土曜日でも料金アップなし!かけ流し温泉内湯付きの部屋をいつでも1人で予約できる宿
角間温泉(かくまおんせん)は、長野県山ノ内町にある山あいの温泉地で、数軒の旅館と共同浴場のみで構成される、湯田中渋温泉郷の一角に数えられる温泉地です。
ようだや旅館は、共同浴場の「大湯」の目の前にある自家源泉を持つ宿で、湯治場の雰囲気を色濃く残す歴史ある宿で、湯田中渋温泉郷の数ある宿の中でもずっと気になっていた宿でした。
というのもこちらの宿、全12室のうち10室は6畳あるいは8畳のバストイレなしのお部屋なのですが、2室のみバストイレ付きの部屋があります。その2室の部屋付きの浴室では常時、自家源泉のすばらしいお湯がかけ流されているのです!
しかもそのかけ流し浴室付きの部屋には、1人でも2食付き1万2千円(税抜)で泊まることができ、土曜日でも料金アップなどはなく、同じ料金で1人泊可能です。
公式サイトがなく予約は楽天トラベルのみで情報は少なめだったのですが、とにかくお風呂はすばらしそうだ!
ということでずっと気になっていたこちらの宿に、2022年の2月に宿泊が叶いましたので、ご紹介したいと思います。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。
- 土曜日でも料金アップなし!かけ流し温泉内湯付きの部屋をいつでも1人で予約できる宿
大雪の降る2月に長野電鉄特急ゆけむり号に乗って湯田中駅へ
角間温泉の最寄り駅は、ほかの湯田中渋温泉郷の温泉地と同様、長野電鉄の湯田中駅です。
少し前に、同じ湯田中渋温泉郷の安代温泉の宿についてブログに書きました。
このときと同じように、まずは長野駅まで新幹線で出て、そこから長野電鉄の特急ゆけむり号に乗って湯田中駅を目指します。
ゆけむり号は、かつては小田急のロマンスカーだった車両を使っている特急電車です。
特急料金+100円で乗り換え無しで湯田中駅まで行けますし、空いていることがほとんどなので気楽に乗れるありがたい特急です。
長野駅を出てからしばらくの間は雪は降っておらず、近くを走る道路の路面にも雪がない状態だったので「このぐらいの天気なら、宿まで歩いていけるかなあ」と思っていたのですが……
湯田中に近づくにつれ、雪が増えてきましたよ……
終点湯田中駅へ到着。
ええ、雪ですね!写真だとわかりにくいですが……大粒の雪がじゃんじゃん降っていて、視界が悪いです。
ちょうどバスも来たのですが……角間温泉はあまりバス停からの便が良くなく、最寄りのバス停から18分ほど歩かなければなりません。そして駅から徒歩だと40分弱。
普段なら歩けない距離ではないですが、大雪で視界が悪く、除雪などで路幅が狭くなっているところもあるでしょうから、慣れない道を歩いていくのは危ないな……。
ということで素直にタクシーにしました。駅の目の前に長電タクシーの湯田中営業所がありますので、そちらで車を出してもらえるようお願いしました。台数が少ないので、電車が到着した後タクシーを使う人が多いと待つ可能性もあります。決断は早めが吉です。
渋温泉にも「養田屋(ようだや)旅館」があるので注意!
本日宿泊するのは角間温泉の、平仮名で「ようだや」と書く旅館ですが、実は同じ湯田中渋温泉郷の渋温泉に、同じ読みで養田屋旅館という宿があります。
タクシーで「ようだや旅館まで」と言ってしまうと、どちらに連れていかれるかわからないので「角間温泉のようだや旅館」と言ったほうが間違いありません。
10分弱の乗車でようだや旅館に到着しました。木造3階建ての古い建物ですが、雪が降っていると独特の味がありますね。
【部屋】★★★★ トイレ洗面付き。冬はこたつと石油ヒーター、エアコンもあり
さっそくお部屋に案内していただきます。
ようだや旅館には6畳と8畳、そして12畳の部屋があるのですが、6畳と8畳のお部屋は「トイレと洗面所が共同」で「バス無し」です。12畳の部屋とは設備が異なるため、これからご紹介する部屋に泊まりたい場合は、宿泊プランから「12畳(バス・トイレ付き」の部屋を選ぶことになります。
建物は年季が入っていますが、掃除はきちんとされていて清潔です。
共同の洗面所もきれいで、ハンドソープとアルコール消毒が設置してありました。
案内される途中、ふと見えた中庭。
すごい雪です。
12畳のお部屋は別棟にあるようで、途中ちょっと長い廊下を歩きました。
それから、棟と棟の境目と思われる箇所を通り抜けます。
ここは半分外なので寒いです。
別の棟に来ると赤いじゅうたんが敷いてあり、なんだかちょっとしつらえが異なっていました。
2室しかない12畳の温泉浴室付きの部屋は、特別室的な扱いなんでしょうね。
中に入るとまずは3畳半ほどの次の間が。
泊まるのが1人ということで不要な座椅子や座布団がこちらにまとめてありました。
鏡台と冷蔵庫も。冷蔵庫には瓶ビールのスーパードライが入っています。
では、お部屋へ。
おお!こたつがあります。いいじゃないですかー。
あと、新しめのエアコンがあるので夏も大丈夫ですね。高原にある古い温泉宿って「ちょっと前まではエアコンなしでも十分だった」「古い木造建築でエアコンの設置が難しい」などの理由で、エアコンがない(あるいは古くてあまり実用的でない)宿がたまにあるんですが、最近は高原と言えども夏は暑いし窓を開けると虫がくるので、個人的には夏はエアコンある宿に泊まりたいんですよね……。
別の方向から見たところ。田舎のおばあちゃんちに泊まりに来た感じですね。
テレビの後ろに箱ティッシュ。クローゼットの中に、浴衣とバスタオルとフェイスタオルと歯ブラシがありました。ちなみに、テレビは普通に映るしスマホの電波も問題ありませんが、Wi-Fiなどは特にありません。
お茶うけは、柔らかい餡の入った大福のようなお菓子。
洗面所とトイレは広縁にあります、と聞き、開けてみると……
おお寒い!ソファとテーブルのセットがありますけど、冬はここでくつろぐのは厳しいですね・笑
窓の外は、もちろんすごい雪です……。
広縁の両端に洗面所とトイレはありました。トイレは、ウォッシュレットではないけれど、ウォームレットで便座は温かいです。
「洗面所の水が凍結するので、少し出したままにしておいてください」と言われました。雪国あるあるですね……。
そして、部屋の右奥にあるこの襖の向こうが部屋付きの温泉浴室です。
温泉浴室については【風呂】のところでご紹介します。
真冬に泊まるときは夕食後に灯油の残量をチェックしよう!
滞在中に真冬ゆえの出来事がありました。
客室の隅には小さな石油ファンヒーターがあり、チェックイン時はエアコンはついておらずこの小さなヒーターだけで12畳の部屋を暖めていました。
12畳の部屋がこの小さなヒーターで暖まるんだからやっぱり石油ヒーターはすごいなと思っていたのですが、深夜にヒーターの灯油がなくなってしまったんですね……。
なんの暖房も点けないでいると氷点下の気温ですので、布団に入っていても寒いんです。山小屋に泊まるなら防寒具を持っていますけど旅館だからもちろんそんなものもなく。
けっこう夜遅かったですし、今から電話して灯油を入れてもらうのもなーと思い、エアコンの暖房をつけて凌いだんですが、エアコンは暖まるのが遅いのでけっこう寒い思いをしました。冬に泊まる場合は、夕食後に食器を下げてもらうときにでも灯油を入れてもらったほうが良いと思います。
【風呂】★★★★★ 女湯も良かったし部屋付きの内風呂は期待どおりのすばらしさ!
さてお風呂です。まずは泊まっている部屋とは別棟にある共同の浴室へ向かいます。
いやー、何回見てもすごい雪だ。
廊下に温泉分析書が貼ってありました。
泉温86度、ph8.2と弱アルカリ性の、ナトリウムー塩化物・硫酸塩泉。源泉名は「ようだやボーリング」で、つまり自家源泉です。
ちょっと見づらい写真になってしまいましたが、源泉の使用状況です。
加水・加温・循環・消毒すべてなしの、パーフェクトな源泉かけ流しです!
しかし、寒い季節はまだしも、夏の間はどうやって加水せずに温度を調節しているのでしょうね。
共同浴室も夜通し利用可能
女性用の浴室はこちらの洗面所の右手側。
もう1箇所、男性用の浴室はこのさらに奥にあるようです。浴室の男女交代はありません。夜通しの入浴が可能です!
なんか暗いな……と思ったら宿の方が出てきて電気を点けてくれました。ありがとうございます。
脱衣所へ。
脱衣用の棚と洗面台が、ソファが置いてあるシンプルな脱衣所です。ドライヤーあり。
では、浴室へ。
浴室のドアを開けるとふわーっと、温泉の良い香りがしてきます。ああ、これはいいお湯だわ。
シャワー付きのカランが1つ。
水圧も、お湯の温度も問題ありません。写真に写っていませんが、リンスインシャンプーとボディシャンプーはあったはず。
体を洗って浴槽へ。
熱めだけど入れないほどではないです。あまりにも熱かったらシャワーで水を入れようと思っていましたが、そこまでがんばらなくてもそのまま入れる温度でした。良かった。
源泉は透明ですがほのかに卵臭。ツルツルした肌触りの良いお湯です。
透明な源泉ですが、湯口にはびっしりと温泉成分がこびりついていました。
部屋付きのお風呂めあてで宿泊した宿でしたが、女湯のお風呂もとても良いお湯だったと思います。
ちなみに、男性用の浴室は浴槽が丸く、雰囲気が少し異なるようです。
客室付きの内湯は小さいけど何度も入りたくなる!あがったらこたつでビール!
では、今回の宿泊の一番のめあてだった部屋付きの浴室へ。
襖を開けると脱衣所があり、タオルハンガーなどもこちらに置いてありました。なぜかお風呂掃除用?のシューズも置いてあります。
では、いざ浴室へ!
おお……噂どおりコンパクト・笑
だけど1人で入るなら十分な広さです。浴室の床や壁も、新しめで清潔だし、気持ちよく入れます。
壁にカランが2つあり、本来ならこちらからも源泉が出るそうなんですが……この寒さで凍結してしまったとのこと。チェックイン時にご主人に
「大変申し訳ないのですが……凍結してしまいまして……」
と言われ、え?まさか部屋のお風呂に入れないの?と焦ったのですが、よく聞いたらカランだけだったのでホッとしました。体や頭は共同浴室のシャワーで洗うので大丈夫です。
かけ湯して浸かってみるとやはり熱いのですが、女湯のお風呂と同様に不思議と無理なく入れる温度なんですよね……冬だから、というのもあるとは思いますが。
私は熱いお湯が苦手で、それゆえに渋温泉や野沢温泉の外湯巡りにもあまり興味がない、という人間なのですが……熱い熱いと聞いていた角間温泉で、加水なしでこんなちょうどいい湯加減のお風呂に入れるとは……。
源泉投入量でうまく調節しているのでしょうか。湯口からは源泉が常時投入されていますが、すごい勢いではなく少しずつ足している感じ。
窓も開けられるので、少し熱くなってきたら窓を細く開けて、卵臭の感じられる極上の源泉をなるべく長く味わいました。
そして、あがったら即、こたつでビール!
宿には自動販売機がなく、ビールはアサヒの大瓶のみ、という情報を事前に得ていたので、長野駅で地ビールを購入してきました。須坂フルーツエールが風呂上がりにしみる。
浴室とこたつを行き来しているうちに夕食の時間が近づいてきました。
【食事】★★★☆ 家庭料理なので過度な期待は禁物だが、量はたっぷりで味は良い
ようだや旅館の食事の時間は夕食は18時、朝食は8時。
チェックイン時に「18時からと8時からでいいですか?」と聞かれたのですが、もしかしてもっと遅く・早くなどの希望があれば聞いてもらえる可能性もあります。私は特に問題なかったのでそのままの時間でお願いしました。
朝夕共に部屋食で、時間になると部屋まで運んでくださいます。食事が終わったら電話をして、食器を下げてもらう方式です。
夕食は家庭料理ベースだが、飲めるおかずが並ぶ
18時に、宿の方が部屋に料理を運んでくださいました。こたつでご飯です!
品数はなかなか豊富です。
「お酒は何がありますか?」と聞くと、冷酒(300mlの瓶)かお銚子、あとは部屋の冷蔵庫に入っている瓶ビール、ということだったので、冷酒をお願いしました。
地元山ノ内町の酒造、玉村本店さんの地酒「縁㐂」の本醸造生酒。
いただきます!
すっきりと辛口で、どんな料理にでも合うお酒です。
枝豆、海老の唐揚げ、蛸とりんごときゅうりの酢の物、白和え。
刺身は鮪と鯛。
茶碗蒸しはほんのり甘く、具沢山でおいしい。
揚げ物は大粒の牡蠣フライ!タルタルソース付き。
付け合わせの野菜もたっぷり。
「山の宿なのに海の幸が多いな」ということを気にしなければ、どれもおいしいです。
気にしないことにしましょう。日本酒には合いますし。
ちくわやこんにゃく、がんもなどの煮物。ひょっとしておでんなのかな。これも日本酒に合う。
豚肉ときのこの陶板焼きもおいしいし。
ホイル焼きの中身は鮭ときのこ。ちょっと洋風のおかずだけどこれも飲めるおかずです。
〆は、ちょっと古漬けっぽい野沢菜と、少し辛味のある茄子漬け、ご飯とお吸い物。
この漬けものがまたつまみに良くて、300mlの冷酒はこれでちょうどなくなりました。
デザートはりんごです。人に剥いてもらったりんごはおいしいですね。
すべておいしくいただきました!
途中「海の幸が多い」と書きましたが、実は私自身は、山の宿で海の幸が出てもそんなに気にするほうではありません。おいしければ。
ただ「山に来たんだから山のものを出してほしい!」と思う方もそれなりに多いとは思いますので、もし、山の宿らしい食事を求めるなら別の宿に泊まったほうがいいかなとは思います。
朝食はシンプル。甘く煮たりんごがおいしい
朝食も部屋食で、8時にお部屋に運んでいただきました。
ハムとレタスのサラダ、ほうれん草のお浸し、焼き鮭、きんぴらごぼう、焼き海苔、温泉卵、ご飯と味噌汁と漬けもの。
旅館の朝食の基本を押さえたメニューでしたが、そんな中でちょっとおもしろかったのが、デザートのりんごのコンポートです。
昨晩のデザートが生のりんごで、今朝はコンポート。
なんというか、実家っぽさを感じるメニュー構成で、味もさすが本場の味、おいしかったです。
チェックアウト時、奥からけっこう高齢と思われる女将さんが出てきて
「部屋のカランが凍っちゃってごめんなさいね。これ、お詫びに」
と、ビニール袋に入れたりんごを2個くださいました。
去年の秋は、実はりんごが不作だったんだそう。貴重なりんごですね。
行きはタクシーで来ましたが、帰りは宿のご主人が車で駅まで送ってくださいました。
ああ……今日は雪が降っていないのですね。このぐらいの天気だったら昨日も歩いていったんだけどなあ。
湯田中駅から長野電鉄の特急に乗り、長野駅に向かっているうちにどんどん晴れてきて、車窓から青い空が見えました。
また、寒い季節に伺いたい宿です。(そのときは、夕食後に灯油を入れてもらおう……)
【再訪したい度】★★★★☆ 奇跡のような湯温調節具合で、ひたすら温泉三昧しにまた来たい
「土曜日でも1万2千円でかけ流しの温泉内湯付きの部屋に泊まれる!」
ところに惹かれて泊まってみましたが、思っていた以上にすばらしいお湯でした。
角間温泉には、料理にこだわりを持つ宿もあるのですが、そちらはとにかくお湯が熱いらしく、あまり私向きではないかなと思ったんですよね。
ようだや旅館さんの温泉は、加水もしていないはずなのに共同浴室も部屋風呂も、とにかく温度がちょうど良くて、奇跡のようでした。よほど湯温調整がうまいのだろうか……。
共同浴室もいつも空いていて貸切状態でしたし、バストイレ無しの部屋なら2食付き1万円以下で泊まれますし、そちらでもぜんぜん満足できる宿だなと思います。
宿の方の雰囲気も優しくて、癒やされる宿でした。
【1人旅に優しい度】60点:Wi-Fiや飲み物を自前でなんとかすれば快適なお籠もり宿
泊まりやすさ 15/20
1人でも、土曜日でも温泉内湯付きの部屋に泊まれるのはとてもありがたい。
ただし、Web予約(楽天トラベルのみ)は直近1ヶ月ぶんぐらいしか提供していないもよう。
食事場所の配慮 20/20
夕朝食共にお部屋に運んでいただける。
プランの選択肢 20/20
もともとプランの選択肢は多くないが(普通の2食付きと、食事少なめプランの2種類のみ)どの部屋にでも1人で泊まれるのはありがたい。
ドリンクオーダー 5/20
ドリンクのメニュー自体がかなり少なめ。飲みたい人は自分で用意したほうがいい。
フリーWi-Fi完備 0/20
Wi-Fiの提供はない。スマホの電波はしっかりあるので特に不便には思わなかった。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。