日帰りでも十分登れる塔ノ岳だけど、夕日と夜景と日の出のためにあえて泊まる
神奈川県の丹沢山地にある塔ノ岳は、標高は1491メートルとさほど高くはないのですが、首都圏からのアクセスが良くさまざまなルートで登ることができ、ルートによっては稜線歩きやちょっとした岩場も楽しめるので、非常に人気のある山です。
早朝から登り始めれば日帰りで十分に登れてしまうのですが、私はあえて塔ノ岳の山頂にある山小屋「尊仏山荘」に一泊してのんびりと登ることが多いです。なぜなら尊仏山荘では、小屋の目の前で「日の出」「日の入り」「夜景」の3セットが楽しめるすばらしい山小屋であるうえに、通年を通して営業しているからです。しかも、特定の日を除けば週末でもあまり混んでいません。本当にありがたい山小屋です……。
2019年の2月にも尊仏山荘に宿泊し、1泊2日で丹沢を満喫してきましたので、レポートしたいと思います。
- 日帰りでも十分登れる塔ノ岳だけど、夕日と夜景と日の出のためにあえて泊まる
塔ノ岳に登る主な登山ルート
塔ノ岳に登るためのルートはいくつもありますが、中でもよく利用されている4コースについて、簡単にご紹介したいと思います。
大倉尾根(バカ尾根):登山初心者&富士登山を目指す人におすすめ
登り3時間30分、下り2時間20分
今回私が上りで利用したコースですので、ルート上の写真などは後ほどご紹介します。
小田急線の渋沢駅から路線バスに乗り、終点大倉から登り始めます。大倉尾根を上って下りれば6時間程度と、日帰り登山にちょうどいいコースタイムになるため、日帰りでこちらのルートを利用される方がかなり多いです。
ルート上には特に危険箇所もなく、通年で営業している山小屋がルート上にいくつもあるため、トイレや休憩場所に困ることもありません。登山を始めて間もない方が、体力をつけるために上るにもちょうどいいルートだと思います。
また、大倉尾根は「アップダウン」がほぼなく、ずっと上りっぱなしのルートです。きついことはきついですが、標高差1200メートルを上り続けるというのは富士登山のトレーニングにもちょうどいいのではないか?と思います。
大倉から鍋割山を経由する:名物の鍋焼きうどんを食べに
登り5時間、下り4時間
大倉尾根と同じく「大倉」バス停から別の道を歩き、西山林道を経由して鍋割山にまずは登り、鍋割山稜を経由して塔ノ岳を目指すルートがあります。
このルートを歩く理由はもちろん、鍋割山の山頂にある山小屋「鍋割山荘」で提供している名物の鍋焼きうどんを食べるためです。
1200円で、具だくさんの最高においしい鍋焼きうどんをいただくことができます。
鍋焼きうどんの提供時間や値段は時折変更されることがあるようですので、鍋割山荘の公式サイトをチェックしてから行かれたほうがいいでしょう。
以前はもっと遅い時間まで提供していたのですが、現在は鍋焼きうどんのラストオーダーは「13時30分」となったようです。テレビなどで紹介されていたのを見て、普段登山をされない方が遅い時間から登ってきて、暗くなってから「鍋焼きうどん1杯!」みたいなこともあったようですので、致し方ないのでしょうね……。
塔ノ岳を目的とするのに鍋割山を経由すると遠回りになって時間がかかりますので、往復でこのルートを利用するのは現実的ではありません。上りか下りのどちらかで立ち寄ってうどんをいただくのが良いかと思います。
ヤビツ峠から表尾根:鎖場と稜線歩きが楽しめる
登り4時間5分、下り3時間15分
小田急線の秦野駅からバスに乗り、終点ヤビツ峠から登り始めます。丹沢山塊の楽しさを存分に味わえるおすすめのコースです。
アップダウンが多く体力は必要ですが、かなり長い時間、稜線歩きを楽しむことができます。
また、途中にはちょっとした鎖場もあって岩場のスリルも楽しむことができます。
写真で見るとどうということのない岩場に見えますが、実際は垂直に近い岩場となり、かつ上りで表尾根ルートを使うと、この鎖場は下らければいけないんですよね。岩場は上りよりも下りがこわいので、登山初心者の方は人によってはけっこうこわいんじゃないかと思います。冬場は特に、鎖の周りに凍結箇所があったりもしますから、岩場に慣れていない方は避けたほうが無難ですね。
ある程度登山に慣れた方にはかなりおすすめのルートなんですが、一つ気をつけなければならないのは「ヤビツ峠行きのバスの本数がかなり少ない」ことと、冬期は路面凍結のため、手前の「蓑毛」バス停でバスが折り返してしまうことが非常に多いことです。
蓑毛からヤビツ峠までは1時間程度歩けば着きますので「蓑毛までしかバスが行かないかも」と最初から頭にいれておけばそんなに心配することはないのですが、特にヤビツ峠に下山した際にバスが蓑毛で折り返していると、待ちぼうけになってしまうので注意したほうが良いでしょう。基本的にはバス利用なら上りで使うのがおすすめのルートです。
宮ヶ瀬から丹沢山を経由する:人が少ない静かな道。長いので下山利用が良いかも
登り6時間55分、下り5時間25分
本厚木駅から「宮ヶ瀬」行きのバスに乗り、終点の手前の「三叉路」で下車して上り始めるコースです。今回の登山で下山時に利用しましたので、ルートの詳細については後述します。
宮ヶ瀬行きのバスはけっこう本数が多いので、そういう意味では公共交通機関利用でも利用しやすいルートです。ただ、地味な樹林帯の道をかなり長く歩くことになりますので、上りよりは下りで利用したほうが良いかもしれません。
宮ヶ瀬には飲食店もそこそこあるので、バスを待つにも便利でした。上りでも下りでもそこそこ時間がかかるので、足が早い人やトレイルランニングの人以外は、宿泊を伴う登山の際に使ったほうがいいと思います。
今回は、大倉尾根(通称バカ尾根)を登ってまっすぐ塔ノ岳へ
2月のある金曜日。
「明日は山に行きたいけど、今日ちょっと帰りが遅くなりそうだから、あまり早起きできなそうだなあ……。でも、日曜は予定ないから泊まりはいけるな。よし、それならば尊仏山荘だ!」
と、前日の午後に予約の電話を入れました。
「明日は混んでいますか?」
と訊ねると「いいえ、空いています」とのお答え。良かった……。
後で書きますが、尊仏山荘は2月の週末に1日だけ、めちゃくちゃ混む日があるのです。その日には絶対に泊まりたくないのであらかじめ聞いたというわけです。
その日はやはり帰宅は遅くなってしまいましたが、翌日は8時30分ごろに家を出れば十分というのんびり出発です。パッキングを済ませて安心して眠りにつきました。
渋沢駅から路線バスに乗り、終点大倉で下車
小田急線の渋沢駅で下車し、駅北口にある大倉行きのバスが出るバス停へ。
大倉行きのバスは、土日の7時台、8時台には1時間に4本、それ以外の時間帯でも1時間に2本はバスが出ています。時刻表はこちら。
この日は10時18分発のバスに乗りました。日帰り登山をするには遅めの時間帯ですが……登山の格好をしている方がそこそこの人数、バス停に並んでいましたね。
約15分ほどの乗車で、終点大倉へ。
トイレや売店、登山情報コーナーなどが揃っている、かなり至れり尽くせりな登山口です。それだけ利用者が多いということなんでしょうね。
登山ポストもありますので、登山届も提出できますし、トイレの前には下山後に靴を洗うための洗い場(ブラシ常設)もあります。トイレもいつも、きれいに掃除されています。
以前から売店はあったのですが、いつの間にか進化して、コンビニ(ポプラ)になっていました。
店内で飲食できるようにテーブルと椅子も設置されています。登山前に肉まん買って食べれるのうれしいですね。
店内では、一般のコンビニに置いてあるおにぎりやパンなどのほかに、近隣のお店で売っているお菓子やお土産類も販売していました。
手袋や帽子、ライトや熊鈴、ガスカートリッジなどちょっとした登山用品も置いてあります。日焼け止めクリームやリップクリーム、シャンプー類などもあるので、登山前・下山後に忘れ物に気づいた際にも便利ですね。
11時に、大倉からのんびりと登山スタート!
トイレをお借りしてコンビニを覗き、身支度を整えると午前11時ぐらいでした。登山開始にはかなり遅めの時間ですが、今日は大倉尾根を標準コースタイムで3時間30分登るだけなので大丈夫です。
このルートはもう何度も登っていますし、14時台には山頂に到達できるでしょう。登山スタート!
大倉バス停の向かいにある「大倉屋」なるお店の横の道を歩き始める登山者もいました。あちらは「西山林道」につながる道でして、おそらく鍋割山に向かうのでしょうね。でも、今からだとうどんのラストオーダーの13時30分には間に合わなそうですね……。
私はこちらの、大倉尾根へ!
丹沢クリステルの激励を受けつつ(?)歩き始めます。
20分ほどゆるやかな登山道を登っていくと「観音茶屋」に出ます。
この日は臨時休業との貼り紙がしてありましたが、普段は冬でも週末は大抵営業しています。まだ新しい公衆も利用可能です。
営業しているときはこんな感じ。登山口から20分の近さですので、行きに立ち寄るのではなく、下山時に寄る方が多いのかなと思います。
観音茶屋からしばらく歩くと分岐がありますが、右に行っても左に行っても後で合流します。
右が最短ルートですが、左に行けば「大観望」という展望スポットや丹沢山中唯一のテント場を通過することになります。以前はテント場と一緒に「大倉高原山の家」という山小屋が営業していたんですが、小屋のほうは現在は営業していないようです。
この日はやや曇りがちで、展望もあまり良くなさそうでしたので、最短ルートの右へ進みました。
間もなく「雑事場の平」なるポイントに。さっき分岐した道とはここで合流します。
広い道に椅子も置いてあって、休憩するのに良さそうな場所ですが、まだ大倉から歩き始めて40分しか経っていませんので、立ち止まらずに歩き続けます。
このあたりの道は平らで広くてとても気持ちがいいですね。
雑事場の平から5分ぐらいで「見晴茶屋」に着きます。
こちらは営業中で、外で休憩している登山者が何人かいました。そしてきれいなトイレもあり。
この後しばらくきれいなトイレはないので、心配な人はここで用を足しておいたほうが良いと思います。
見晴茶屋を過ぎると、大倉尾根が「通称バカ尾根」の本領を出してきます。
木道のだらだら登り……。
そして階段登り……。
Wikipediaによれば、大倉尾根が「バカ尾根」と呼ばれる理由は「全長約7km、標高差約1200mで、低山とはいえ馬鹿には出来ないかなりきつい長い登りが続くことから」とのことですが、バカみたいに階段ばかり続くから「バカ尾根」という風に思っている人が多い気がしますね。普通の登山道よりも階段を上るのって、消耗しますからね。。。
見晴茶屋から20分ほど登ると「駒止茶屋」に着きます。
一応、休日は営業している小屋のはずなんですが、この日は営業していないようでした。駒止茶屋でもトイレは借りれますが、見晴茶屋にあるきれいな新しいトイレ、というわけではありません。
駒止茶屋の後はいったんゆるやかな道になった後、また、比較的急な上り坂に突入します。
大倉から歩き始めて2時間弱。少し疲れてきたかも……と思ったところで「甘酒300円」の文字が!
甘酒・おしるこ・ココア、いずれも300円です。
かわいいイラストの看板があちこちに現れたら「堀山の家」に到着です。
堀山の家で甘酒休憩
大倉尾根の途中にあるいくつもの茶店・山小屋の中でも、堀山の家はいつも賑わっているように思います。山頂と登山口の、ちょうど中間ぐらいにあるからでしょうか。
堀山の家は、2食付きで宿泊も可能な山小屋です。
缶ビールやペットボトル類の販売のほか、コーヒーやおしるこ、ところてんや甘酒なども提供しています。
ただし、意外にもトイレはありません。
もちろん、本当にトイレがないわけではなく宿泊時は利用できるのでしょうが……休憩利用ではトイレは貸していないのですね。
中に入ってみると、売店ではお菓子やカップラーメンもいろいろと売っていました。
私は甘酒を注文して一休み。
おまけでとうきびチョコがついてきました。おいしかった。うれしい。
堀山の家の前にはこんな顔ハメ看板が……なんかいろいろなジブリが混ざっている……のかな……?
甘酒をいただいて一休みしたところで、山頂に向けてまた歩き始めます。
塔ノ岳山頂までひたすら階段を上る
堀山の家から先は、またしても階段上りです。
大倉尾根は本当に階段が多いのです。
そしてこの日は、雨は降らない予報でしたがすっきりと晴れてくれません。
こんな感じの冬晴れの日なら、階段も少しは気持ちよく上れるのに……などと思ったり。
登りながら振り返っても、もやっとした展望が広がるばかりで。
晴れていればこんな風に、山と街と海が見えて、なかなかの景色なんですけどね。
堀山の家から1時間弱で、次の山小屋、花立山荘へ。
こちらが、塔ノ岳山頂に至るまでの最後の山小屋です。
花立山荘の前には、以前はこんな立派なツノを持った鹿が、主のようにウロウロしていたのですが、今回はいませんでしたね。
というか、全体的に数年前よりも鹿の頭数が減ったような気がしました。
花立山荘も宿泊可能な山小屋ですが、売店と軽食の営業もしており、豚汁やおしるこ、ゆず茶などを提供していました。
しかし、大倉尾根の茶屋・山小屋全体に言えることですが、ラーメンやうどん、カレーなどのガッツリ食事の提供はなく、汁物や甘味のみの提供なんですよね。食事らしいものはカップラーメンを買うぐらいしかないので、自分で持ってきたほうが無難だと思います。
また、花立山荘では見晴茶屋と観音茶屋にあるのと同じ、きれいな公衆トイレが利用できます。
花立山荘を通過した後はいったん下りにさしかかります。
道の向こうに見えるピークが本日の目的地である塔ノ岳です。下って登るだけ!
花立山荘から20分ほどで「金冷し」なる、鍋割山稜との合流ポイントに着きます。
あと600メートル!
最後まで、がっつり階段を登らされます。
着きました!お疲れさまでした!
しかし、わかってはいましたが曇りですね……。
晴れていればこんな風に、広く気持ちがいい山頂です。
今年は、2月だというのにまったく雪がありませんでしたが、2月ごろはこのぐらい、山頂には雪が積もっていることも多いですね。
山頂からの展望も、今日は特筆すべきものはありませんが……。
本当はこんな風に、富士山がどどーんと目の前に見える最高の山頂です!
山頂についたのは14時30分ごろ。チェックインして靴を脱いでしまうと外に出るのが億劫になるので、チェックイン前に水場で水を汲んできたいと思います。
塔ノ岳山頂から徒歩10分の水場
私が尊仏山荘を気に入っている理由の一つに、山頂から5~10分ほどかかりますが、冬でも枯れることが少ない水場があることがあります。
「水場 0.3km」と看板が出ていますのでわかります。
けっこう急な坂を下っていくことになりますので、帰りは水を持って急坂を登らなければならず、わりとしんどいです。なのでメインのザックは山頂に置いてきてしまい、サブザックで往復するのがおすすめです。
こんな感じで、パイプからちょろちょろと水が出ています。
特に煮沸などせずに飲める水だと聞いています。山荘の近くで水を補給できるのはありがたいことですね。
尊仏山荘にチェックイン!一夜をまったりと過ごす
さて、お水を持って戻ってきまして、尊仏山荘にチェックイン!
一時期は毎冬泊まりに来ていたのですが、今回は2~3年空いてしまったかな、という感じ。
オーナーに「ひさしぶりじゃない」と言われました・笑
尊仏山荘の宿泊料金
尊仏山荘の宿泊料金は、1泊2食付きで6500円。
夕食と朝食がそれぞれ1000円なので、どちらかしか付けなければ5500円。素泊まりなら4500円になります。また、別料金1000円で昼食用の弁当も提供しています。
布団の数以上の予約は入れないように制限しているそうなので「1つの布団に2人で寝る」ような事態はおそらく発生しません。(緊急避難的に予約外の宿泊客があった場合は仕方がないと思いますが……)それで2食付き6500円は安いほうだよなあと思い、それが尊仏山荘を気に入っている大きな理由です。
寝室は2階にあり、大部屋と小部屋があります。
大部屋は2段ベッドの蚕棚タイプ。
小部屋は、4つ布団が敷ける和室タイプと。
2段ベッドが左右にあって4人泊まれるタイプがあります。
私は、いつも1人で泊まっているのですが、大部屋にも和室の小部屋にも2段ベッドの小部屋にも泊まったことがあります。なので、特に「女1人だとどの部屋に通されやすい」というような傾向があるわけではないようです。
ザックを置いたらバーナーとお水とお菓子とお酒といろいろを持って、1階の談話室に向かいます。
夕食まで談話室で飲みながら過ごす
私が尊仏山荘を気に入っているもう1つの理由が、チェックインから消灯時間までいつでも滞在できる談話室が、わりと広いことです。
詰めれば20人ぐらいは座れるのではないでしょうか。大きなストーブもついていますし、尊仏山荘の中で一番暖かいのはこの談話室だと思います。(2階の寝室にはストーブがないので、夜は特に寒いです)
この日は空いていたので、私もテーブルの隅の場所をお借りし、先ほど汲んできた水を湧かしてコーヒーを淹れたり、持ち込んだ缶入りのお酒を湯煎して熱燗にしたりしました。
夕食までの時間をこの談話室でだらだらと飲みながら過ごすのが、けっこう癒やしの時間だったりするのですけど、布団が全部埋まるぐらい混んでいる日だと、残念ながら座る場所がない状態になってしまうんですよね。それで、予約を入れる時点で「明日は混んでいますか?」と聞いたのでした。
ちなみに、今回はコーヒーもお酒もすべて持ち込んだのですが、もちろん売店でもお酒や飲み物は販売しています。
食事のメニューはカップヌードルしかないのは尊仏山荘も同様でしたね・笑
尊仏山荘の看板猫だったみーくんのこと
尊仏山荘に初めて泊まったのは2012年の2月だったと思いますが、当時この小屋では猫が1匹飼われていました。
みーくんという名前のオス猫で、当時から老猫だとは聞いていたのですが、2016年の12月に亡くなってしまいました。
毎年のように泊まっていた尊仏山荘に、ここ数年足が遠のいていたのも、みーくんがいない尊仏山荘というのが何か、寂しかったからかもしれません。
椅子の下でつけもの石のように丸まっている姿がかわいかった。
お座り上手。揃えた手の丸さがなんともかわいらしい。
気がつくとお客さんの布団の上で遊んでいました・笑
日が当たる、暖かいところを探していたのですね。
もう亡くなってから2年以上経つのですけれど、尊仏山荘の紹介記事を書くのならみーくんの写真は載せておきたい……と思っていたので、紹介させていただきました。
尊仏山荘のトイレ
尊仏山荘には、小屋の隣に男女別の公衆トイレがあり、宿泊者もそちらを使います。
日中は、トイレに行くときはいったん小屋から外に出なければなりませんが、夜になると小屋から直接トイレに向かう扉が開放されて、外に出ないでもトイレに行くことができるようになります。
女子トイレは個室が3つでいずれも水洗の洋式です。
流す水に茶色く色がついている、山小屋の水洗トイレによくある方式ですね。
トイレットペーパーを流すと詰まってしまいますので、流すことはできません。
トイレットペーパー用のゴミ箱もあるのですが、こちらに紙を捨てていいのは小屋の宿泊客のみです。休憩利用の場合は使用した紙は持ち帰るように書かれており、持ち帰り用のビニール袋も備え付けてあります。
消灯後もトイレと、トイレに行くまでの道のりには常夜灯がありますので安心感がありました。
ダイヤモンド富士が見れる日もある!尊仏山荘から眺める夕日
塔ノ岳の山頂からは日の出も日の入りも眺めることができます。なので山頂に立つ尊仏山荘に泊まれば、どちらも小屋の目の前から眺めることができるわけで。
特に、日の入りに関して言うと、塔ノ岳では1年のうち数日間だけ「ダイヤモンド富士」と呼ばれる「富士山の山頂に夕日が沈む」日があるのです。こちらのホームページに詳しい日程がありましたが、この日だけは尊仏山荘も確実に満員御礼になります。一度、そんなことは知らずに普通に予約して泊まりに来たら、今までにないぐらい混んでいて談話室などもすし詰めでのんびりできなかったので、最近は絶対にダイヤモンド富士の日は外して泊まりにいくようにしている私なのでした……。
宿泊したこの日は、日中から曇りがちでしたので日の入りは見えませんでしたが、晴れていれば富士山の山腹に沈んでいく夕日を眺めることができます。
夕日に富士山のシルエットが浮かび上がる姿は、本当に美しいです。
沈んだ後もしばらくは山際が赤みがかっていて、空には星が、地平線には夕日が、地上には夜景が楽しめるという、これ以上ないコンビネーションを楽しむことができます。
尊仏山荘ほど周囲に何の障害物もなく、日の出も日の入りも見ることのできる山小屋はまれだと思います。
尊仏山荘の夕食は手作りのカレーとたっぷりの副菜
満員で夕食が何回転もする日はその限りではありませんが、尊仏山荘では宿泊客が多すぎなければ、日の入りの時間をはずして夕食を提供してくださいます。
夕食は定番のカレー!カレーとルーはおかわり自由です。
副菜に筍の煮物やサラダもつきます。ポテトサラダは特に、カレーとよく合うのでうれしいですね!
カレーもちゃんとおいしいカレーなので、私は必ずお替わりします。
お腹がいっぱいになった後は、談話室に戻って食後のコーヒーを淹れ、夜が更けるのを静かに待ちます。
塔ノ岳山頂から眺める夜景
この日は夕方までずっと曇りで、山頂から地上を見ようとしてもガスに遮られて見えない状態でした。なので夜景も厳しいかなと思っていたのですが。
夜になると空気が澄み、素晴らしい夜景を眺めることができました。
手前に見える山は丹沢大山ですので、その向こうは伊勢原や小田原の夜景でしょうか。
街の灯りの向こう側には海が見えますね。
夜景を堪能して談話室に戻ると、そろそろこちらも閉店モード。
消灯は21時ですので、それまでには片付けて寝る支度を整え、布団に入りました。
尊仏山荘は、寝室のある2階にはストーブがないので寝るときはけっこう寒いのですけど、用心してダウンジャケット&ダウンパンツを持ってきていたので、寒さを感じることなく眠りにつくことができました。
塔ノ岳山頂から眺める日の出
朝、朝食前に日の出が見れそうかどうかをチェックしに外へ。
塔ノ岳山頂は360度の大展望が楽しめる絶好のビューポイントですので、日の出のチェックもサンダル履きでちょろっと行ってくればOKです♪
うーん、空は少し焼けてはいるのですけれどちょうど日が昇るあたりに厚い雲がかかっていて、これは雲の上に日が出てくるまで1時間ぐらいかかってしまうのでは……。
この状況で外で日の出待ちは、寒い。
というわけで潔くあきらめてストーブの前で暖まっていたのですが、せっかくなので過去に塔ノ岳の山頂から撮影した日の出の写真を掲載したいと思います。
朝日は富士山と逆側、昨日夕日を眺めた伊勢原や小田原の方向から上ります。
赤い点が、だんだんと大きくなっていきます。
この頃には、日の出と逆方向にある富士山も、朝日を浴びて赤く輝きます。
これほどすばらしい日の出を眺められる山小屋ですので、当然ながら大晦日から元旦にかけては大混雑すると聞きます。
ただし「混んでも予約は布団の数だけしか取らない」と仰っていたので、一つの布団に2人寝るようなことにはならないようです。私はあまり興味がないけれど、初日の出を山で見たい方にはかなりおすすめの山小屋だと思います。(ちなみに、お隣のみやま山荘では、普通に1つの布団に2人で寝ることありましたので……)
尊仏山荘の朝食はおでん
尊仏山荘の食事メニューは朝も夕もいつ来ても変わりません。
夕はカレーでしたが朝はおでんです。
おでん、ご飯、漬けもの、ふりかけ。ご飯はお替わりできます。
「おでんならパックを自分で持ってきて温めればいいじゃない」と思う方もいるとは思いますが、おでんパックってけっこう重いですしね。
朝は温かい汁物がありがたいので、私はこの朝食、けっこう気にいっています。
丹沢山を経由し、宮ヶ瀬に下山
朝食を食べ終えて、午前7時30分ごろに出発します。
この日は、丹沢山を経由して宮ヶ瀬に下りるルートを選択しました。実は、初めて歩くルートです。
以前は、丹沢山から蛭ヶ岳に丹沢主脈を縦走して、相模原市緑区の東野に下山して、バスでやまなみ温泉を経由して帰る、というのがお気に入りのルートだったのですが、残念ながら、バスの運行がなくなって予約制の乗り合いタクシーのみになってしまい……。
乗り合いタクシーも値段はバスと変わらないので、電話で予約すればいい話なんですけど、何か億劫で、できれば路線バスで帰れる登山口に下山したかったのですよね。それで宮ヶ瀬。
まずは、塔ノ岳のお隣のピーク、丹沢山へ向かいます。
丹沢山までのコースタイムは1時間30分ほどです。
やや枯れてはいますけれど、天然の芝生の稜線を歩くのはとても気持ちが良い時間です。
こうして稜線を歩いていると、周辺の山々の眺めもなかなかに雄大で、丹沢山塊がいずれも標高2000メートルに満たないということが信じられなくなりますね。
この日は雲っていて、富士山も見えなかったのでやや微妙な眺めではありますけれど……。
以前、晴れた2月に同じルートを歩いたときはこんな感じでした!
青空に照り映えるうっすら雪のついた山々と、そして背後に見える富士山の美しさ。。。
遠くに海が光っているのが見えたり。
東京からけして遠くないところに、こんなすばらしい山があるって本当に素敵なことだと思うし、今でも十分たくさんの人が登っている山だとは思いますが、もっと多くの人に知られるようになるといいなと思います。
塔ノ岳から約1時間半で丹沢山に到着
コースタイム通りの時間をかけて、丹沢山山頂へ。
やはり、雲っていて眺望はありませんが、丹沢山の山頂からも美しい富士山が眺められ、夕方には富士に沈む夕日を見ることもできます。
山頂にあるみやま山荘には、私も2度泊まったことがあります。新しくきれいで、食事のおいしい小屋です。ただし本当に混むので、週末はもう泊まりたくはないな……。
みやま山荘も、山頂から日の出は眺められるのですが、日の出の方向に木があるので、こんな風に木の枝の向こうに日が昇ってくる見え方になりました。
丹沢山までは何回も歩いているのですが、今日はここから、初めての道を歩きますよ!
丹沢山から11km下って宮ヶ瀬へ下山
丹沢山から歩き始めてすぐのところにあった道標がこちら。
宮ヶ瀬までは11km。下りが多いとは言えまあまあ長い道のりですね。
このあたりは北側の斜面になるので、少しだけ雪が残っていました。
今回の山行で雪を踏んで歩いたのはこのポイントだけでしたね。でも、雪が多い年は丹沢にもかなりまとまった量の積雪がありますから、そのときはこちらのルートは、歩く人も少なそうだしかなり雪が深くなりそうですね……。
歩き始めからしばらくは、下りっぱなしではなく、アップダウンを繰り返します。
地図上に「ハシゴ」と書かれている箇所があったので、どんなハシゴかなと思っていましたが、おそらくこれのことでしょう。
特に危険は感じませんでした。
全体を通して、特に「危険箇所」というほどのポイントはありませんでしたが、斜面をトラバースする道が長いので、雪の多い時期や、凍結しているときは気をつけないと危ないかもしれません。
途中、何箇所か鎖のあるポイントもありました。
ここはちょっと、慎重にいったほうが良さそうな鎖場でしたね。
「山と高原地図」にも「クサリあり通行注意」と書かれている「金冷シ」の手前の鎖場です。
「金冷シ」という地名、山中ではよく見かけますけど、ルート上のやや危険を感じるようなポイントなことが多い気はします。塔ノ岳の山頂手前の「金冷シ」は、まったく危ないポイントではないですけど……。
金冷シ通過後も、ところどころにクサリがあり。
「高畑山」なるポイントまで来たら、後は特に危なそうな場所もなく、ひたすら宮ヶ瀬に向かって下っていくのみです。
気がつけばあと1km!
下山する宮ヶ瀬には「宮ヶ瀬湖」という大きなダム湖があるため、下山中もときおり宮ヶ瀬湖が見えるポイントに出ます。
だんだん宮ヶ瀬湖が大きくなってくると「もうすぐだ!」という気持ちが盛り上がりますね。
午後2時過ぎについに下山!長かった……。
塔ノ岳から6時間半、丹沢山から5時間かかりました。
こんな感じの、特になんでもない道路の側に出ます。
登山口の前には特に何もないですが、ここから10分ほど歩けばバス停があって、1時間に1本は必ず、本厚木駅行きのバスが出ているのがうれしいポイント。
久々に尊仏山荘に宿泊し、日の出・日の入りは残念ながら眺めることができませんでしたが、小屋も山も空いていて、終始のんびりと登山を楽しめました。
塔ノ岳、そして尊仏山荘は「多くの人が日帰りで登る山だと思っている」けど「小屋に泊まると日の出も日の入りも夜景も目の前で眺められて最高」という点で、「大菩薩嶺と介山荘」とよく似ているなあといつも思います。
どちらも通年営業していて、夕食がカレーなところも同じですね。
あまり混んでしまうと私が困りますが、どちらも本当にいい山で、いい山小屋だと思いますので「あそこは日帰りで十分でしょ」などと思わずに、ぜひ泊まって、フルコースで楽しんでいただきたいです。
さて、宮ヶ瀬に下山後は、バス停近くのカフェで遅めのランチをいただいて、日帰り温泉で汗を流します!
下山後に立ち寄ったカフェのレポートはこちら↓