夏が近づくと思い出す「木曽の棧」のほとりにある天然炭酸泉の宿
棧温泉(かけはしおんせん)旅館は、木曽八景の一つに数えられる「木曽の棧」のほとりに1956年に創業した温泉宿です。
泉温13度の二酸化炭素冷鉱泉を源泉そのままにかけ流した浴槽と加温浴槽で、交互浴を楽しむことができます。
昨年の夏に初めて宿泊したところ、食事もおいしく、建物は古いながらもサービスも温かで、快適に過ごすことができました。
土曜日も1人泊可能かつ、2食付き11150円~で土曜日に2食付きで1人で泊まれるので、先日公開したこちらの記事でもご紹介しています。
非加熱の冷鉱泉を楽しむにはやはり夏の宿泊がベストかなと思い、夏が近づく今、宿泊レポートを公開することにしました。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。
- 夏が近づくと思い出す「木曽の棧」のほとりにある天然炭酸泉の宿
木曽福島駅からタクシー10分、本数は少ないがコミュニティバスの利用も可能
棧温泉旅館の最寄り駅は中央本線の「上松駅」もしくは「木曽福島駅」です。
距離的には上松駅のほうが若干近く、徒歩だと上松駅から40分弱、木曽福島駅から1時間弱というところ。
ですが、がんばって歩いて行くつもりでなければ、特急しなのを始めとした全旅客列車が停車する木曽福島駅から向かうほうが便利ですね。
東京方面から向かう場合は、特急あずさで塩尻駅まで向かい、塩尻で特急しなのに乗り換えます。
乗り継ぎで30分ぐらい待つことが多いのですが、塩尻経由だと乗り継ぎの待ち時間を含めて、新宿から3時間30分ぐらいでしょうか。お住まいの地域によっては東海道新幹線で名古屋まで来て、名古屋から特急しなののほうが早いかもしれません。(あずさ利用のほうがだいぶ安くは済みますが)
木曽福島駅に着きました。
駅前にお土産屋さんや飲食店が建ち並ぶ、それほど大きな駅ではありませんが観光地らしい駅です。
特急しなのの到着時刻に合わせてタクシーも並んでいます。木曽福島駅から棧温泉までは、タクシーで10分弱。
あるいは上松町のコミュニティバス倉本線で木曽福島駅から10分ほどの「かけはし大橋」で下車して徒歩10分です。本数少なめなので、利用する場合はあらかじめバスの時間を調べてから電車の予約をしたほうがいいでしょう。もちろん、タクシー利用のほうが楽ではあります。
この日は今にも雨が降りそうな天気だったこともあり、タクシーを使いました。
木曽福島駅前に停まっていた1番前のタクシーに乗り「棧温泉までお願いします」と言うと「ああーそれはちょっと無理だ、後ろに並んでる車に乗ってもらえる?」と言われて、乗り換えることに。
どうも、木曽福島駅周辺の棧温泉と逆方向の場所で予約が入っていたらしく、棧温泉を経由してから予約のほうに向かうと間に合わないから断られたようです。
若干釈然としない気持ちになったものの、タクシーはたくさん待っているので問題なし。後ろの車に乗って棧温泉を目指します。
赤いアーチ橋の向こうに見えるのが本日のお宿、棧温泉旅館です。
実際には、橋を渡った向こう側、宿の建物のすぐ手前でタクシーを降りました。
目の前に見える、木曽川の流れが美しいですね。
スロープを上り、宿の玄関に向かいます。
昔ながらの旅館らしい、玄関口。
靴を脱いでスリッパに履き替え、受付でチェックインを行います。チェックインは15時から可能です。
受付の前には椅子やテーブル、自動販売機が置かれており、日帰り入浴客の待合所としても使われているようでした。
自動販売機にはソフトドリンクと酒類が。
ビール、ハイボール、レモンサワー、炭酸飲料など、風呂上がりに飲みたくなるラインナップでした。後で買いに来よう……。
チェックインし、部屋に案内してもらいます。
【部屋】★★★☆ トイレ・洗面所は別だが、真夏以外なら快適に過ごせそう
客室は階段を1つ上った2階にありました。エレベーターはありません。
案内いただいたのは「さわら」の間でした。
お部屋は古めの和室ですが、掃除はしっかりされています。
部屋の手前側に座卓があり、奥のほうにはチェックイン時から布団が敷いてありました。
座卓の上にはお茶セットと茶菓子の落雁が。
お茶はティーパックの緑茶でした。ポットは湯湧かし機能はないタイプです。
アメニティ類はクローゼットの中に。
バスタオルと浴衣と帯。ピンクの袋の中にはフェイスタオルと歯ブラシ、シャワーキャップが。
テレビと暖房は壁際にあり。冷蔵庫と金庫はありませんでした。Wi-Fiは利用可能です。
夏だったのでエアコンないとちょっときついかも……と思ったら、広縁に設置してありました。
広縁には黒いシングルソファが2脚。
エアコンはこちら。室外機がないタイプなのでパワーはやや弱め。
この日はあまり天気が良くなく、今にも雨が降りそうな空模様だったので気温も低めで助かりました。
そして窓から見える景色はすばらしいです。
木曽川が目の前に見えます。川の水がやや青みがかって見えてきれい。
お風呂上がりは1階にある自動販売機で缶ビールを買ってきて外を眺めながら飲みました。
洗面所・浴室・トイレは客室内にはありません。
共同の洗面所・トイレも新しくはないけれど、しっかり掃除されていました。
レトロなタイル張りのトイレもウォッシュレット付きで、部屋から近いところにあったので、特に不自由はありませんでした。
【風呂】★★★★☆ 鉄分豊富な非加熱の炭酸泉と加温浴槽の交互浴が気持ちいい
浴室は、客室がある棟とは別棟の1階にあります。
廊下の案内書きに従って階段を降り、渡り廊下を渡った先にありました。
男女別の内湯のみで、男湯と女湯の交換はありません。奥側が女湯です。
以前は、おそらく男湯と女湯の間に混浴の露天風呂があったそうなのですが、現在は使用されていないようです。
現在は内湯のみとなっていますが、2022年の宿泊日時点では夜通しの入浴が可能でした。加温浴槽がある宿は燃料費の関係で深夜は入浴できないことも多いので、ありがたいことです。
脱衣所へ。
広々としており、マッサージチェアも置いてあります。古いけれど掃除はしっかりされていました。
入口に貴重品ロッカーあり。200円必要でお金は戻ってこないタイプです。
脱衣所にも無料で使える鍵付きのロッカーがありますので、宿泊の場合はこちらを使用したほうがいいでしょうね。
洗面台にはティッシュとコットン、ハンドソープ、ドライヤー、カールドライヤー。
ドライヤーはPanasonicのもので普通に風力あって使えるドライヤーでした。化粧水などのアメニティの設置はありません。
温泉分析表が掲示してありました。
ph.5.3ほどで弱酸性。気温22度の日に調査して泉温13度の単純二酸化炭素冷鉱泉です。
加温浴槽では42度に調整してあり、循環あり。
非加熱の源泉の浴槽はかけ流しです。
では、浴室へ!
なんと、浴槽と洗い場の間にカーテンがあります。
洗い場のシャワーなどが浴槽に入らないようにというお気遣いかしら……と思ったらそうではなく、大きな窓の向こうに木曽川を眺められるのですが、その川の向こうにある道路から洗い場が見えてしまうんだそうです。だから女湯にだけ、カーテンがあるらしい。
なるほど、浴槽に入ってしまえば見えないから……よく考えられていますね!
洗い場にはLUXシリーズのシャンプー&コンディショナー、ボディシャンプーあり。
体を洗って浴槽へ。
手前側に大きめの浴槽があり、奥にちょっと小さな浴槽があります。手前が加温浴槽で、奥が非加熱源泉の浴槽です。
非加熱の浴槽は循環していないので色もかなり違いますね。茶色というか、みかん色というか、鉄分をはじめとしたミネラルがたっぷり含まれていることが色からも感じられます。
まずは加温浴槽へ。
浴槽の端、非加熱浴槽から遠い位置に加温浴槽の湯口があるので、非加熱浴槽に近いあたりはぬるくなっています。このぬるめのところでちょっと体を温めてから……。
いざ、非加熱浴槽へ。
こちらも、浴槽の端に湯口があるので、加温浴槽との境界部分はやや温度が高めになっています。この境界の部分からそろそろと身を浸し……。
徐々に、冷鉱泉の湯口に近づいていきます。
たしかに冷たい!けれど、長く浸かっていられないほどではないので、20度ぐらいはあるんじゃないかと思います。冷たいプールぐらいの温度です。
改めて見ると、かなり濃厚な源泉です。湯口の近くでは炭酸がパチパチ弾けるのが感じられました。
色が濃いこともあって、目に見える泡つきなどはあまりありませんが、浸かっているときのパチパチというかピリピリする感じはまさに二酸化炭素冷鉱泉。
加温浴槽との交互浴を、心ゆくまで楽しみました。
棧温泉旅館の日帰り入浴の営業時間・入浴料金
棧温泉旅館では日帰り入浴も受け付けています。
営業時間は9時から21時まで。
比較的長い時間営業されているようです。
定休日はありませんが、不定休とのこと。
電話で確認するのが確実と思いますが、急遽のお休みでなければ宿のFacebookページにも休業日が掲載されるようです。
入浴料金は大人700円、小学生450円。
ちなみに、私が宿泊したのは2022年の8月で「冷鉱泉の宿だから夏は日帰り客で混むかも……」と思ったのですが、運良く浴室では誰とも出会いませんでした。
【食事】★★★★☆ 鮎や馬刺しなど山の宿らしいおいしい料理を地酒と共に
棧温泉では基本的には朝夕共に食事処での食事となるようですが、予約時に「部屋食プラン」を選ぶと、夕食は部屋食になります。
私自身は特に部屋食にこだわりがあったわけではなかったのですが……「信州牛石焼き付き」の、食事がグレードアップされたプランを選んだところ、部屋食になりました。
棧温泉旅館のドリンクメニュー
部屋食だったので紙のドリンクメニューがなく「日本酒は何がありますか?」と聞いたら、地酒の2合瓶で今用意できるものをすべて部屋まで持ってきてくださいました。
見たことのないお酒ばかりだったのですが、木曽町にある「中善酒造店」で御嶽山の天然水から醸造された「中乗さん」なる地酒でした。
お値段は生酒が2000円で、他は1500円と1000円のものがありました。
この他には、ビールがキリンとアサヒの大瓶。
芋焼酎・麦焼酎・赤白ワインはグラスでいただけるとのことでしたが、銘柄はわからず。あんず酒、梅酒などの果実酒とハイボールもあり。
コーラ、オレンジジュース、ウーロン茶などの基本的なソフトドリンクと、ノンアルコールビール、酎ハイもあるとのことでしたが、このあたりは缶かもしれませんね。
1人で来て日本酒が飲める人なら、地酒の「中乗さん」をいただくのが無難なチョイスのように思います。
夕食は品数豊富、天ぷらは揚げたてでうれしい
夕食の開始時間は「18時30分」か「19時」から選べました。
「18時」の回がないのは珍しいけれど、今回部屋食だったので……もしかしたら食事処での夕食が18時から始まるのかもしれない、と思ったり。
最初に、大きなお盆でこちらの料理を持ってきてくださいました。
お酒は、迷ったすえに純米吟醸生貯蔵酒「風越青嵐」をいただくことに。
「ふうえつせいらん」と読むのですね。
季節限定のお酒で、ほのかに酸味があり、すっきりした味わい。おいしい。
食前酒も、おそらく同じ酒造で作られたと思われる甘酒です。
甘すぎず、滋養のありそうな味わい。食前にいただくのにちょうどいいですね。
ではお料理を。お品書きがないので記憶とメモを頼りにご紹介します。
前菜は鱒、さつまいも、とうもろこし、枝豆。
地物のとうもろこしが甘くておいしい!
鍋料理は「アルプス牛の豆乳しゃぶしゃぶ」です。
お肉も、立派なぶなしめじをはじめとした野菜もたっぷり!
豆乳の出汁にちょうどいい味がついていて、そのままでおいしくいただけます。
鮎の塩焼き。
緑色の酢は「たで酢」かと思いきや、酢には抹茶が入っているそうです。
ほのかに苦みと爽やかな香りがあり、これはこれでおいしいですね。
お刺身は、山の宿らしく馬刺しです!
赤身ですがほどよく脂もあっておいしい馬刺しでした。
茶碗蒸し。ホッとする味。
煮物は「チチタケ」というキノコと米なすを鶏そぼろと一緒に甘辛く炊いたもの。
山の宿らしい一品で、お酒にも合います。
グレードアッププランについてくる、信州牛石焼きです!
ちょうどいい焼き加減まで石焼きにしたものを持ってきてくださいました。バターでいただきます。いい肉なのでバターはあってもなくてもおいしい。
ガラスの器に入って登場したのは酢の物……?と思いきや、春雨ととろろです。
酢の物よりも優しい味わいで、するっといただけました。
揚げ物は天ぷら。揚げたてを後から持ってきてくださいました。
かぼちゃ、いんげん、おくら、えごまの葉、おかひじき。夏野菜がいっぱいです。
春だと山菜の天ぷらになるそうで……春に泊まるのもいいなあ、などと考えたり。
最後に、釜炊きの炊き込みご飯とお吸い物、デザートのフルーツが登場。
ご飯は舞茸がたっぷり入った舞茸ご飯。
そして吸い物は松茸です!
このお値段でこれだけのお料理……すばらしいとしか言えません。
お腹いっぱいだけど、香の物の盛り合わせと一緒に舞茸ご飯もしっかりいただきます。
最後にフルーツの盛り合わせをいただき、ごちそうさまでした!
朝食にもフルーツたっぷり、食後のコーヒーもうれしい
朝食は食事処でいただきました。時間は7時30分、8時、8時30分から選択可能です。
通された部屋には座卓が3卓ありましたが、すべての卓に料理が1人分……つまり、1人で泊まっている人がこちらの部屋での朝食となったようです。
たまたまかもしれませんが、一人旅の人しかいないと気楽でとても良いですね。
ちなみに、時間どおりに食事処に入り、席にはすぐに案内いただいたのですが……そのあとご飯が出てくるまで15分ほど待ちました・笑
他にもいくつか7時30分開始のグループがあったので、時間がかかったのだと思います。早出したいわけでもないのでのんびり待っていました。朝は人手が足りないのかもしれないですね……。
朝食は、旅館の朝食の定番おかずがしっかり並びました。
サラダの野菜も新鮮。笹かまぼこも。
冷や奴には薬味で茗荷が添えられているのがうれしいですね。
焼き鮭もちょうどいい塩加減でおいしい。
温泉卵や漬けもの、焼き海苔などご飯のおかずもしっかりあります。
スイカ、キウイ、ぶどうなどフルーツの盛り合わせが朝もあってうれしかったです。
食後には「コーヒーいかがですか?」と聞かれ、しっかりドリップされたおいしいコーヒーを、一口チョコと一緒にいただきました。
夕食朝食共に、味もボリュームもお値段以上で、大満足の食事でした。
【再訪したい度】★★★★☆ リーズナブルに極上湯を楽しめて食事もおいしい
浴室もお部屋も、古いけれどしっかり掃除されていますし、お風呂は二酸化炭素冷鉱泉が好きな人にはたまらないお風呂じゃないかと思います。非加熱の源泉浴槽をしっかり残してくれているのが本当にありがたいですね!
サービスも温かく、食事も、味も良くボリュームもたっぷりで、お値段以上のすばらしい内容でした。
交通は便利とは言いがたいですが、休前日も1人で泊まれる一人旅に優しい宿なので、きっとまた泊まりに行きたいです。
冷鉱泉の宿なので夏がベストだとは思いますが、4~5月には山菜の料理も並ぶそうなので、春に行くのもいいなと思っています。
【1人旅に優しい度】80点:休前日や連休も特別な料金アップはなく泊まりやすい
泊まりやすさ 20/20
土曜日も1人泊可能で、連休やお盆休みでも1人で泊まれる。
現時点でもお盆休みの予約は可能で、料金も普段の休日と同じ値段だった。
食事場所の配慮 15/20
若干料金アップするが、夕食は「部屋食プラン」を選べばお部屋でいただける。
朝食は食事処だが、1人泊の人だけで1室にまとめられており、1人客への配慮を感じた。
プランの選択肢 20/20
1人で泊まっても2人以上で泊まっても、選べるプランの数はまったく同じ。
ドリンクオーダー 10/20
焼酎、ワイン、ハイボール、果実酒などはグラスオーダー可能。
ビールは大瓶のみ。日本酒は1合でオーダーできる1種類のほか、2合瓶でいただけるものが数種類ある
フリーWi-Fi完備 15/20
客室内でWi-Fi利用可能。速度も問題なく利用できた。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。