肘折温泉 若松屋村井六助
開湯から1200年の歴史を持つ肘折温泉は、木造の古い旅館が建ち並ぶ「鄙びた湯治場」という雰囲気を持つ温泉地です。豪雪地帯としても知られ、冬の間は積雪量が4メートルを超えることもあると聞きますね。
若松屋村井六助さんは、全32室と肘折温泉の中では比較的規模の大きい、中規模な旅館です。建物も鉄筋コンクリート3階建てと立派です。
湯治場らしからぬ建物で残念……と思う方もいるかもしれませんが、館内にはエレベーターが設置されているので、階段の上り下りがつらい方でも問題なく滞在できるところなどはまさに「湯治場らしい」宿と言えるのではないかなと。
山形県出身の私ですが、肘折温泉に来たのは今回が初めて。ですが実は「初めて肘折温泉で泊まるなら六助さんがいい」と思い続けて今回ようやく叶ったのです。
宿泊してみて「期待どおりのいい宿だったなあ」と思いましたので、ご紹介したいと思います。
- 肘折温泉 若松屋村井六助
- 自家源泉の貸切風呂とおいしい食事、肘折温泉 若松屋村井六助
自家源泉の貸切風呂とおいしい食事、肘折温泉 若松屋村井六助
「肘折温泉で初めて泊まるならここ!」と思い続けた理由はいくつかありますが、大きな理由は「すばらしい泉質の自家源泉を貸切で楽しめる宿だから」と「食事がおいしいと評判の宿だから」でした。
しかも、休前日でも1人泊を受け付けており、かつ、1人泊ゆえの料金アップもなく、2人で泊まっても1人で泊まっても1人あたりの宿泊料金は同じです。おまけに、休前日の料金アップもなしというすばらしさ。
当然、週末は直前に思い立ったのでは予約が取れません。とは言え「数ヶ月先まで週末は予約がいっぱい」というほどではなく、今回は2週間前ぐらいに空室があったので予約しました。ほど良く人気のあるの宿という感じですね。
東京から山形新幹線で新庄駅へ、そこからバスで肘折温泉へ
肘折温泉には、山形県新幹線の終着駅でもある新庄駅からバスで向かいます。
今回は、午前10時ごろに東京駅を出る山形新幹線に乗り、電車内で朝食兼昼食に駅弁とビールをいただきました。
選んだのは、米沢市の松川弁当店の「米沢牛味噌粕漬け焼肉弁当」
米沢市の駅弁というと、新杵屋の「牛肉どまん中弁当」が圧倒的に有名ですが、松川弁当店の弁当のほうがお肉の塊がどーんと載っている感があるので、つい松川弁当店を選んでしまう私。。。本日もボリューム満点で満足!
ほろ酔いでうとうとしているうちに新庄駅に到着!
まだ新しい新庄駅の駅舎は、青空を反射して輝いていました。
駅の目の前にあるバス停から、肘折温泉行きの大蔵村村営バスに乗車します。
新庄駅前から肘折温泉までの運賃は600円です。
時刻標はこちら。
約1時間の乗車でバスは肘折温泉へ。温泉街を通り抜けていきます。
若松屋村井六助さんの最寄りのバス停は「第1停留所」なのですが、その2つ先の終点「肘折温泉待合所」まで乗車しました。
終点で下車します。
村営バスは、大蔵村の公式キャラクターおおくらくんでラッピングされていました。
チェックイン前に羽賀だんご店でおやつ
宿の前で下りずに終点まで乗ってきたのは、羽賀だんご店でおやつをいただきたかったから!
バスの終点よりもさらに奥、肘折ダムの手前にあります。
ありました! 営業中ののぼりがはためいています。
お店の前のベンチでいただくのも気持ち良さそうですね。
「だんご」と大きく書かれています。
のれんをくぐって店内へ。
店内は広くはないのですが、4人掛けのテーブルが2つ置いてありました。
団子屋さんというと「お団子が並んでいるカウンターがある」イメージがあったのですがそうではなく、注文が入るたびに奥から持ってきていただく方式です。
メニューはこちら。餅と団子があります。ああ……餅もおいしそう。だけど、お餅8個はすごくお腹にたまりそう。8個で400円はお安いけれども。。。
種類は「ずんだ」「しょうゆ」「あんこ」「ごま」の餅と団子がそれぞれ用意されており、餅については上記にプラスして納豆餅もあります。
奥からお店の方が出ていらしたので「お団子はどれもおすすめですか?」と聞いたら「全部おいしいのでおすすめですよ!」と。そりゃそうかw
なので、ずんだとごまをいただきました。
お団子は弾力があってもちっとしており、ずんだもごまも、甘すぎず素材の味がしっかりしてとてもおいしかったです。
全種類注文すれば良かった……次回はお腹すかせてきて餅も食べたい……。
ちなみに羽賀だんご店さんは9時から16時までの営業で、不定休なのですが、Twitterで営業日の情報や肘折の天気についてまめにツイートしてくださっています。
肘折温泉に行くときはぜひチェックしたいところ。
ちなみに羽賀だんご店さんは冬季(12月上旬~4月中旬)は休業していますので、雪が降る前の季節に行きたいところです。
温泉街を歩いて戻り、若松屋村井六助にチェックイン!
お団子で小腹を満たした後は、バス停2つぶんを歩いて今夜の宿、若松屋村井六助に向かいます。
肘折温泉の温泉街は、お土産屋さんや酒屋さんも多く、観光地的な賑わいはありませんが、もっと生活に根ざした感じの、生きている温泉街です。
湯治客が多いからなんでしょうね。
お参りには行かなかったけれど、温泉神社もあるようでした。
おや、なんだか景気がいい感じの食事処が……と思ったら、準備中の札が。
お昼どきと夜だけの営業なんでしょうかね。
レトロでかわいい建物の郵便局の前を通り過ぎ……
現在は使われていない「旧肘折郵便局」です。温泉街のちょうど真ん中ぐらいにあります。
旧肘折郵便局の数軒先に、本日のお宿、若松屋村井六助さんはあります。
中に入ろうとしたら、玄関前で水まきをされていた宿の方に「お泊まりのお客様ですか?」と声をかけられ、中に案内していただきました。
フロントで宿帳に記入してチェックイン。
ちなみに若松屋村井六助さんは、13時からチェックイン可能です。早めにチェックインしてたっぷりお風呂を楽しめるのがいいですね~。
本日のお宿は2階の226号室。
階段もあるのですが、エレベーターで案内していただきました。
【部屋】★★★★ 冷房ないので猛暑の夏は不安残るが、普通に快適なお部屋
若松屋村井六助さんは、1階に浴室やコインランドリーなどの設備があり、2階、3階、4階が客室です。
2階3階のお部屋はトイレ共同でエアコン無し、4階のお部屋8室だけはトイレ付きでエアコン付きというちがいがあります。
ただし、じゃらんや楽天などの旅行サイト経由で予約しようとすると、4階のトイレ付きのお部屋のプランは出ていないようで……。公式サイト経由ではネット予約はできないようなので、どうしてもトイレ付きの部屋が良かったら電話予約するしかないのかもしれません。
廊下もちり一つなく、きれいに掃除されています。
お部屋に案内していただき、お茶を淹れていただきました。
一人泊でスペースに余裕があるということもあり、チェックイン時からお布団が敷いてありました。
ただ、若松屋村井六助さんはすべてお部屋で食事をいただく宿なので、布団が敷かれている部屋で夕食をいただくのは、気になる方は気になるかもしれないですね。
私は特に気にならない人ですが……。
お茶菓子は肘折せんべい。
ポットは湯沸かし機能がないタイプです。
窓際には空の冷蔵庫があり、グラスや栓抜きなども置いてありました。
温泉街の酒屋さんでお酒を買ってきての晩酌もいいですね。
バスタオルとタオル、浴衣と歯ブラシが置いてありました。
ちなみに若松屋村井六助さんでは、1階ロビー前ではWi-Fiが利用できるのですが、居室ではWi-Fiの利用はできませんでした。
2階のお部屋にはトイレや洗面所は付いていないので、同フロア内の共同設備を使うことになります。
廊下にはシンクとガス台、冷蔵庫にレンジなどのキッチンもありました。やかんや鍋もありましたので調理も可能ですし、居室内のポットのお湯が温くなったら湧かせるし、ありがたいですね。
洗面所もトイレも共同ですが清潔です。トイレはウォッシュレット付きで清潔でした。
1階にはコインランドリーと自動販売機。湯治で長期滞在される方もいらっしゃるんでしょうね。
自動販売機のお値段は、市価よりちょい高い程度でした。
まあ、温泉街のお土産屋さんや酒屋さんで購入したほうが、品揃えも良いしおすすめではあります。自販機は、深夜に急に飲みたくなったとき用という感じでしょうかね。
【風呂】★★★★☆ 空いていれば貸切で利用できる自家源泉の内湯が最高!
では、部屋でお茶をいただいて一休みしたら、1階のお風呂に行ってみたいと思います!
浴室は1階ロビーの奥に、女湯と貸切風呂が向かい合わせに。
少し離れたところに男湯があります。
扉の前でスリッパを脱ぐ仕組みなので、入る前に混み具合がわかるのは良いですね。
源泉使用状況についても掲示してありました。こちらは男湯と女湯についての表示のようですね。
源泉が高温のため加水あり、加温なし、循環ろ過なし、消毒なし。
泉質はph5.6と弱酸性の「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉」です。
源泉の温度は65.9度なので、加水はやむなしでしょうかね……。
浴室の利用時間は、男女別の内湯に関しては24時間利用可能ですが、午後10時から翌朝6時まではシャワーのお湯が止まるとのことでした。
また、浴室の男女の交換はありません。
若松屋村井六助の女湯
ではまず、女湯の内湯から。
たまたま、無人でした。うれしい♪
洗面所には特にアメニティはありませんが……。
ドライヤーは普通に使えるものでした。
では、入ってみたいと思います!
木の壁が濡れて輝く浴室。きれいに清掃されており、とても清潔です。
洗い場は3つ。シャンプー、コンディショナー・ボディシャンプーあり。
体を洗ってから浴槽に浸かります。
42度程度の熱めの適温に調節されたお湯に身をひたすと、たまっていた疲れがお湯にとけていくような感覚を覚えます。
ツルツルとした浴感があり、新鮮さを感じさせる笹濁りのお湯。
湯口からは絶え間なく、源泉が勢いよく投入され続けていました。
客室数32室と、そこそこの規模のお宿なのですが、大浴場が混み合うことはなく、いつ行ってものんびりと湯浴みを楽しめました。ああ、良いお湯だった。
自家源泉の貸切風呂 幸の湯
女湯からあがると、向かいにある貸切風呂が空いていたので、こちらにも入ってみることに。
空いていればいつでも入れるタイプの貸切風呂ですが、利用可能時間は13時から22時までと、朝6時から10時まで。深夜帯の利用は不可となっていました。
「どうぞお入り下さい」の札をひっくり返して「入浴中」にして中に入ります。
浴室は、貸切風呂らしくこぢんまり。
とは言え、ドライヤーや麺棒、箱ティッシュなど、大浴場の脱衣所と同等の物が置かれています。
では、中へ。
浴室内も狭く、中には洗い場が1つ、シャワーはありません。
浴槽も、2人入ったらいっぱいな小ささのものが1つ。
小ぶりな浴槽ですが、こちらの自家源泉のお湯はさっぱりとした浴感で、入るとシャキッと目が覚める感じ。
お湯の温度も、女湯よりもややぬるめで、入りやすい温度です。
ほんのりと鉄の香りのするお湯。
いつまでも入っていたくなるようないいお湯でしたが、人気の浴室なので、30分ほどであがります。 ああ、いいお湯だった……。
お風呂をあがったら、ロビーに麦茶が用意されているのでそれを飲んで一休み。
チェックインしてすぐに1度入って、夕食前にもう1度入ってしまいました。あまりお湯が好みじゃないときだと、夕食前に2回入ったりしないので、やはり、若松屋村井六助さんのお湯はとても良かったんだと思います。
【食事】★★★★☆ 朝夕お部屋でいただく食事はとにかく白米がおいしい
さて、食事です。
食事は夕食・朝食共に御膳を部屋に運んでいただきます。
若松屋村井六助のドリンクメニュー
お部屋に置いてあったドリンクメニューはこちら。
ビール、日本酒、焼酎、ワインなど、基本的なものは揃っていますが、そこまで種類は多くないです。
日本酒はすべて地元の「小屋酒造」で作られているものだそうです。
若松屋村井六助の夕食
夕食をお願いしていた時間になると、座卓をどけて御膳を運んできてくださいました。
お酒は「やや辛口」のおおくらにしました。
御膳を上から見るとこんな感じ。
あとはご飯と、お味噌汁とデザートのフルーツ。
では、いただきます!
お刺身は、鮪と海老とかんぱち。
山の中の宿ですが、お刺身もおいしいです。
アスパラと、手前のはみずだったかな……山菜の小鉢。
根曲り竹の炒め物。
根曲り竹は「月山竹(月山筍)」とも言われる、このあたりでよく採れる食材です。
味噌で和えたり、画像ぶれてしまいましたが、棒鱈と煮付けたりと、いくつもの料理に入っていました。
私は、筍全般が好きだし、根曲り竹も好きなのでうれしかったですね。
左側は、山形のだしっぽい感じの、夏らしい和え物。
右は、緑色の数の子?のような魚卵を、マヨネーズで和えたものでした。見た目「え?」と思ったけれど、味は普通にお酒に合うおつまみ。
ぶりの照り焼きと、しそ巻き。
どちらも甘辛味で、辛口のお酒に合います。
陶板焼きには、豚肉ときのこがたっぷり!
きのこ大好きなのでうれしい!
こしょうが効いた味付けも、おいしかったです。
最後に、漬けものとお味噌汁でご飯をいただきます。
こちらのお宿、白いご飯がとてもおいしいのです!
公式サイトによれば、女将の実家で作られたお米だとか。
なるほど、女将のご実家が稲作をやられてるのなら、お米もいいお米でしょうし、炊き方も上手なのかもしれないですね。
最後にデザートは、さくらんぼとオレンジ。
宿泊したのは7月の上旬でしたので、さくらんぼの季節も終盤というところでしょうか。
大変おいしくいただきました。ごちそうさまでした。
朝食の前に肘折温泉名物の朝市へ
さて、翌朝は、朝食の前に朝市へ。
肘折温泉では4月20日から11月下旬まで、毎日朝市が開かれています。
時間帯は、午前6時ぐらいから、7時30分まで。夏の間は5時30分ごろからやっているそうです。
宿泊した翌日の朝は雨が降っていたので「雨でもやるのだろうか」と思っていましたが、窓から外を見てみるとテントがずらり!やってますね~。
ずらりと並ぶテントに、お客さんは傘を差してあれこれ眺めていました。
売っているのは野菜や果物、山菜のほか、笹巻きやしそ巻き、あるいはおかずやおこわなどそのまま朝食になりそうなものも売っています。
眺めていると「味見していかない?」と言われ、せっかくなのでいただいてみると大変おいしかったり。しかも、お店を出しているお母さんたち、なかなかに押しが強いのです。山形県民ってこんなに押し強いっけか……などと思ってしまった私・笑
というわけで、これから朝食なのに、ついいろいろと買いこんでしまいました。
左上から時計回りに、笹巻き、ぜんまいの炒め物、山菜おこわ、しそ巻きです。
個人的に気になったのは、味見してめちゃめちゃおいしかったぜんまいの炒め物とおこわだったんですが、押しに負けて笹巻きとしそ巻きも買ってしまいました。まあこれは、お土産にもなるからいいか……。
笹巻きは、もち米のご飯を笹に巻いて蒸したもの。ご飯自体には味がついていないので、きなこをつけて食べるとおいしいよ、と言われ、きなこもつけていただきました。
ただ笹巻きだけは、正直言ってそんなにおいしくなかったかもしれないです・笑
なんとなく、新潟の笹団子みたいなものをイメージしていたんですが、ぜんぜん違いましたね。調べると、山形や秋田の郷土料理ということでした。私、山形出身なのにこれまで一度も食べたことがなかったんですが。。。
若松屋村井六助の朝食
さて、朝市から部屋に戻り朝食です。
朝食も、部屋に御膳を運んでいただきました。
ほうれん草のおひたし、温泉卵、昆布巻き、根曲り竹のきんぴら、焼き海苔、漬けもの、ヤクルト、さくらんぼの酢漬け。
朝食も、白いご飯がおいしいです。
ほうれん草は、えのきだけと一緒に出汁醤油であえてありました。おいしい。
ほうれん草を食べ終わった後の器に、さっき買ってきたぜんまいの炒め物を盛り付けていただきます。これ、本当においしかったです。ぜんまいの他にも、山菜とかいろいろ入っていて。
最後に、ご飯に温泉卵をかけていただきました。
ごちそうさまでした!チェックアウトまでにもう一度お風呂に入って、のんびりします。
【再訪したい度】★★★★★ 休前日1人泊可能&お湯良し食事良しサービス良しの優良旅館
噂通りのお湯良し、食事良し、サービス良しのお宿で、大満足の宿泊でした。
食事はどれも優しい味付けで、今回は1泊ということで品数多めのプランで泊まっていたのですが、湯治コースのお食事にして、朝市でちょこちょこ惣菜など仕入れつつ、連泊するのも楽しいだろうなと思いました。
ただ、2~3階のお部屋にはエアコンがないので、この日はかなり涼しかったので助かったのですけれど、猛暑の日はきついかも……ということ。それと、お部屋でWi-Fiが使えないのは、個人的には残念だったかもしれません。
肘折には魅力的なお宿がいくつもあるので、他に泊まってみたい気持ちもあるのですが、迷ったら六助さんを選んでおけば間違いない!ということがわかりました。またいつか、泊まりたいです。