鹿児島県 妙見温泉 おりはし旅館別館山水荘
妙見温泉は、鹿児島県霧島市隼人町にある温泉地です。鹿児島空港から路線バスで30分ほどの場所にあり、10軒ほどの温泉宿が天降川(あもりがわ)沿いに建ち並ぶ温泉地です。
約10軒の宿の中に「妙見石原荘」や「忘れの里雅叙苑」などの高級旅館と、「素泊まりの宿きらく温泉」「妙見田島本館」などの湯治宿、それに一般的な温泉旅館もあり、旅館の数のわりにバリエーション豊かなのがこの温泉地の特徴ではないかとひそかに思っています。また、多くの宿で日帰り入浴を受け付けており、湯巡りも楽しめます。
今回ご紹介する「おりはし旅館別館山水荘」は「おりはし旅館」という、やや高級めの旅館の別館で、1泊5000円(休前日6000円)と安価に宿泊できる自炊湯治の宿です。
かつては2食付き9000円ほどで食事付きの宿泊も受け付けており、私も2015年に食事付きで1度泊まっています。宿泊すれば本館のお風呂にも入れるのでお得ですが、1度泊まってみて、本館のお風呂よりも別館山水荘の内湯が非常に気に入ってしまったのです。
43度の熱めの源泉と、35度ほどのぬる湯の源泉があり、大好きな交互浴が存分に楽しめます。
別館山水荘は数年前に食事の提供をやめてしまい、本館と離れには1人で宿泊できないのでしばらく足が遠ざかっていたのですが、今回ひさびさに日帰り入浴でお邪魔したところ、大好きな内湯もいろいろ変わっていたので(うれしいことに良い方への変化です)大幅に追記して更新することにしました。
日帰り入浴レポートと、前回宿泊した際の部屋と食事についても合わせてご紹介したいと思います。
鹿児島空港から近く、意外とバスの便も良い妙見温泉
妙見温泉は同じ霧島市内ということで、霧島連山の山腹にある温泉地、霧島温泉郷あたりからもバスが通じています。
前回宿泊した際は、鹿児島に着いて1泊目は霧島温泉郷に宿を取り、2日目は朝から霧島連山の韓国岳に登って、それからバスで妙見温泉に向かいました。
火山の活動状況によっては利用できない登山口があったりするので注意が必要ですが、登山口までバスの運行もあり、いかにも火山らしい美しい風景が楽しめる山です。
えびの高原から韓国岳に登頂するルートは、最短ルートで往復3~4時間でしょうか。日帰りで無理なく歩ける距離なのもうれしいです。
妙見温泉までのアクセス
妙見温泉までは、鉄道で隼人駅まで出てそこから路線バス「妙見路線バス:隼人駅~鹿児島空港」で20分ほどか、あるいは鹿児島空港から路線バスで30分弱で着きます。
霧島温泉郷のバスターミナル的な「丸尾」バス停からは「鹿児島交通4:霧島市役所~妙見・日当山~丸尾~霧島いわさきホテル」線で35分程度。
この「丸尾」バス停から、霧島連山の登山口に向かう「霧島連山周遊バス」も出ているので、ここでバスを乗り継ぎました。
鄙びた温泉地という雰囲気で、妙見石原荘のような高級旅館があるようには見えませんが……この道を5分ぐらい歩いていったところに石原荘はあります。
おりはし旅館山水荘は「妙見温泉」バス停のすぐ近くにある橋を渡ったところにあるのですが、橋の上から眺める、晴れた日の天降川は本当に美しいです。
「おりはし旅館」と書かれているのが見えますね。
あのすぐ後ろにあるのが本館と離れで、別館山水荘はもう少し奥のほうにあります。
おりはし旅館は、大正時代の風情ある木造建築の本館、かけ流しの湯船つきの離れ、別館の山水荘の3つの棟から成る宿です。この中で1人で宿泊可能なのは別館山水荘のみですが、現在は自炊湯治の宿となり食事付きでの宿泊はできません。
自炊湯治の宿というと、古い建物を思い浮かべてしまいますが、おりはし旅館山水荘は建物も新しく、部屋なども清潔感がある宿でした。
玄関前に貼ってあった温泉利用証です。
浴槽内のお湯は5日ごとに入れ替え、とありますがこれは熱い源泉の「竹の湯」のほうの話ですね。ぬる湯の「きず湯」は毎日入れ替えているはずです。
玄関を開けると、人を呼ぶ必要もなくすぐに中から宿の方が出てきてくださいました。日帰り入浴したい旨を告げて、入浴料金の500円を支払うと、浴室に案内してくださいます。
渡り廊下を渡って、浴室に向かいました。
【風呂】★★★★★ 人肌のぬる湯「きず湯」が最高に気持ちいい
おりはし旅館別館山水荘には男女別の内湯の浴室があります。
宿泊したときは「本館の内湯 梅の湯」と「露天風呂」にも入ることができましたが、現在も同じかどうかはわかりません。とりあえず、500円の日帰り入浴で入れるのは別館山水荘の内湯のみですが、これが本当にすばらしい浴室なので、他は利用できなくてぜんぜんかまわない!と思っています。
日帰り入浴可能な「きず湯」のある内湯へ
別館山水荘の内湯は、男湯と女湯が隣合っています。
「今誰も使っていませんので、ごゆっくりどうぞ」とのこと。うれしい!
脱衣所の戸を開けて中に入ると……気のせいか?5年前と何かが違います。
前回宿泊したときの写真を確認すると……
脱衣カゴが置かれているだけの棚だったところが、ロッカーになっています!
しかも、コインを投入したりする必要もなく、すべて無料で利用できるロッカーです。これは、日帰り利用のときはとてもありがたいです!
洗面台も清潔に整えられていて、普通に使えるドライヤーもあります。
壁には源泉分析表や「きず湯」についての説明が貼ってありました。
「きず湯」が発見されてからこれまでの言い伝えなどのまとめ。
入浴方法についての注意書きもありました。
「入浴時間は20分位が最も有効です」とあるのは、それほど大きくない浴槽のぬる湯に、長時間浸かる方が多いのでしょうね。
左が「きず湯(33度)」右が「熱めの湯」の成分表です。
33度は、夏は気持ち良さそうですが冬に入るにはけっこう冷たそうですけど、どんなものでしょうね……。
では、浴室へ!
ちなみに足拭きマットなどもきれいで気持ちいい。
浴室の戸を開けると左手にやや小さめの浴槽、右手に少し大きめで黄色っぽくにごった浴槽があり、その裏手に洗い場がありました。
洗い場と浴槽の間には壁があるので、体や頭を洗う際のしぶきが浴槽のほうにはねることもなく、完璧な配置ではないでしょうか。
こぢんまりとした浴室だと、お湯に浸かっているとき、しぶきがかかってしまうことがわりとあるんですよね。 カランもシャワーも新しくて使いやすいものです。
そして、シャンプー&コンディショナー、ボディシャンプーは、異なるブランドのものが3種類置いてありました。素泊まり5000円の宿とは思えないアメニティですが、やや値段の高い旅館である本館・離れに泊まっているお客さんも、こちらに入りに来るからでしょうね。
しかし、この浴室もなんとなく、以前とは変わったような気がします。
2015年の写真と見比べてみると……。
あ!以前は右手の浴槽は窓に面していて、今の場所に洗い場はなかったんですね。
浴槽の位置はそのままでしょうから、建物をけっこう大きく改築したんでしょうね。
以前書いたレポートを見ると「内湯にシャワーは1つだけ」と書いてありました。それがちょっと不便だなあとたしかに思った記憶があるので、改築して解消したんですね。
ではまず、大きいほうの浴槽に浸かってみます。
泉温は43度ぐらいでけっこう熱め。
熱すぎるときは水を足せるようになっていますが、季節が冬ということもあり、熱い湯が得意ではない私でも、長湯はできないものの耐えられる温度です。
熱いほうの竹の湯は、24時間かけ流されています。
浴槽の縁からどんどんお湯が流れ落ちていく、抱負な湯量がうれしいです。
熱い!けど気持ちいい!
少し遠くから見ると黄色っぽく見えたお湯ですが、近くで見ると笹濁り?のようにも見え、ほんのりと鉄分の香りがします。よく温まる、とてもよいお湯です。
さて、こちらでよく温まったらいよいよ向こうに見えるきず湯に入りますよ!
おりはし旅館山水荘でしか入れない「きず湯」
湯の花が多いため、毎日夜8時には浴槽の栓を抜き、掃除をしているので夜間は入れないのです……。
朝は7時からまた入れるのですが、入れる時間が短いこともあって宿泊した際はわりと混んでいる時間帯も長く「これなら日帰り入浴に来たほうがゆっくりできたのでは……?」などと思ったのでした。
静かに、大量の源泉がかけ流されています。
熱い湯で十分に温まってからきず湯に身を沈めると、一瞬「冷たい!」と感じますが、本当に一瞬だけです。
33度よりも確実に温かいように思います。たぶん35~36℃はあるんじゃないかなと。人肌の、いつまでも入っていられるぬる湯です。
熱い湯で熱々になった体が一瞬ひやっとして、そのあとだんだん、いつまでも入っていられるぬる湯になり、体が緩んでいく感覚が気持ちいい……。
サウナの「熱←→冷」は刺激が強すぎてあまり馴染めない私なのですが、熱湯とぬる湯の交互浴は本当に好き。
「20分の入浴が最適」と書かれていましたが、誰も来ないので好きなだけ長湯してしまいました。ときどく熱い湯にも入って、きず湯で「ひやっ」とする感覚を楽しみながら。
窓から入ってくる外の空気も気持ちよく、浴室は清潔で、お湯は極上、しかも空いている。本当に、人に教えたくないほどすばらしいお風呂でした。
両方の浴槽からどんどんお湯が溢れ出ていく、見ているだけで幸せになれる光景です。
宿泊した際に入浴した本館の露天風呂と内湯
以前宿泊した際は、おりはし旅館本館の露天風呂と浴室についてもご紹介したいと思います。
露天風呂は本館の近くにあり、かなり広いです。
宿泊したのは4月だったので、緑がいっぱいで気持ちよかったです。まだ虫はいないだろうと思っていたのですが、暖かい土地なので既に虫がいて刺されてしまいましたが……。
泉温も適温で気持ち良かったです。ちなみにこちらの源泉は、山水荘の2つの源泉とはまた違う源泉だそうです。
本館に併設する「梅の湯」という内湯もありましたが、こちらの浴室は現在のホームページには掲載されていないので、今もあるのかどうかはわかりません。
「きず湯」以外は、露天風呂も内湯もぜんぜん混んでいませんでした。
【部屋】★★★★ 清潔で快適、自炊設備も整っている
前回2015年に宿泊した際の部屋についてもご紹介したいと思います。現在とは異なる部分もあるかもしれませんが、ご承知おきください。
宿泊する部屋は2階にありました。廊下もピカピカに磨きあげられており、とても清潔です。
1人宿泊の際に泊まる部屋は、トイレ無し、洗面ありの6畳の部屋でした。
湯治仕様ですが、浴衣やバスタオル、歯ブラシはついてました。
ただ、浴衣・タオル・歯ブラシは2食付きプランだったからついていた可能性もあります。現在提供されている自炊湯治プランでもつくのかはわかりません。ちなみに布団は自分で敷きます。
お湯の入ったポットとティーパックのお茶。
ポットは湯沸かし機能はついていませんが、共同のキッチンが使えるので、熱いお湯がほしければ自分で湧かすこともできます。
部屋には、大きめの冷蔵庫もあり、洗面所も新しくてきれいです。
共同のキッチンも、設備も新しくて利用しやすそうでした。2食付きのプランで泊まったので利用せず、写真も撮らないでしまったのですが……基本的な調理道具と食器が揃っていたと思います。
また、現在は変わっているかもしれませんが、2015年当時は2階の共同トイレは、男女共同で、ウォッシュレットもありませんでした。でも、浴室の進化ぶりから考えると、このあたりも既に改善されているかもしれません。
【食事】★★★★ 鯉や鰻など川魚料理がおいしかった(現在は食事提供なし)
2015年に食事付きで泊まった際の夕食をご紹介したいと思います。
この辺りで取れたと思われる山菜やたけのこ、名産だという鰻や鯉を使った料理でした。
鯉の洗い、川魚のホイル焼き。
鹿児島と言えば肉は豚ですね!冷しゃぶサラダ。
鰻もこのあたりの名産だそうです。鰻好きなのでうれしかったですねー。
鰻のかば焼きはご飯にのせてうな丼風にしていただきました。汁物は鯉こく。デザートはオレンジでした。
鯉こくも鯉のあらいもきちんと骨が取ってあり、小骨が気になることもなくて良かったです。
朝食は、湯豆腐や温泉卵といった和食で、派手ではないけれど、おいしかったです。
朝食・夕食共に、豪華ではないけど、丁寧に作られている感じで、1万円以下という宿泊料のことを考えたら、十分満足しました。
他の方のレポートを読むと、連泊すると2泊目はかなりメニューを変えてくれた、というものがあり「次回は2泊するぞ!」と思っていたので、食事提供がなくなってしまったのは、かなり残念でした。
妙見温泉の飲食店と食料品店
山水荘には自炊設備があるので、自分で材料を買ってきて調理したり、調理済みの食品を買ってきて温めたりすることもでき、食器やグラスも借りれます。
当時は2階のキッチンには電子レンジはなかったのですが、1階のキッチンには電子レンジもあると書いてありました。
車があれば近くのスーパーやコンビニに買い出しに行けると思うのですが、公共交通機関利用だと買い出しはかなり億劫になります。できれば外食で済ませられればと思うのですが、妙見温泉で現在も営業している飲食店は、おそらくバス停前の「天狗食堂」ぐらいでしょうか。
連泊時の昼食は、他の旅館の昼食営業なども利用できそうですが、朝晩は難しいでしょうかね……。
天狗食堂の向かい、こちらの宿にある「ネムノキ茶屋」は18時から21時半まで営業しているとのことですが、どんなお店かは確認していません。「茶屋」ですので、お茶だけで食事はできない可能性もあると思います。
朝はパンを買っておいてコーヒーでも淹れればいいけれど、夕食がちょっと難しいかもしれません。
バス停から3分ほど歩いたところに「うなぎの田代」と看板が出ているお店がありました。
川魚を売る鮮魚店のようでしたが、ちらっと覗いたら調理済みの魚や、お惣菜なども扱っているようでした。
あらかじめ食材を調達してくるのが一番いいですが、難しければ早めの時間に来てみて、こちらのお店を覗いてみるのがいいかもしれません。
そこで、惹かれるものがなければバスに乗って街に出て買い物してくればいいかなあと。
気がつくと、次に泊まるときのことばかり考えている自分がいました・笑
【再訪したい度】★★★★☆ 食事付きプランがあれば絶対また泊まりたいのだが
とにかくお湯が素晴らしいし、値段も安く部屋もきれい、土曜日も1人で泊まれるということで、もし食事付きプランがあれば絶対また泊まりたい!次は連泊するぞ!と思っていた宿でした。
しかし、食事をつけられないとなると……妙見温泉には他に、2食付きで1人で泊まれる宿もいくつかありますので「食事がつけられる宿に泊まって、山水荘に日帰りで入りに行けばいいかなあ」と思ってしまったところもあります。
食事の提供がなくなったのは仕方のないことだとは思うのですが、日帰りではまた絶対に入りに来たいと思っている宿です。