車券は片道1750円、往復3300円で販売されており、往復にすると200円安くなるのですが、このとき私は片道切符を購入しました。
というのは、このときの計画では「1日目は乗鞍高原で温泉を満喫し、2日目は乗鞍高原からバスで大雪渓へ移動、乗鞍岳に登って畳平に下山。平湯温泉経由で帰る」ことを考えていたのです。
帰りは乗鞍高原には立ち寄らないつもりだったので、片道切符を購入したのでした。
新島々駅を10時50分に出る、乗鞍高原行きのバスに乗車。
予報ではあまり良い天気ではありませんでしたが、今日もそこそこ晴れていますね。
乗客の8割は、スキーヤー、スノーボーダーでした。
約1時間の乗車で、11時42分に乗鞍観光センターに到着。
すると、スキーヤーのみなさんたちは、慌てて荷物をまとめて観光センターの駐車場に向かっていきました。
というのも、8分後の11時50分に、乗鞍岳春山登山バスが出発するからです。スムーズに乗り継げるようになっているんですね。
11時50分の春山登山バスに乗ると、12時半過ぎには大雪渓に着くことができるため、それから一滑りできると言うわけです。
スキーならOKかもしれませんが登山となると、12時30分から登るのはちょっと遅いですよね。。。
乗鞍観光センターの駐車場から眺めたこの日の乗鞍岳。
そう天気は悪くなさそうですが山頂周辺は雲に覆われていますね。よし、明日明日。
駐車場の一角に「シャトルバス乗り場」があります。明日はあそこからバスに乗ればOK。
明日乗る予定の春山バス、そして夏山シーズン中は畳平行きのバスが出る乗鞍観光センターには、食堂や売店、コインロッカーやトイレなどの設備が揃っています。
売店ではお土産や、手袋などの登山グッズも販売されていました。
一応おにぎりなどお弁当類の販売もありますが、数に限りがありますし、近くにコンビニのようなものはないので、登山時の昼食は持参したほうが無難です。
この売店の中にコインロッカーもあり、登山中に使用しない荷物を預けることもできます。
コインロッカーに入りきらない大きさの荷物は、売店に頼めば預かってくれるそうなのですが、観光センター自体が16時30分には閉館してしまうそうで、その時間を過ぎると、ロッカーの荷物も売店に預けた荷物も、翌日まで受け取れなくなってしまうので注意が必要ですね。
さて、この売店に来て初めて私は知ることになります。
この前日に雪が降り、路面凍結のためにバスが終点の大雪渓まで運行していないということを。
乗鞍岳春山登山バスって?
先ほどからちょいちょい話に出てくる「乗鞍岳春山登山バス」について、情報をまとめておきたいと思います。
乗鞍岳の最も標高の高い登山口である畳平(標高2702メートル)には、岐阜県側の「乗鞍スカイライン」と、長野県側の「乗鞍エコーライン」を通っていきますが、どちらもマイカー規制が行われています。
畳平までは、岐阜県側は平湯温泉バスターミナルから、長野県側は乗鞍観光センターから出ているシャトルバスに乗って行くことになりますが、いずれも冬期間は運休となります。
岐阜県側のシャトルバスは、例年5月中旬から10月末ごろまで運行しますが、長野県側はもう少し早く、4月下旬ごろにはバスが開通します。長野県側はバックカントリースキーヤーの需要があるため、平湯側よりも早い開通となるのですが、除雪の都合もあるのか、開通直後は畳平までは運行しません。
4月下旬から5月下旬ごろまでは「位ヶ原山荘前」までバスが運行し、そこから先は歩いていくことになります。
そして、5月下旬には「大雪渓」まで運行区間が延び、7月頭になってようやく終点の「畳平」まで運行を始めるようです。詳しくはこちらの時刻表で確認できます。
「畳平までの運行を開始する以前のシャトルバス」のことを「乗鞍岳春山登山バス」と読んで区別しているのですね。
6月初旬のこの日は、本来であれば「大雪渓」までバスが運行しており、下車後すぐに雪渓の上りに取りつけたはずなのですが、もし、手前の位ヶ原山荘までしかバスの運行がなければ、1時間以上余計に登らなければなりません。となると、朝も、予定していたより1本早いバスに乗らなければならないですね。。。うーん、どうしましょ。
明日の行程について悩みつつ、まずは日帰り温泉の湯けむり館へ。
ランチとビールと温泉を楽しみます。
そう、この時点ではまだ「明日は畳平に下りて、岐阜側から帰って平湯温泉でお風呂に入ろう」と考えていたのです。
乗鞍高原には戻ってこない予定だったので、湯けむり館にも初日に立ち寄ったのですね。
そして、前泊の宿、山水館信濃にチェックイン。
ここで、宿の方から「乗鞍から大雪渓のバスは、午前中の便は位ヶ原山荘までしか行かなかったけど、午後の便は大雪渓まで運行したこと」と「平湯温泉から畳平までのバスは終日運休だったこと」を教えていただきました。マジですか……。
<乗鞍岳春山バス情報>
— 乗鞍高原(Norikura Kogen) (@NorikuraKogen) 2017年6月2日
本日6月3日(土)は、8:30便より運行致しますが、路面凍結の影響で、8:30便と9:40便は「位ヶ原山荘前」での折り返し運転となります。
※岐阜県側の乗鞍スカイラインは、凍結のため通行止めとなっています。
本当だ。。。午前中は位ヶ原山荘まで。そして岐阜側は通行止め。。。
うーん「大雪渓から剣ヶ峰に登って畳平に下山し、バスで平湯温泉」の計画はちょっと、危うくなってきたかもしれない。
翌日の朝、飛騨乗鞍観光協会のホームページを確認すると、飛騨側はまだ、通行止めでバスも運休との情報が出ていました。
よし、ちょっと残念だけど大雪渓を往復して、帰りも長野側から帰ろう、と決心しました。
乗鞍観光センターから春山登山バスで大雪渓へ向かう
翌日朝は快晴!
宿で朝7時から朝食をいただき、朝風呂を楽しんでから9時過ぎにチェックアウトして徒歩で観光センターへ。
快晴ですが、山の方向にはちょこっと雲がありますね。
結局、帰りは平湯に向かわずに乗鞍高原に戻ってくることにしたので、観光センター内のロッカーに、登山に不要な荷物を預けて身軽になりました。
駐車場の一角にあるシャトルバス乗り場で往復乗車券を購入します。
観光センターから大雪渓まで、片道1450円。往復だと2500円です。
乗車券購入の際、簡単な登山地図と登山計画書の用紙が配布され「登山の方もスキーの方もなるべく提出するように」言われます。私もその場で書いて提出しました。
ちなみに、乗客は1割が観光客、2割が登山客、7割がスキー客という比率。9時40分に、バスは乗鞍観光センターを発車します。満席になったら増便してくれるそうなので、早く並ばないと座れない!ということはありません。
45分ほどの乗車時間ですが、後半の5分ぐらいのあいだ、立山の「雪の大谷」のように、雪の壁の間をバスが通っていく区間があります。
こちらは、宿泊した宿においてあった観光案内の写真です。
さて、雪の壁、どんなもんでしょうね?
お……だんだんそれらしい場所にやってきましたよ!
なるほど「雪の壁」っぽくなってきました。
「このあたりが、今一番背が高い壁になっているところです」とアナウンスがあったところ。
バスの背丈よりも少し低いぐらいでしょうか。写真だとそうでもないけど、実際に雪の壁の間をバスが通っていくさまは、なかなか壮観でした。
終点の大雪渓に到着!
正確な標高はわかりませんが、おそらく2700メートル近い高所ではあると思います。
雲が間近に迫ってくるさまが、美しいですね。
このバス停は、夏山シーズン中も「肩の小屋口」と名前が変わりますが、停留所として使われている場所です。多くの人は終点畳平まで行ってしまいますが、夏の間もここから登ることができるんですね。
なので、公衆トイレもあります。
簡易水洗式でしたが、まだ凍結しているのか水は流れず。バケツにくみ置きされている水を、柄杓で入れて流す必要がありました。
では、身支度を整えて登山開始します。
最初のうちは傾斜もそれほどきつくないので、アイゼン無しでも登れそうではありましたが、途中で付けるのも面倒くさいので最初から10本爪アイゼンを装着。
スキーヤー、スノーボーダーの方たちと一緒に登山開始!
いきなり、雪渓の直登です。というか今回の行程の9割が雪渓です。
スキーの人はスキー板を付けたまま登っていくけど、ボードの人は持って登らなければならないから大変だな。。。
最初は緩やかな上りが続きます。
人も少なくてすばらしいな!
今回の登山行程がこちら。
夏山シーズンであれば「肩の小屋口」から肩の小屋まで登山道が出ているのですが、この時期はまだ登山道は雪の中。
ということで、肩の小屋には寄らず、朝日岳に向かって雪渓をひたすら直登するのです。
少し登ると、摩利支天岳にあるコロナ観測所が見えてきます。
気温が高くて踏み抜き地獄だったらつらいなーと思っていたのですが、上りは楽ではないですけど、踏み抜くほどの雪の状態ではなく、比較的登りやすかったです。
次第に傾斜が急になってきます。
写真ではよくわからないのですが、このあたりけっこう急なので「登ったはいいけど、同じ道を普通に下るのこわいなー」とこのとき思っていました。
傾斜の急さがわかる写真がこれ。
向こうに見えるコロナ観測所を撮ったのですが、手前の急斜面を、私は登っているわけです。。。ほんと急だよなこれ。
こうやって下から撮ると、緩やかな上りに見えてしまうから悔しい。
しかし、あんまり人がいないのがうれしいですねー。
振り返って「帰り、ここを下るのか。。。」とちょっとびびりつつ眺めてみたり。
かなり登ってきたので、コロナ観測所の下にある、肩の小屋も見えるようになりました。
たぶん、あともうちょっとで、朝日岳、か蚕玉岳あたりの稜線に出ます。
もうちょっと……。
着きました!稜線です。
向こうに見えるのがもう、剣ヶ峰。山頂ですね。
ここまで来れば本当に、山頂はもうすぐです。
近づいていくと、山頂の手前に小さな小屋があるのが見えてきます。あれが頂上小屋ですね。
宿泊施設があるわけではなく、お土産や飲料などを売っている小さな小屋です。
頂上小屋のあたりから山頂までは、ほんのわずかな距離ではありますが岩稜の中を歩く道になるため、スキーで登って来た方たちはその手前でスキーをはずしていましたね。
頂上小屋。飲み物やバッジ、Tシャツなどを売っています。
以前、夏山シーズン中に来たときは立ち寄ってバッジを購入しましたが、今回はアイゼンを付けていますし、スルー。
乗鞍岳の登山バッジは、もちろん畳平でも購入することができますが、たしか頂上小屋でしか販売していないバッジがあったんですよね。(2011年当時ですが。。。)
頂上小屋を超えると、あとほんの一登りで山頂です!
山頂の祠のようなものが近づいてきます。
雪で真っ白になった鳥居。
着きましたー!!
祠は、シャッターが閉められています。なんか、作りは近代的なんですね。。。
遠くの山々は雲がかかって見えませんが、空は晴れているし、雪のついた稜線が眺められたので満足!
山頂碑にも海老のしっぽがびっしり。
一応、記念写真を撮っていただきました。
準冬山装備なので、やや地味な格好ですが。。。
山頂は人も多いし、バスの時間もあるので一休みしたら下山しますよ!
もと来た道を戻ります。
手前のピークが蚕玉岳で、その奥が朝日岳でしょうかね。
蚕玉岳あたりまで戻ってきて、名残惜しく山頂を振り返ったり。
ちなみに、山頂には多くのスキーヤーの方達も登ってきていたんですが、スキーブーツで登られてるので、最後の岩稜帯のところが大変そうでした。
私も、アイゼンを外すのが面倒で、雪のないところもアイゼンのまま歩いていたのでちょっとこわかったけど。
向こうにも山頂碑らしきものが見えますが、あそこまで行かずに左の斜面を下ります。
いやー、やっぱり急だなー。
でもまあ、雪の状態も悪くはなかったので、気をつけて下ればなんとか行けます。
シリセードを試みた人が近くにいたのですが、急斜面すぎて止まらなくなり、回転して止まってました。こわい。
だいぶ下ってきましたね。
帰りのバスが見えてきました。
いよいよ登山口に近づいてきたところで気づいたのですが、バス停より先に、今まさに除雪中の雪の壁があるんですね。
ちょっとおもしろそうなので、下りたら行ってみよう。
下山したので行ってみました!
この先、進入禁止。
ここをさらに除雪すれば、畳平までの道が開通するはずなのですが、6月初旬の時点では行けるのはここまでです。
いやー、最後まで天気よくて楽しかったです。お疲れさまでした!
バスのところまで戻ります。
帰りは、13時24分発のバスに乗車します。この日の終バスは15時26分発です。
終バスに乗る方が多いのか、帰りのバスは空いていました。
大雪渓のバス停に着いたのが10時26分だったので、3時間足らずの登山ではありましたが、大満足のスノーハイクでした♪
14時10分に観光センターに到着。
途中で行動食に菓子パンなど食べていたのですが、ちょっと一休みしたかったので観光センター内の食堂へ。
店内に入り、食券を購入します。
定番のそばやうどん、カレーのほか「山賊バーガー」や「ソースカツ丼」などの信州らしいメニューもありました。
私は、そこまでお腹が空いていたわけではないのでソフトクリームとコーヒーを注文して、一休み。
この後、16時10分発の新島々行きのバスに乗って松本方面に向かうのですが、少し時間があるので昨日も立ち寄った「湯けむり館」で汗を流しました。
意外にも、前日の土曜日よりも日曜日のほうが湯けむり館は混んでいましたね。晴れていたからかな。
乗鞍岳は夏に登ってもすばらしい山です
今回は6月初旬ということで残雪期の登山でしたが、記事を公開した現在は7月下旬、既に夏山シーズンまっさかりですね。
乗鞍岳は夏に登ってもすばらしい山ですので、前回登ったときの写真も少し、紹介したいと思います。
前回は、終点畳平から登りました。
畳平には大きなお土産屋さんや宿泊もできる山小屋があり、コインロッカーもありました。
時期は9月の中旬で、既にかなり秋の気配に包まれていました。
お花のシーズンがほぼ終わりかけていたのは残念でしたね。
畳平周辺には「鶴ヶ池」や「不消ヶ池(きえずがいけ)」と言う池があるのですが、この、池のある風景がすばらしく美しかったです!
こちらが、バスターミナルのすぐ近くにある鶴ヶ池ですね。
バスを降りてすぐに、こんな美しい風景が見れるなんて……みんなもっと来ればいいのに、と思いましたよ。(今でも十分に人気のある観光地だとは思いますが)
鶴ヶ池の周辺は、整備された道なので、普通の靴でも歩けます。
こちらが、少し歩いた先にある、不消ヶ池でしょうかね。
火山らしく、池の水が緑っぽいのが美しいですねー。
肩の小屋に向かう途中、コロナ観測所を見上げたところ。
肩の小屋から先は登山道になるので、1時間半ほどで往復できる道ではありますが、きちんとした登山装備があったほうがいいと思います。
天気が良ければなんということもありませんが、高山なので天気が急変すると大変ですからね。。。
山頂の鳥居!
書いていたら、また夏にも登りたくなってきました。
今度は、今回立ち寄れなかった平湯のほうから行ってみたいですね。
平湯からの夏山登山はOKPさんの記事で詳しく書かれていましたので、参考にさせていただきたいと思います。
実は今回も、平湯前泊で行くことも考えたんですが、平湯に泊まると平湯が楽しすぎて、早起きが億劫になってしまいそうな気がするんですよね。。。