温泉ブログ 山と温泉のきろく

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箱根塔ノ沢温泉 元湯環翠楼 宿泊記 創業400年の老舗旅館で温泉内湯付きの部屋に泊まる大人の一人旅

実は土曜日も一人泊可能!大人の一人旅にぴったりの風格ある建物とすばらしい浴室を持つ宿

塔ノ沢温泉の元湯環翠楼は、箱根湯本駅から箱根登山鉄道で一駅、徒歩でも10数分の場所にある歴史ある温泉宿です。
近年大河ドラマなどでも注目されることの多い静寛院(皇女和宮)が療養のために逗留した宿で、天璋院(篤姫)がお見舞いに来た記録も残っているとか。また、日本の初代総理大臣である伊藤博文が定宿としていたことでも知られています。「環翠楼」という現在の屋号は伊藤博文が贈ったものなのだそうな。

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お安い宿ではありませんが、高級旅館が多い箱根の中にあってはそこまでめちゃくちゃに高いわけではないし、土曜日も1人で温泉内湯付きの部屋に泊まれるので、一度泊まってみたいと思っていた宿でした。
宿泊してみたところ、期待以上のすばらしい宿でしたので、レポートしたいと思います。

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一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。

 

箱根湯本駅から徒歩15分、函嶺洞門を眺めつつ歩いた先に待つ歴史ある宿

元湯環翠楼のある塔ノ沢温泉は箱根湯本駅から徒歩10分ほど。
当日は新宿駅から小田急線の特急で向かう予定でしたが、中央線で新宿に向かう途中に「小田急線が人身事故で止まっている」と知り「小田原まで東海道新幹線→箱根登山鉄道で箱根湯本へ」というルートに変更しました。

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東京駅の一番街に入っている京橋千疋屋でフルーツサンドを買い、お昼ご飯にします。

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箱根登山鉄道で箱根湯本駅に到着し、徒歩で宿まで向かいました。

元湯環翠楼までのアクセス

元湯環翠楼まで、箱根湯本駅からは徒歩15分。

宿の最寄り駅は「塔ノ沢駅」なので、箱根湯本から一駅乗ってもいいのですが、塔ノ沢駅から歩いても12分ぐらいかかりますので……それならば箱根湯本から歩いたほうがいいかなと思います。

宿のホームページの「よくある質問」を見ると、元湯環翠楼では駅までの送迎は行っておらず、旅館組合で運営しているマイクロバスを利用するように記載がありました。
ただこの旅館組合のマイクロバス……コロナ禍で大幅に減便しているようでして、2022年3月現在の時刻表を見ると、環翠楼の前を通る「塔ノ沢線」は、1日3本、午後は16時45分発の1本のみと、実用的な運行ダイヤとは言えない状況です。歩きたくない場合はタクシー移動になりそうですね。

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箱根湯本駅前の、観光客向けのお店が立ち並ぶ通りをしばらく歩いていくと、5~6分で商店街が途切れ、緑が多い(冬なのでそこまで緑じゃないですが)道に変わります。

まもなくすると「塔ノ沢温泉郷」という看板が見え、その向こうに見えるのは……?

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箱根駅伝ファンにはお馴染みかもしれない、函嶺洞門です。

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山からの落石を避けるために建てられた洞門で、以前はあの中の道が箱根駅伝のルートだったんですよね。懐かしいな……。

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名残を惜しみつつ函嶺洞門に別れを告げ、橋を渡って塔ノ沢温泉の旅館街に入っていきます。

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橋を渡るとまず現れる宿は「福住楼」です。

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こちらの宿も重要文化財指定されている歴史ある宿で、昨年在華坊さん が宿泊されていてかなり気になっていたのですが……。

zaikabou.hatenablog.com

価格帯もそう変わらないのですけど、環翠楼だと同じ値段で温泉内湯付きの部屋に泊まれたので……今回は環翠楼を選んだ次第です。福住楼もいつか泊まってみたい。

環翠楼は、福住楼の前を通り過ぎてすぐに現れる橋の向こうにあります。

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この橋の手前から眺めた宿の姿がなんとも格好いいのです。

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入口はこちら。

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木に漢字で書かれた看板と、横文字の看板。

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看板にも歴史が感じられるわ……と思いながら写真を撮っていたら、中から宿の方が現れたので、予約の名前を告げて中に入ります。

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建物は古いけれど、床はピカピカに磨き上げられています。フロントの前には胡蝶蘭が飾ってありました。

チェックインの手続きを済ませると、お部屋係の方が現れて部屋に案内していただきます。元湯環翠楼は、部屋への案内から夕食・朝食時の給仕まで1人のお部屋係の方が担当される、昔ながらの接客スタイルです。

【部屋】★★★★★ 温泉内湯付きの「あじさい」は快適かつ味わい深い部屋だった

玄関やフロントのある階がこの宿の「2階」にあたり(フロント階と呼ばれているもよう)、宿泊した部屋はそれより1つ下の1階フロアにありました。この日宿泊したのは「あじさい」のお部屋です。

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同じフロアに大浴場があるので浴室への移動も楽で良かったです。

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扉を開けると左側にポットと冷蔵庫、グラスなどが置いてあり、右側の襖を開けるとお部屋です。

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外の光もよく入る、8畳の和室。

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正面から見ると、右から2枚目の障子が少しずれている……?のが不思議だったのですが、実はこの障子、上から引き下ろしてこんな風に↓閉めることができるんです。

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窓にカーテンレールなどついてない(付けないほうがいいですよね)古い建物なので、夜や、外からの視線が気になるときは障子を開閉することができるんだそうです。

障子の向こうの縁側も、とても良い雰囲気。

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こちらでお風呂上がりのビールを飲むのも気持ち良さそうですね。
ちなみに、和室の中はエアコンがついているのですが、縁側にも石油ストーブが設置してあって、部屋の隅々まで暖かく保たれていたのもうれしかったです。

この縁側から外に出ることもできるそうで、サンダルも用意されていました。

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縁側が遊歩道につながっているそうで「散歩が気持ち良いですよ」と言われたのですが……残念ながらこの後雨が降ってきてしまったんですよね。天気が良ければ散歩、してみたかったです。

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縁側の向こうには洗面所があり、右手に温泉浴室があります。

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歴史ある建物ですが、水回りはきちんと手を入れられていて、洗面ボウルや水栓も新しくて使いやすいです。

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歯ブラシ、ヘアブラシ、コットン、カミソリ、シャワーキャップなどのアメニティや、化粧水・乳液・フェイシャルソープなどもしっかり揃っていました。

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トイレはタンクレスタイプで、ウォッシュレット付き。

それから、部屋の隅に置いてあった箱ティッシュのケースが寄木細工だったのが素敵だったり。

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襖の引き手の部分に細工が入っていたのもいいなと思ったんですが、このあたりは昔ながらのものなんでしょうかね。

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テレビは大きく、新しいものです。Wi-Fiも完備されていて、速度も問題ありませんでした。

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お部屋に金庫はなくて、貴重品をフロントに預けるための封筒がありました。

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冷蔵庫は襖の外に。中には有料の飲み物として瓶ビール4種(サッポロ・アサヒ・キリン2種)と日本酒、梅酒が。

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クローゼットの中には浴衣と帯、バスタオル・フェイスタオルが入っています。

お部屋の中の設備について、お部屋係の女性がかなりしっかり説明してくれ、最後にお茶を淹れてくださいました。

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お茶菓子は「ちもと」のわらび餅。
箱根のお土産としては定番・かつ人気の品で、売り切れになってしまうことも多いそうです。

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こちらのわらび餅は、気に入ったら夕食までにフロントに連絡すれば、お土産として翌日のチェックアウト時に購入することができるとのこと。

おいしいわらび餅だったので購入するか迷ったのですが……1人で一気に食べてしまいそうなので、我慢することにしました。

コンパクトながらお湯は極上!源泉かけ流しの客室風呂

さて、今回の宿選びの際に最もこだわったポイントでもある「かけ流しの客室風呂」についてご紹介したいと思います。

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洗面所の右手に脱衣スペースがあり、その奥に浴室の扉があります。常時かけ流しており、温泉成分が固まって見えることがあるが汚れではないですよ、という旨が掲示してありました。

扉を開けて浴室内へ。

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手前にシャワー付きの洗い場があり、アロマエッセシリーズのシャンプー&コンディショナーとボディシャンプーが設置してありました。

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木製の樽タイプの浴槽で、1人入ればいっぱいのコンパクトな浴槽ですが、浴槽のすぐ側に窓があり、しかもきちんと網戸も入っていて、窓を開ければ半露天風呂気分も味わえるのがとてもいいなと思いました。

客室風呂に蚊が入ってくるとつらいので、網戸があるのはうれしいですね。

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コンパクトな浴槽ですが、かなりの量の源泉が常時かけ流されています。
小さな浴槽にこれだけの量がかけ流されているので、浴槽のお湯はすぐに入れ替わるのでしょう。いつ入ってもとてもフレッシュなお湯を楽しむことができました。

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チェックアウトまで、何度も部屋風呂に浸かりました。
大浴場だと何度も入りに行くのは面倒で1度の入浴時間を長くしがちですが、客室にお風呂がついていると、寝る前にサッと入ったり、朝起きてからもサッと浸かったりできるので体にも負担が少なくていいのです。

温泉浴室が付いている部屋、頻繁には無理ですが、泊まると「贅沢したなあ!」という気持ちになれます。

洗面所・大広間・ラウンジなど歴史生きづく館内を歩く

建物は古いとは言え客室内はきちんと新しい設備に変えられているので、あまり古い建物「らしさ」は感じられなかったのですが、館内を歩いてみると、そこかしこに歴史が感じられるポイントがありましたので、ご紹介したいと思います。

まず、宿泊した部屋と同じフロアにあった洗面所です。

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100年ぐらい前(大正時代)のものだそうで、床の模様から鏡に書かれている文字から洗面台から……。

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レトロ感たっぷりですが飾りではなくこの洗面所、今も現役で使えるんですよ。

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ハンドソープも設置してありました。

それから、客室係の方にも「ぜひ1度見てほしい」と言われた、最上階の4階にある大広間。

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60畳以上ある大広間が3間もあります。伊藤博文公は滞在時は大広間で度々酒宴を催したとか。

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襖に描かれた絵が見事な「神代閣」

こちらの「万象閣」には舞台がありました。

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現在は宴会場として使っているわけではなく見学のみですが、清掃もしっかりされており、いつでも見学できるように照明もきちんと点いていました。

それから、フロントの橫にあるラウンジ。

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廊下からガラス戸越しに見ても良い雰囲気です。

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中に入ると、床の木も寄木になっていました。
この宿に来るまでまったく知らなかったのですが、寄木細工は箱根の名産品なんですね。

【風呂】★★★★☆ すべて夜通し入浴可能!美しいタイル張りの大正風呂をはじめ、雰囲気も湯も抜群

館内もあらかた見学し終わったところで、お風呂に行ってみたいと思います。
元湯環翠楼には

・時間帯で交換する大浴場2ヶ所(大正風呂)
・男女別の露天風呂(交換なし)
・貸切風呂

以上3ヶ所(浴室の数で言うと5室)の温泉浴室がありますが、温泉分析表や源泉の利用状況については、すべての浴室に同じものが掲示されていましたので、先にご紹介したいと思います。

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源泉温度48度程度で、浴槽内では40~42度となる、ph8.9のアルカリ性の単純温泉。加水なし、季節によって加温はあり、循環なし、塩素系薬剤による消毒あり、とのことでした。

大正風呂(手前)は神殿風の明るい浴室

まずは、宿泊した部屋のある1階フロアにある「大正風呂」へ。

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浴室へ向かう途中の廊下も、いちいち風情があるのでつい、立ち止まって絵を眺めたりしてしまいます。どれも環翠楼を定宿とされていた作家さんの作品だそう。

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チェクイン時は手前の浴室が女湯となっていましたが、午前4時~5時ごろに男湯と女湯が交換になるそうです。

浴室入り口前に置いてあるチェストの中には、シャワーキャップやカミソリ、歯ブラシやヘアブラシなどのアメニティが入っていました。

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脱衣所の中には置いていないので、必要なものはこちらか、あるいは部屋に置いてあるものを持ってきて使うことになります。

まずは、チェックインから当日夜まで女湯となっていた手前の浴室へ。

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壁にステンドグラス風の飾りが施されていました。

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「大正風呂」とは言え、脱衣所は現代的で清潔です。
おそらく密を避けるために、脱衣カゴの数は減らしてあるようでした。

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ドライヤーは、Panasonicのイオニティが2台設置してあります。

では、浴室内へ。内湯のみで、浴槽が2つあります。

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床のタイルが何とも美しい浴室で、白い壁と柱は「大正」というよりもギリシャの神殿のような雰囲気です。

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壁際にシャワー付きの洗い場が4ヶ所あり、シャンプー&コンディショナー、ボディシャンプーが設置してあります。

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体を洗って、まずは中央にある円形の浴槽へ。

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大正風呂の「大正」の由来は、大正時代に輸入された珍しいタイルを使っているからなのだそう。
源泉が投入されて水面が揺れると、浴槽の底にあるタイルの模様も万華鏡のようにゆらめいて、とてもきれいでした。

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壁際にある浴槽はやや浅めで、半身浴しやすい造り。

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浴槽内のお湯は40度ほどの適温に調節されており、ゆったりと湯浴みを楽しむことができました。

大正風呂(奥)は洞窟のような雰囲気ある浴室

翌朝の4時から5時の間に浴室が交換となったので、奥のほうの浴室にも入りにいきす。

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脱衣所・洗面所は配置は異なるものの、もう一つの大正風呂と設備などはすべて同じです。

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しかし、浴室内の雰囲気はかなり異なっていました。

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前日に入った大正風呂と比べると、こちらは照明がやや暗めに抑えられ、洞窟の中で湯浴みをしているような不思議な雰囲気を醸し出していました。

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洗い場はこちらも4ヶ所。あれ、シャンプー類がこちらの浴室はポーラのアロマエッセですね。

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浴槽はこちらも2つ。浴室の端のほうに、円形の浴槽があります。

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底面のタイルがやはり美しいですね。

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もう1ヶ所の浴槽は、岩の隙間から源泉が投入されています。

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大正風呂は、源泉が湧出している場所に最も近い浴室なんだそうです。
新鮮なお湯を、雰囲気ある浴室でゆったりと楽しむことができました。

大正風呂の周辺にはひと休みできるスペースと自動販売機あり

大正風呂の近くに、自動販売機がぽつんと置いてあるスペースがありました。お部屋係の方の話では、こちらが館内に唯一ある自動販売機だとのこと。

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値段は市価より若干高めの、旅館内の自動販売機としては標準的な価格です。
種類は多くはないものの、お茶、スポーツドリンク、缶コーヒー、野菜ジュース、サワー、ノンアルビール、ビール、ハイボールなど一通りのものが揃っていました。

また、大正風呂のすぐ橫には、マッサージチェアが置いてあるスペースもあります。

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雰囲気も良く、風呂上がりにひと休みするのにちょうど良かったですね。

夜は貸切利用も可能、ロケーション抜群の露天風呂

環翠楼の露天風呂は建物内にはなく、1階の洗面所の橫にある扉から外に出てサンダルに履き替え、湯小屋まで歩いて向かいます。

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こちらの扉から外に出ます。

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露天風呂も夜通し利用可能ですが、22時から翌朝4時までは「貸切中」の札をかけて貸切での利用となります。男女の浴室の交換はありませんが、貸切時間帯を利用すれば両方の浴室を利用することができるのです。

できるのですが……外に出て湯小屋を目指そうとすると、けっこう急な階段を上っていくことになるのです。

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おまけにこの日は夕方から雨予報で……。雨の夜にこの道を一人で歩くのは嫌だな……と思い、貸切時間に露天風呂を利用するのは断念しました。行ってみて空いていなかったときもつらいですしね。

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階段を上った後は細い道を道順に従って歩いていきます。

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途中に小さな滝があり、その向こうに湯小屋がありました。

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手前が女湯、奥が男湯です。

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露天風呂の脱衣所には脱衣カゴが2つあるのみですが、きれいに掃除されていて清潔感があります。

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洗面台と、側にあったカゴの中にシャワーキャップが入っていました。

では、露天風呂へ!

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おお……いいじゃないですか!
ちなみに、露天風呂にはカランはあるもののシャワーはなく、シャンプー類は利用できませんので、体や髪は内湯で洗ってから来たほうが良いです。

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向こう側に山が見える、絶好のロケーション。

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お湯も、常時ざばざばと大量にかけ流されています。

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入浴目線でも山が見えるのはいいな。

ちなみに、女湯には屋根と目隠しのフェンスがありますが、男湯は屋根もフェンスもなく、もっと開放感たっぷりのようです。

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こちらの景色を、湯に浸かりながら楽しむことができるんですね……屋根がないのは、雨のときはつらそうですけど。

雨が降り出す直前までゆったりと湯浴みを楽しんで、部屋に戻ります。

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露天風呂から戻る途中に眺めた、宿の建物の姿がとても素敵でした。
大正時代中頃に建造された国内でも数少ない木造による高層建築で、国の登録有形文化財にも指定されているそうです。

空いているときに鍵をかけて利用する貸切風呂

もう1ヶ所、空いているときに鍵をかけて利用可能な貸切風呂があります。

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貸切風呂のすぐ隣にはブラックシリカを使用した岩盤浴室もあり、1320円で専用ウェアとバスタオルもついて、利用時間の制限もなく利用できるようです。心惹かれたのですが、そこまで時間がないので今回は利用しませんでした。

貸切風呂および岩盤浴室はフロントのある階に来て廊下を渡り、そこから1階分階段を上ったところにありました。

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昔ながらの狭くて急な階段です。

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こちらです。隣に岩盤浴室があります。

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貸切風呂の予約はできないので、浴室の前まで来ないと空いているかわからないのですが、幸いなことに空いていました!「空き」の看板を裏返して内側から鍵をかけ、脱衣所へ。

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脱衣所は現代的な造りで、フットマッサージャーが設置してありました。

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貸切風呂にも露天風呂と同様に、シャワーキャップだけが置いてあります。

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窓が多く、ベージュ色のタイル張りの明るい浴室です。

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シャワー付きの洗い場が2つあり、ポーラのアロマエッセのシャンプー&コンディショナー、ボディシャンプーが設置してありました。

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浴槽内には傾斜がついていて枕もあり、おそらく寝湯を楽しめるようになっているのですが……。私、このタイプの斜めになっている寝湯って、足のほうにずり落ちてきてしまってうまく寝られないんですけど、どうやって使うんでしょう……。

というわけで寝湯はしませんでしたが、誰も入って来ないとわかっているので、スマホで本を読んだりしながら湯浴みを楽しみました。

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貸切風呂の前の廊下には椅子が1脚とテーブル、それから給水機などが設置してありました。

お風呂上がりの水分補給や、貸切風呂が空いていないときの順番待ち……?にも利用するのでしょうか……椅子1脚なので連れの方がいるときは困りそうですが。

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給水機の橫にあった「ヱビスビール」と書かれた衝立がなんだか素敵でした。

そして、給水機の奥には卓球台が!

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こちらは、1時間1000円で利用できるようです。1人泊なのでまったく関係ない設備ではありますが、いまや卓球台がある温泉旅館も珍しくなったので、見かけるとちょっとうれしくなりますね。

【食事】★★★★☆ 朝も夕も丁寧に造られたおいしい食事を部屋でいただく

環翠楼は全室部屋食の宿で、お部屋係の方が朝も夕も給仕を担当してくださいます。
お部屋に案内いただいた際に「夕食は18時、朝食は8時でお持ちします」と伝えられたので食事時間は固定かもしれません。
夕食遅めに……とか朝食遅めに……のお願いが、どの程度叶うのかはわかりません。

環翠楼のドリンクメニュー

夕食時間の前から、お部屋に飲み物のメニューが置いてありました。
自動販売機のラインナップがやや少なめですし、夕食時間帯以外でも、こちらのメニューからルームサービスをお願いすることは可能なのでしょう。生ビールやサワー、ウーロンハイ。ソフトドリンクにはコーヒーや牛乳の用意もあります。

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同じ「ルームサービス」ということなのでしょうか。「マッサージ40分4500円」や「コンパニオン120分2万円」「芸妓90分1万5千円」の表記もありました。このご時世でも頼めるのかな……。

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ソフトドリンクの「山の赤ぶどう」と地酒や冷酒、ワインはボトルでの用意もあるようでした。

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そしてこちら↓が、夕食時にお部屋係の方から手渡されたドリンクメニューです。

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内容はルームサービスのメニューとだいたい同じですね。

夕食はみぞれ鍋が絶品!宿で焙じたお茶もおいしい

夕食開始の18時少し前になると、お部屋係の方が現れて座卓に最初の料理をセットしていかれました。

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この日の献立はこちら。

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献立を眺めつつ、やはり1杯目はビールかなと思い、生ビールをお願いします。

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部屋まで持ってきていただいても、泡が消えずにしっかり残っているのがうれしい。いただきます!

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湯上がりで乾いていた喉がビールで潤うと、食欲も湧いてきました!

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先付けのごま豆腐には海老といくらがのっており、美しいです。ごま豆腐もねっとりとしていておいしい。

前菜は右側の黄色いのが「玉子チーズカステラ」それから時計回りに「天豆海老挟み揚げ」「飯蛸桜煮」「さより一夜干し」「ふき旨煮」

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小鉢に入っているのが、お品書きだと「芹浸し」になるはずなんですけど、見ても食べても「松前漬け」としか思えなくて、謎でした。書き間違えかしら……。

お刺身は3点盛り。

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鮪、イカ、鯛。基本の3種盛りですが、鮪もほどよく脂がのっていて大変おいしかったです。

こちらは、お品書きだと後半に書いてあるけれど、冷たい料理なので最初からセットしてあった酢の物。

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「帆立昆布押し」です。帆立と昆布を、押し寿司のように密着させたもの。右側の緑色の寒天っぽいのは「寄せオクラ」とのことで、刻んだオクラを寄せ豆腐のように固めたものでした。さっぱりと黄身酢でいただきます。

続いて、後から温かいものを持ってきていただいたお吸い物。わかめ進上。

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魚のすり身とわかめを蒸したものだそうで、上にかかっている透明な膜のようなものは「板こんにゃく」とのこと。見ても食べても繊細な味わいのお椀です。

このあたりでビールがなくなったので……少量でお願いできる日本酒が2種類ある中で「箱根山」をグラスでお願いしました。

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かなりなみなみと注がれてきて驚いたり。

焼き物は「鮪の若狭焼き」

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若狭焼きは、仕上げに酒、または酒と醤油を合わせたものを付けて焼く調理法です。
醤油だけでなく「バルサミコ酢」を使ったたれがかけてあり、付け合わせの渋皮栗や生ハムともよく合いました。

肉料理は一口ステーキです。

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こちらは、デミグラスソースでいただきます。柔らかくてソースもおいしい!

蓋物は「蕪みぞれ鍋」です。

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地鶏、金目鯛、ベビー帆立、椎茸、水菜、ネギなどをおろした蕪と一緒に固形燃料で煮ていきます。

煮えるまでに、熱々で持ってきていただいた公魚の天ぷらを!

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ほろ苦いワカサギはもちろん、行者ニンニクの天ぷらが大変おいしかったです。赤いのはパプリカ。

みぞれ鍋が煮えてきたところで……お部屋係の方に

「鍋の出汁にご飯を入れておじやのようにしていただくと大変おいしいのですが、ご飯をお持ちしましょうか?」

とお声がけいただいたので、せっかくなのでお願いしました。

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たっぷりの具材を優しい出汁の味でいただくみぞれ鍋はもちろんおいしく、ご飯を浸してもたしかにおいしくて、出汁もすべていただいてしまいました。

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赤だしも持ってきていただいたので、最後にお漬物と一緒に軽く一膳。

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ご飯は、箱根の湧き水で炊き上げているそうです。

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デザートはフルーツ中心で、みかんの「甘平」と苺に生クリームが添えてありました。
お茶は宿で焙じているほうじ茶だそうで、市販のほうじ茶とはまた風味が異なりますが、かすかに香ばしい香りがする緑茶という感じ。フルーツにも合っておいしかったです。

朝食は意外に具沢山な茶碗蒸しとオレンジムースゼリーが気に入った

朝食は8時に、お部屋に運んでいただきます。
7時15分で布団係の方がお布団をあげにいらっしゃったので、慌てて起きました。

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朝食にもしっかりとしたお品書きがついていました。

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旅館の朝食の見本のような眺めです。

かまぼこは小田原の老舗「籠清(かごせい)」さんの角焼きかまぼこ。弾力があって食べごたえがあります。

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サラダは「八尾忠」さんの野菜を使っているそうで、新鮮で胡麻風味のドレッシングもおいしいです。

鯵の干物はこちらも小田原の老舗「山安」さんのもの。

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地卵で造った茶碗蒸しは、シンプルに見えますが中には鶏肉、生麩、銀杏など入っていて具沢山。朝食のおかずではこれが一番気に入ったかも。

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ご飯と焼き海苔、お味噌汁、漬けもの。

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デザートの「オレンジムースゼリー」をいただいてごちそうさまでした!このデザートもぷるぷるの食感が楽しくてよかったです。

箱根・小田原の名店の味を楽しめる朝食、多すぎず少なすぎず、大変おいしくいただきました。

【再訪したい度】★★★★☆ かけ流しの部屋風呂で幸せを感じた、自分へのご褒美に泊まりたい宿

温泉・食事・建物・サービスなどすべてすばらしく、一人でも意外と泊まりやすい本当にありがたい宿だなと思います。特に、温泉内湯がついている部屋に土曜日でも1人でも泊まれるのはありがたい……。頻繁に泊まれるわけではないですが「自分へのご褒美」としてこういう宿に泊まりたいときもあるのですよね。

大浴場や露天風呂も夜通し利用可能なので、もちろん、お風呂がつかないお部屋に泊まってもお風呂三昧できます。

箱根にはもっと新しく高級な宿もたくさんありますが、個人的には「環翠楼以上に高級な宿にがんばって泊まらなくていいな」と思えたすばらしい宿でした。派手さはないのでこのレポートで伝わるかどうか自信がないのですが……。

☆を半分だけ減らしたいのは、食事時間の希望を聞かれることがなくおそらく固定なのかな?というところと、朝食のかなり前にお布団をあげにこられてしまったこと。
朝寝坊なのでもうちょっと寝たかったんですが、こういうお宿でお布団敷いたままで朝食というのはおそらく難しいんでしょうね。あとはお酒の種類が少し物足りないかな。それ以外は満点でした。

今後箱根に客足が増えても、土曜日に1人で泊まれる宿であり続けてもらえたらうれしいな……と思っています。

【1人旅に優しい度】75点:お安くはないが、現時点では一人泊にかなり優しく大人の一人旅におすすめしたい宿

泊まりやすさ 15/20
連休のときなど設定がないこともあるが、基本的には土曜日も1人で、2食付きのプランで泊まれる。価格差は2人で泊まったときより4000円程度アップするが、このクラスの宿ならまあそのぐらいかな、と。

食事場所の配慮 20/20
すべて部屋食での対応。食事処はなさそうなので、今後対応が変わることもなさそう。

プランの選択肢 10/20 
1人で予約できるのは「ベーシックプラン」と「一人旅応援プラン」のみで、朝食のみのプランや舟盛り付きのプランなどは利用できない。一人で泊まれない部屋もあるが、温泉内湯付きの部屋に土曜日でも一人泊できるのはとてもありがたい。

ドリンクオーダー  10/20
サワーやグラスビール、グラスワインなど一通りのものは揃っているが、日本酒の種類は少なく個人的にはやや物足りなかった

フリーWi-Fi完備 20/20
Wi-Fi利用可能。速度もまったく問題ないレベル

◆ お知らせ ◆
2020年10月に著書が発売となりました。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。