氷壁の宿 徳澤園
徳沢は、上高地バスターミナルから梓川沿いに2時間ほど歩いたところにある、昭和初期までは牧場だったという地域です。
「徳澤園」「徳沢ロッジ」という2軒の山小屋とキャンプ場があり、登山の前泊地として使われることも多いのですが、その中でも「徳澤園」は、何度も映像化されている井上靖氏の小説「氷壁」に「徳沢小屋」として登場することでも有名です。
しかし、現在の徳澤園で最も有名なのは、併設のカフェでいただけるソフトクリームのような気もします。
本当においしいので、来る度に食べてしまうのですが……でも、徳澤園でおいしいのはソフトクリームだけではないのですよ!
というわけで、私がこれまで徳澤園でいただいた、おいしいものについてレポートしたいと思います。
明神から梓川を上流に向かって一時間歩くと、徳沢にたどり着く
これまで、上高地バスターミナル併設の食堂と、バスターミナルから1時間ほど歩いた明神地区の山小屋についてご紹介してきましたが、徳沢は、その明神地区からさらに1時間ほど歩いたところにあります。
上高地から明神までは3km。明神から徳沢までは3.4km。
普段登山をされない方にとっては「バスターミナルから片道2時間」と聞くとかなり遠くに感じるかもしれませんが、アップダウンもほとんどなく、よく整備された歩きやすい道です。
道の傍らには美しい沼地や、夏は高山植物も咲いていて楽しいので、楽しみつつ歩いていると気づいたら「もう徳沢!?」という感じ。
梓川沿いの開けた場所に出たら、徳沢はもうまもなくです!
徳澤園の手前の沢には猿がいました。
明神と徳沢の間にはけっこう猿がいるのですが、人間を襲ってくるようなことはなく、とてもおとなしくてかわいい猿です。少なくとも、私がこのあたりで出会った猿はみなそうでした。
ちなみに、上高地~徳沢あたりにいる猿はとてもおとなしいですが、もっと山の奥にいる猿はけっこう凶暴なこともあり……人間が通るタイミングを見計らって、登山道に落石を起こしたりする猿もいます。(←常念山脈縦走中に、稜線上でやられた)
猿のいた沢を過ぎると、木立の奥に黒っぽい山小屋が見えますが、こちらは徳沢ロッジ。松本市営の山小屋で、2016年春にリニューアルオープンしたばかりです。
こちらの山小屋にもいつか立ち寄ってみたいのですが、本日の目的地はここではなく、もうほんの少しだけ先。
元は牧草地だったという広いキャンプ場があり、その奥に徳澤園があります。
↑こちらは、GWの徳沢キャンプ場。かなり混み合っています。春先なので芝生も少し茶色いですね。
6月ぐらいになると天然の芝生も新しく生えそろい、木々の緑が美しい、広く快適なキャンプ場になります。
氷壁の宿、徳澤園に到着です。
ではまず、徳澤園併設のカフェ&食堂である「みちくさ食堂」についてご紹介したいと思います。
徳澤園併設のカフェ、みちくさ食堂。名物はソフトクリーム!
徳澤園の正面には、宿泊者以外でも立ち寄って食事やお茶をいただけるみちくさ食堂があります。
店構えがなんだかおしゃれです。
入り口付近にはテラス席もあり。
カウンター席に……。
テーブル席もあります!
晴れた日はテラスでのんびり過ごすのも楽しそうです。
ここでビール飲んだら最高ですね!
入り口付近にザック置き場がありますので、大きなザックは店内に持ち込まず、外に置いておきます。
では、中に入ってみたいと思います。
徳澤園 みちくさ食堂の店内
店内には4人掛けのテーブル席が10脚ほど並んでおり、奥にはカウンターが。
席を決めてからカウンターに注文しに行き、お金を払います。
調理に時間がかかるメニューに関しては、注文時にテーブル番号を伝えて、運んでいただくシステム。
ガラス戸の向こうにもテーブル席が見えますが、あちらはみちくさ食堂の席ではなく、宿泊客用の食堂なので開放されていません。
団体客のランチの予約なども受け付けているようなので、そういう場合は奥の席を使うこともあるのかもしれませんね。想像ですけれど。
みちくさ食堂の営業時間
みちくさ食堂の営業時間は朝7時から夜19時30分まで。
ただし、これは「喫茶メニュー」の営業時間で、「食事メニュー」の提供は7時から、ラストオーダーが15時45分になります。なぜか食事メニューの中でも「野沢菜チャーハン」だけは、10時から14時までの時間限定のメニューになるそうです。
それとは別に、みちくさ食堂では主に目の前のキャンプ場でテント泊をしている方向けに、夕食の提供を行っています。メニューは「おでん定食」と「岩魚定食」だそうですが、当日17時までに予約しておけば、18時ぐらいに夕食をいただけるそうです。
くわしくはこちらに記載がありました。
みちくさ食堂のメニュー
みちくさ食堂には紙のメニュー表などはなく、カウンター前の黒板とプレートがメニューのすべてです。そのほうが、時間帯や仕入れによってメニューを変更するのが楽なんでしょうね。
こちらは、今年の6月の朝8時ごろに伺ったときのカウンター。
本来は、朝7時から食事メニューがスタートしているはずなのですが、この日は食事らしきメニューは「朝定食」と「手作りカレー」のみですね。
あ、でも「贅沢おつまみプレート」はあるのか……朝から、飲んじゃうのか……。
ドリンクメニューは大抵いつもこんな感じ。
生ビールが飲めるのはうれしいですね!
「カルピスミルク」ってなんだろう……普通のカルピスとはちがうのかな。
こちらは、1年前の7月、午前9時ごろに伺ったときのカウンターです。食事メニューが圧倒的に多いですね!
「おでん」「手作り豆腐」「カレーそば」「月見そば」「山菜そば」のほか、おかみの気まぐれスイーツ「手作りプリン」もありました。
「自家製漬けもの2点盛り」なんていうイレギュラーメニューも。
このときは海の日連休でかなりの繁忙期だったと思いますので、食事メニューもしっかり準備されていたんでしょうね。6月に行ったときは、歩いている人も少なくて「シーズンオフ」という趣でしたから。。。
混んでいる時期にはあまり行きたくないと言いつつも、混んでいる時期だけ提供しているメニューもあるのが悩ましいところで。
ちなみに、徳澤園の公式ブログを覗いたところ、2017年の夏は新メニューとして「かき氷」が登場したんだそうです……が、8月の天気がいまいちで暑い日があまりなく、仕込みも大変なので早々に終了してしまったんだとか。
かき氷、来年はもうやってくれないかな……食べてみたかったです!
ドリンクは、カウンターで注文するもの以外に店内の冷蔵庫から持ってきて、レジで会計していただくこともできます。
ビールの種類が豊富でうれしい!!
瓶のビールは550円~650円。日本酒は900円でした。
300mlの日本酒の瓶は、旅館で飲むとどんな銘柄でもぜったい1000円はしますから、まあまあ安いような気も。
店内に自販機もあり、こちらで購入したものも中でいただけます。
いろはす200円、それ以外のペットボトル飲料250円、スーパードライはロング缶が550円、普通の缶が400円。
山中の価格としては、やや安いほうでしょうか。
みちくさ食堂でいただいたもの
私がこれまでみちくさ食堂でいただいたおいしいものを紹介したいと思います。
まずはビールですね!コロナ、650円。
生ビールが飲める山小屋は北アルプスではそこそこある気がしますが、コロナが飲める山小屋にはめったに出会いません。夏の暑い日に飲むコロナ、最高ですよねー、ぜひテラスで飲みたい。
と言いつつ、実はコロナをいただいたのはゴールデンウィーク中でして、まだ外は寒かったので暖房のきいた店内でいただきました。それはそれでたいそうおいしかったです。
手作りカレー、900円。
わりとさらっとした、おうちのカレーという感じ。
手作り感あっておいしかったですが、男性だとご飯が足りなそうな気もしますね。大盛りとかできるのかしら。
徳澤園名物のソフトクリーム!通りかかる度に食べているのでもう何回食べたかわかりません。
本当においしいんですよ。クリームも、味が濃いのにさらっとしていて素敵なのですが、なんと言ってもコーンがワッフルコーンなのが良いですね。大好き。
そして、私がみちくさ食堂で最も好きなメニュー、天然酵母の厚切りトーストです。
これも、何回も食べてます。700円ぐらいだった気がする。間違ってたらすみません。
なかなかの厚切りなんですが、パン自体がとてもおいしいんですよね。
焼き加減はあまり強めではなく、中に十分水分が残っているタイプのトーストです。天然酵母だからか、もちもちした食感なのが素敵。
ジャムもたっぷりと塗られています。
紙ナプキンに、登山者の後ろ姿がプリントされているのも素敵!
数年前までは「ブルーベリージャムトースト」のみだったのですが、2016年に伺ったときから「はちみつトースト」が登場していました。
当然食べます。
このときは珍しく、1人ではなかったのです。
食べているとはちみつが垂れてきてしまうほどたっぷりと塗られていて、最高でした。
コーヒーも、マシンで淹れたものですが、豆にこだわっているらしくおいしいコーヒーでしたよ。
コーヒーにはおまけのクッキーがついてきました。
トーストと言えば八ヶ岳のしらびそ小屋が有名ですが、あまり目立たないけれど徳澤園のみちくさ食堂のトーストも負けていないんじゃないかと個人的には思っています。
みちくさ食堂では、時間があったら必ずトースト食べたいんですけど、たまに品切れなのかメニューのプレートが出ていないことがあるのがちょっと残念ではあります。いつでもトースト食べたいです!
みちくさ食堂のそばには売店がある
みちくさ食堂の奥のほうには売店があり、耳栓やガスカートリッジや下着など「うっかり忘れてきちゃった!」ものを補ってくれるもののほか、徳澤園オリジナルのグッズも販売しています。
Tシャツやバッジ。
バンダナやカップ、コインケースなど。
徳澤園のグッズは実用的なものも多く、カラフルでデザインも良いものが多いように思います。
こちらの記事で紹介したポケッタブルトートも、徳澤園の売店で購入したものです。
ポケッタブルトートはエイアンドエフに別注したもののようでしたので、他のグッズもそうなのかもしれません。実用的なわけですね。
2016年のGWに徳澤園の相部屋に宿泊しました
2016年のGWに、蝶ヶ岳に登る前泊として徳澤園に宿泊しました。
そのときは、ブログで山小屋の紹介をするとは思っていなかったのであまり写真も撮っていなかったのですが……撮影したものを掲載したいと思います。
共用部分は旅館と言っても差し支えないほどピカピカに磨き上げられており、お花が飾られていました。
階段にはシャンデリアが。
踊り場にも生け花が飾られてあり、ちょっと感動しました。
1人だったので当然相部屋の利用だったのですが、徳澤園では2017年に相部屋を改装したので、私は改装前最後のシーズンのお客だったようです。
でも、改装前の相部屋も快適できれいでしたよ。ボックスタイプの相部屋で上の段をあてがわれたのですが、ハシゴがちょっと登りにくくて「酔っぱらったらこわいな」と思ったぐらいで。そのあたりは改装後は改善されているのか、ちょっと気になっています。
私は女1人だったからかボックスタイプの部屋への案内だったのですが、当時はいわゆる雑魚寝タイプの部屋もあり、大人数の団体なんかはそちらへ案内されていたようです。改装後は雑魚寝の相部屋はなくなり、すべてボックスタイプの席になったようですが、そのぶん宿泊料金も9500円→12000円にアップしたようですね。
相部屋で12000円はけっこういい値段だなーと思うのですが、それでも今年は、目新しさもあってか個室よりも相部屋のほうが人気なほどだそうです。すごいなあ。
徳澤園の宿泊時の夕食について
改装後についてはわかりませんが、2016年の宿泊時は、相部屋利用と個室利用では食事のメニューがやや異なりました。
こちらが、私がいただいた相部屋の夕食。
メインはステーキで、ホタルイカの酢味噌和えや竹の子など季節感のあるメニューも並び、山の鉄板メニュー岩魚の塩焼きに、メインはステーキです!!うれしい♪
個室利用の方のメニューも拝見したのですが、2品ぐらい増えていたと思います。山菜の天ぷらがついていて、シーズン中だしうらやましいなと思った覚えがw
でも相部屋利用でも、9500円という北アルプスの山小屋では平均的な宿泊料でこれだけの食事が出てくるというのはやはり、すごいなと思いましたよ。
宿泊料金が12000円にアップした現在の夕食はどうなっているのか、気になるところです。
徳澤園のお弁当
宿泊した際は、翌日の朝早くに出発するつもりだったので、朝食をお弁当に変えていただきました。山菜ちまき弁当です。
結局、早朝あまり天気が良くなくて出発を遅らせたので、弁当を食堂でいただいてから出たのですが……。
こちらのお弁当は、夕朝食とは別に900円で昼食用としても注文できます。
山菜ちまきはとてもおいしかったですし、なるべくゴミにならないように工夫してあるのがうれしかったですね。
【再訪したい度】★★★★★ ものすごく努力されている山小屋だと思う。またトースト食べたい!
カフェを利用しても、おみやげを買っても、宿泊しても、ホームページを見ても思うのは「徳澤園って本当に、すごくがんばっている山小屋だなあ」ということです。
立地はもちろん良いのですが、登山客に快適に楽しく過ごしてもらおうという工夫が本随所から感じられるのです。山小屋はあんまりサービス業っぽくないところも多いですが、徳澤園はちゃんと「サービス」を提供してくれてるなあと思うのですよね。
しばらく休業していたお隣の徳沢ロッジが、かつての徳澤園にかなり寄せてきた形でリニューアルオープンしたと思ったら、翌年には徳澤園がさらなる進化を遂げたところも興味深いところ。いつか両方に泊まってみたいです・笑
それと、私が徳澤園で最も好きなの厚切りトーストです!
人気があるメニューなのかはわからないのですが……また食べたいので、メニューからなくならないで欲しいなーと願っています。行く度に「今年はまだあった」とひそかにホッとしているので、今後もなんとか続いて欲しいです。