大朝日岳を主峰に抱く朝日連峰を縦走する際、北側の登山口は山形県鶴岡市(旧朝日村)にあり、南側の登山口が、朝日鉱泉のある朝日町にあります。
実は、私が高校生まで過ごした地元は、北側の登山口の鶴岡市に近く、登山口のあるタキタロウ公園には小学校の遠足で行ったことがあります。
そんな、縁が深いと言えば深い山なのですが、地元を離れて社会人になってから登山を始めた私にとって、大朝日岳登山はなかなかハードルが高く、いつか登りたいと思いながら、実際に登ることができたのは登山を始めて5年目の夏でした。
なぜ、ハードルが高かったかというと、朝日連峰はかなり健脚でなければ、山中で一泊以上して登る必要がありますが、朝日連峰の宿泊施設は、日本アルプスや八ヶ岳にあるような営業小屋ではなく、いわゆる「避難小屋」と呼ばれる小屋だからです。
また、私は登山を始めて2年目からテント泊をしていましたが、朝日連峰はどの小屋もテント泊は禁止なのです。
しかし、ようやく避難小屋泊の旅に踏み出してみると、そう恐れることでもなかったかなーという感想を持ったので、同じような理由で大朝日岳をはじめとした東北の山への登山に二の足を踏んでいる方のために、レポートを書いてみようかなと思いました。
大朝日岳山頂避難小屋は、山頂から徒歩15分ほどという絶好のポジションにあります。
霧で霞んでいますが、小屋の背後に見えるのが大朝日岳の山頂です。
避難小屋を利用して登山するってどういうこと?
営業小屋泊、避難小屋泊、テント泊について、それぞれの特徴をあげてみると……
<営業小屋泊>
・食事……小屋で用意してくれる
・寝具……小屋で用意してくれる
・管理人……営業期間中は必ず常駐
・料金……食事付きだと6000円~1万円ぐらい
<避難小屋泊>
・食事……自炊の必要あり。コンロと食材を持参。
・寝具……小屋に毛布などある場合もあるが、基本的にはマットとシュラフを持参
・管理人……夏山シーズン中や週末のみいる場合もある。常駐ではない。
・料金……無料~2000円ぐらい
<テント泊>
・食事……自炊の必要あり。コンロと食材を持参
・寝具……マット、シュラフ、テントを持参
・管理人……野営場を管理している山小屋には管理人がいる。
・料金……500円~1000円ぐらい
という感じです。
多くの人にとって「避難小屋泊がハードルが高い」と思う原因は「食材や寝具を自分で担ぎ上げなければならないこと」でしょう。
コンロやマット、シュラフを購入する必要がありますし、普段日帰りや営業小屋泊をメインとしている方にとっては、たまの避難小屋泊のためにそれらを買い足すのは何だかなあ、と思われるのではないでしょうか。
また、それらを担いで登るための体力も必要となります。
しかし、テント泊をしていた私は、シュラフなどの道具も既に揃えていましたし、テント泊に比べたら避難小屋泊は荷物も少なくてすみます。
それなのになぜ、避難小屋泊を恐れていたかというと
(1)管理人がいなくて、宿泊者が自分1人きりだったり女性が他にいなかったらどうしよう!
(2)逆に、すごく混んでいて寝るスペースがなかったらどうしよう!
(3)トイレや室内がきれいじゃなかったらどうしよう!
というようなことを考えていました。
では、朝日岳山頂避難小屋泊では、実際はどうだったのでしょうか?
朝日岳山頂避難小屋には、夏山シーズン中~10月中旬まで管理人が常駐している
ホームページでこのことを知り、それならきっと大丈夫だろう!と心を決めました。
10月中旬までであれば、登山者の少ない平日でも1人、週末は2人の管理人が常駐しておられるようです。
これにより
(1)管理人がいなくて、宿泊者が自分1人きりだったり女性が他にいなかったらどうしよう!
→必ず管理人がいるので解決!
(3)トイレや室内がきれいじゃなかったらどうしよう!
→管理人さんがいるならきれいにしてくれているのでは?で解決!
となりました。
そして、泊まった日はお盆直前の日曜日ということでかなり混み合っており、他に女性がいないどころの話ではありませんでしたw
こうなると「寝るスペースがなかったらどうしよう」のことが心配になってきますが、寝る場所は、小屋への到着順に管理人さんが割り振るという話だったので、早朝5時に朝日鉱泉を出発し、最短ルートの中ツル尾根を登ってきたため、小屋に到着したのは12時半ぐらい。
女性では1番、男性でも、私より先についていたのは2人ぐらいでした。
割り振られたのは、2階の壁際のスペースでしたが、荷物を壁に立てかけておけますし、片側に人がいないので、後から来た人より幾分ゆったりとしたスペースを陣取ることができました。
ただ、私はあまり気にしませんが、女性は女性の近くに、というようなことはなく、お隣は普通に知らない男性でしたw
空いているときなら多少配慮してもらえるのかもしれません。
(2)逆に、すごく混んでいて寝るスペースがなかったらどうしよう!
→なるべく早く小屋に到着することでいいスペースをもらえることが多い
で、とりあえず、そこまで心配することはないか……というところでした。
朝日岳山頂避難小屋は3階建てだが、3階は窓がなく暑い。2階が一番良い場所
小屋内についてご説明します。
玄関を入ると板の間で、向かって左に2階に続く階段があります。
2階は、板の間の上にゴザが敷かれており、メインの居室として利用されており、先着順に「あなたはここ」という風にスペースを割り当てられていきます。
しかしこの日は非常に混んでいたため、1階の玄関前のスペースにも、2階がいっぱいになった後はお客さんが入っていました。
2階は窓もあり、壁際に棚があるところもあるので最も居心地がいいです。
一応更衣室ということになっている小部屋もありました、が、昼でも真っ暗だったので利用時はヘッドランプが必要です。
また、山頂避難小屋には屋根裏に3階もあり、はしごを上って上がることができます。屋根裏部屋は窓もなく暑いし、上り下りもはしごなので早朝や夜は大変そうです。
3階に通されるのは最後の最後、日が暮れるころになってやってきた団体さんでした。
おそらくそういう方たちは、いい場所が残っていないのは覚悟の上でやってきたんだと思います。私もそのぐらいタフになれたらいいのですが。。。
1階と2階の棚にはステンレス製の板が置いてあり、コンロを使うときはその板の上で使うように言われました。
天気がよかったので、外で調理している人もいましたですが、夏場は虫も多いので、室内で調理している人も多かったです。
トイレは、使用後に足で踏んで水を流すタイプで、比較的きれいでした。宿泊客が多い日でなければきっと、もっときれいだったことでしょう。。。
また、水場は、小屋から7分ほど下ったところに「金玉水」、別の方向に10分ほど下ったところに「銀玉水」という水場があり、おいしいわき水がでています。
ちなみに、少し遠いですが、銀玉水のほうがおいしかったです。
歩いたルートのきろくと写真
2015年8月9日(日)
AM5:30朝日鉱泉を出発→中ツル尾根(コースタイム6時間)→AM11:30大朝日岳山頂 →PM12:30大朝日岳山頂避難小屋(宿泊)
朝日連峰は、本当に吊り橋が多いです!
5本ぐらいはあったと思います。
歩き出していきなり吊り橋!
どれもけっこう高度感があり、長さもあり、作りはしっかりしているものの幅は細めでこわいです!
ただ、橋は大丈夫ですが、徒渉や急坂、荒れた道も多く、下りでこの道を使った場合、死亡事故も起きているとか。。。
山頂までの最短コースなので、朝日鉱泉から中ツル尾根を往復して、日帰りで登山する方も多いようなのですが、正直このルートの往復は、眺望もありませんし下りは傾斜がきつくてつらいし、いいことがないような気がします。
可能であれば、山の上で泊まって、小朝日岳ー鳥原岳経由など別のルートで下山することをおすすめします。
やっと!中ツル尾根の急登を抜けて、山頂が見えてきました。
ガスっているけどうれしい!!涼しいし。
お花も咲いてるし。。。
山頂!真っ白でしたw
到着時は小屋の周りも真っ白でしたが……。
そうそう、大朝日岳山頂避難小屋では、ドコモの電波入りました!
外のほうが携帯の電波も良かったので、午後は外でぶらぶらしていたら……
真っ白だった視界も、ときどき開けてきれいでした。
ちょっと雲多めでしたが、日の入りは小屋の目の前で見れます。
このときは既に食事も終えて、お酒を飲みながら夕日を見ていました。
ちなみに……普段は大朝日岳山頂避難小屋では缶ビールの販売があるそうなのですが、この日は到着時点ですべて売り切れており、持参したラムを飲んでました。
2015年8月10日(月)
AM6:00大朝日岳山頂避難小屋を出発→AM7:20小朝日岳→AM9:00鳥原小屋→PM12:30朝日鉱泉へ下山
翌朝も雲は多めでしたが、日の出を見に山頂まで上がりました。
雲海がきれいです。
雲の中から日の出も見れました。
小屋に戻り朝食を食べて出発!
大朝日岳と避難小屋を背にして、小朝日岳方向に向かいます。
振り返って、避難小屋と大朝日岳。美しいです。
今日歩く山はこっち!
小朝日岳を通過し。。。
途中、こんな感じの湿原地帯に「鳥原小屋」があります。
こちらの小屋も避難小屋ですが、やはり管理人さんが常駐しており、大朝日岳山頂避難小屋に比べるとお客さんが少ないのでゆったり過ごせるし、ビールもちゃんと売ってるそうですw
自家用車で登山するなら、時間を調節してこちらで一泊するのも良いかも。
登山バス利用だと、登りにしろ下りにしろ泊まるにはちょっと時間が合わなくて、通過になってしまうんですよね~。
かわいい犬もいました。
そして朝日鉱泉に戻り……お蕎麦を食べてお風呂に入って、登山バスで左沢駅へ!
左沢駅で尾花沢スイカサイダーを飲んでフィニッシュ!
左沢駅ではちょっと、電車の待ち時間が長めですが、大満足の山旅でした。
今度は、鶴岡市側から縦走したいなー。
前泊した「朝日鉱泉ナチュラリストの家」については、こちらの記事に詳しく書いています。