すべての旅館が加水・加温・循環・消毒すべてなしのかけ流しを実践する関温泉
新潟県妙高市の関温泉は、妙高山の麓の標高900メートルほどの場所にある温泉地です。
戦国時代には上杉謙信の隠し湯であったとも言われる歴史ある温泉地ですが、関温泉のすばらしいところは、11軒あるすべての旅館が「加水・加温・循環・消毒すべてなし」のパーフェクトな源泉かけ流しを実践している温泉地だということです。
今回ご紹介する朝日屋旅館さんでも、内湯・露天風呂共に赤茶色の湯の花たっぷりの新鮮な源泉がドバドバとかけ流されていました。
お湯が良いだけでなくお部屋も浴室も清潔で、宿の方のお人柄も良く、地酒に合う料理も大変おいしくてかなり気に入りました。また、土曜日も1人泊可能な宿ですので、また別の季節にも訪れたいなと思いつつ、レポートしたいと思います。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
一人で泊まれるおすすめの温泉宿もたくさん紹介しています。
- すべての旅館が加水・加温・循環・消毒すべてなしのかけ流しを実践する関温泉
関温泉へのアクセス:えちごトキめき鉄道 関山駅から妙高市市営バスに乗る
公共交通機関で関温泉に向かう場合、最寄り駅は「えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン」の関山駅です。
東京方面から関山駅に向かう際は
・北陸新幹線を長野駅で下車してしなの鉄道で妙高高原駅へ向かい、乗り換えてえちごトキめき鉄道で関山駅
・北陸新幹線を上越妙高駅で下車してえちごトキめき鉄道で関山駅
という2つのルートがあります。
新幹線を上越妙高駅で下りたほうが乗り換えは1回で済んで楽ですが、新幹線に乗る区間が長いため、片道550円ほど高くなります。また上越妙高駅に停車する新幹線も長野駅ほど多くはありません。
長野駅で下車するパターンだと2回乗り換える必要があって面倒ですが、交通費は若干安くなります。また、長野駅にはすべての北陸新幹線が停車するため、乗り継ぎはスムーズにしやすかったり、乗り換え時に長野駅で買い物や食事ができる、というメリットもありますが、どちらのルートを選ぶかはお好みで。
私自身は、関温泉駅へ向かう際は上越妙高駅を経由することが多いのですが、今回は前日にお隣の妙高高原駅が最寄りの「赤倉観光ホテル」に宿泊していたのです。
なので妙高高原駅からえちごトキめき鉄道の直江津行きに1駅だけ乗って、関山駅に着きました。


ちなみにこの日はGWの真っ最中なのですが、誰も乗っていなくて心配になった……。
ここからは、妙高市市営バスの「関・燕温泉線」に乗って向かいます。
関山駅の駅舎。古いけれどなんだかかわいい。
妙高市営バス「めぐりん号」は13時34分に関山駅を発車します。
関温泉への到着予定時刻は14時ちょうど。運賃は440円です。
乗車中に停留所の案内などは特にありませんし、降車ボタンもないので「関温泉までお願いします」と伝えてから乗ります。
20分少々の乗車で、予定どおり関温泉に着きました。
関温泉の温泉街は、妙高高原公園線の道路沿いに11軒の温泉宿が立ち並ぶ、シンプルな温泉街です。
共同浴場は現在はなく、隅から隅まで眺めて歩いたわけではありませんが、商店や飲食店なども特に見当たりませんでした。
ですが関温泉には、本当にすぐ側に、その名も「関温泉スキー場」という小規模なスキー場があります。
この日はGWの前半で、スキー場もまだギリギリ営業しているようでしたが、雪も少なくなっているので滑っている人はまばらでした。
とは言え、関温泉が最も賑わうシーズンは今も、スキー場が営業している冬の間なんだそうです。(宿の女将さんに聞きました)
本日宿泊する朝日屋旅館さんは、関温泉スキー場を背にして建っている宿です。
チェックイン時刻は本当は15時からなのですが、この日の朝に「バスが14時で着いてしまうのですが、中で待たせてもらえるでしょうか?」と電話で聞いたところ「大丈夫ですよ」と快いお返事をいただきました。
なので、本来のチェックイン時刻より早いのですが、さっそく中に入らせてもらいます。
【部屋】★★★★ トイレ洗面付きで清潔、Wi-Fiもしっかりつながる快適な部屋
チェックインし、女将さん(若女将、という雰囲気)にお部屋に案内いただきました。
宿泊する部屋は最上階の3階奥の部屋。エレベーターはないので3階まで階段を上ります。
「ちょっと階段は大変ですけど、1番日当たりのいいお部屋ですので」
とのこと。ドアを開けると……
正面に洗面所で左にトイレ。右側に和室のお部屋が。
たしかに、角部屋で日当たりが良いです。
布団はあらかじめ敷かれていました。(敷き布団は2枚で寝心地良い)


洗面所にはハンドソープとコップと歯ブラシ。トイレはウォッシュレット付きで清潔です。
室内にはテレビと冷蔵庫とヒーター。


ただし、室内にエアコンはありません。標高900メートル……真夏は日によっては暑そうですね。
Wi-Fiは完備されており、速度も問題なく利用できました。
ポットは湯わかし機能がないタイプだったのが少し残念。ポットの交換は特になかったので、夜にはお湯がぬるくなってしまいました。
クローゼットの中には浴衣と帯、フェイスタオルとバスタオルが。
お部屋の窓の外には関温泉スキー場が見えます。
案内してくださった女将さんが、関温泉について丁寧に説明してくださいました。
関温泉は弘法大師が開湯したと言われ、上杉謙信の隠し湯とも言われる歴史ある温泉地ですが、古くからあるだけの温泉地ではありません。
11軒あるすべての宿が、加水・加温・循環・消毒すべて無しのパーフェクトなかけ流しを実践しており、温泉地をあげて「源泉100%かけ流し」宣言をしているというちょっと珍しい温泉地です。
探せば他にもあるとは思いますが、10軒以上あるすべての宿が循環も消毒もしていないってかなり珍しい気がします。良質な源泉に恵まれた温泉地だからできることではありますが、宿の方たちも清掃などをしっかりやっているからこそ、実現できているんでしょうね。
「お風呂あがりは本当は、源泉を洗い流さないほうがいいので、湯の花が自分の服につかないよう、バスタオルでしっかり拭き取ってください。タオルはいくら汚れてもかまいませんので」
と言っていただき、お風呂がいっそう楽しみになりました。
1階には酒類を含む飲料の自動販売機がある
お部屋の冷蔵庫は空でしたが、1階の食堂の前に自動販売機があります。
コカコーラのソフトドリンクと、アサヒスーパードライの缶とハイボール、氷結が販売されていました。


料金は市価+20円程度で、旅館の自動販売機の平均的なお値段だと思います。
関温泉街には酒屋さんなどは特に見当たらなかったので、これ以外に必要なものがあれば、あらかじめ買っておいたほうがいいでしょう。
【風呂】★★★★☆ 赤茶色の細かい湯の花が舞う極上湯を楽しめる
一休みしたところでお風呂へ!
浴室は1階にありますので、階段を下りて向かいます。
1階に下りて、食堂の前の廊下を奥へ進んでいくと……。
途中で建物の雰囲気が変わり、明るくてちょっと新しい感じの廊下に出ます。
もしかしたら、この廊下から浴室までは、新しく増築された部分なのかもしれないですね。
突き当たりに男湯と女湯が並んでいました。ちなみに、朝日屋旅館さんの大浴場は、男湯と女湯の時間帯による交換はありません。また、浴室はチェックインからチェックアウトまで夜通し利用可能です。
温泉分析書が掲示してありました。
泉温は48.6度という、たしかに加水も加温もしなくても何とかなりそうなベストな温度!毎分510L湧出しているそうです。ph6.3の弱酸性、ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉です。
のれんをくぐり、脱衣所へ。
脱衣所も清潔で古びた感じはありません。脱衣カゴは4つ置いてありました。
脱衣カゴの向かいには鏡があり、化粧水などのアメニティはありませんが、ティッシュとドライヤー。
ドライヤーはPanasonicのイオニティ。
それでは、いざ浴室へ。
おお……いいじゃないですか!日当たりよく、清潔な浴室。床は少し凹凸のある石で滑りにくいですし。
浴室の手前側にはシャワー付きの洗い場が4つ。


シャンプー&コンディショナー、ボディシャンプー、固形石けんが設置してありました。
奥には浴槽が。2~3人入ればいっぱいかなという浴槽ですが……小さめの浴槽のほうが湯の入れ替わりが早くて常に新鮮なお湯を楽しめますからね。
浴槽に入る前に中を見てみると、湯は透明で、浴槽の下のほうに何かが溜まっているように見えます。
入ってみると、下に溜まっていたのは細かい湯の花でした。
湯をかきまぜるとあっという間に、赤茶色の濁り湯に。
湯口からは源泉がドバドバとかけ流されています。
いやー、よいお湯です。
茶色いお湯って、土っぽい香りや鉄っぽい香りなど独特の匂いがあることも多いですが、こちらのお湯は香りの個性は強くなく、入りやすいです。これなら「源泉を洗い流さないで拭き取るだけ」であがっても大丈夫かも。
個性的な香りのお湯だと、残り香が気になって洗い流したくなってしまうことがあるので。
温度は41度ぐらいの適温で、とてもよく温まるお湯でした。
冬季はお休みの露天風呂にも入れました
朝日屋旅館さんの大浴場には露天風呂もついています。
冬の間は、おそらく源泉がぬるくなりすぎるからではないかと思いますが、露天風呂は休止するようです。ホームページには、露天風呂に入れるのは「5月中旬から10月下旬」と記載があります。この日は4月下旬だったので「まだ入れないかな」と思っていましたが、この年は既に入れるようになっていました!
身を浸すと、やはり内湯よりはぬるめで39度ぐらいでしたが、長湯できるからいいですね。
ちなみにですが……内湯から露天風呂には階段を数段下りる必要があるのですが、その階段を下りる瞬間だけ、スキー場の上のほうから見えそうな感じがしました。
その目隠しのためか、女湯の階段のところには布が張ってあったので、たぶん大丈夫、とは思いますが。心配な方は、内湯から外に出る前に、窓から外を見て確認してみたほうが良いかもしれません。
日帰り入浴も午前9時から午後5時まで営業
朝日屋旅館さんでは日帰り入浴も午前9時から午後5時まで営業しています。
料金は大人500円、子供300円。
帳場の前にはコインロッカーもあったので、日帰り入浴時も荷物を預けられそうです。
浴室も脱衣所もきれいでお湯は極上。シャンプー類もドライヤーもコインロッカーもあるので、登山やスキー帰りの入浴にも便が良さそうですね。
【食事】★★★★☆ 地酒3種飲み比べ付きプランで宿泊。山菜も魚介もおいしい
朝日屋旅館さんの夕食は18時からで、朝食は8時から。
18時30分から夕食のグループもいましたので、チェックインが遅めの場合などは18時30分スタートも可能なんだと思います。
食事は朝夕共に、1階にある食堂でいただきます。
食堂では、長テーブル1つにつき1組のグループが着席する方式でした。
夕食は春らしい食材がふんだんに使われた、地酒に合う料理が並ぶ
今回私は「地酒3種飲み比べ付き」の宿泊プランで予約していました。
スタンダードなプランより1000円高いのですが「地酒飲み比べ」と聞くと頼まずにいられない性質でして……。
飲み比べセットに付くお酒は、こちらの3種です。
「君の井」「千代の光」「鮎正宗」いずれも妙高市内の酒造です。
それぞれのお酒について、詳しい説明書きがあるのもうれしいですね。
しかし、飲み比べセットのみで1000円プラスはちょっと高いような……?と思ったら「まず3種飲み比べをして、その中で気に入ったもの1種類を1合いただける」というところまでが飲み比べセットなんだそうです。なるほどねー。
そんなわけで、まずは飲み比べ3種です。
地酒以外のお酒のメニューは紙では用意していないようで、女将さんが口頭で説明していました。飲み比べで提供している3種の日本酒を1合ずつ提供できるほか、瓶ビール、ワインのフルボトル・ハーフボトルなどがあるそうです。
お酒も来たところで、お料理をいただきます。
かつおの漬けとこごみ。かつおもこごみも好きなのでうれしい。
かつおもおいしいなー。まぐろは良く出るけど温泉宿でかつおが出るって珍しい気がしますね。
冷や奴の上には蕗味噌が。
冷や奴自体は特別な料理ではないですが、蕗味噌がのっているといきなり特別感が出ますね。
ホタルイカの酢味噌!こちらも春の味覚ですね。
一緒に添えられているのも山菜だと思いますが、何の山菜かは忘れてしまいました。
このあたりで最初の飲み比べセットがなくなったので、3種類のうちから「千代の光」をぬる燗でいただくことに。
ちょっと見た目は強面な焼き魚は「ほうぼうの塩焼き」です。こちらも海の魚で、しかも旅館の食事ではなかなかお目にかからない魚ですね。味は見た目の印象とは異なり、くせのない白身でおいしかったです。
陶板焼きの中身は「行者ニンニクと豚肉炒め」です。
これはとても良いお味!
名前のとおり、にんにくのような香りのする山菜なので、豚肉の脂とよく合います。地元の人が普段から食べている調理法という感じがしますね。この食べ方は、家でも真似してみたくなりました。
揚げ物はもちろん、山菜の天ぷら。
コシアブラ、こごみ、ふきのとう、うど、ドロ海老。
「どろえび?」と名前に驚きましたが、山陰地方で「もさ海老」と呼ばれたりする、甘エビ以上に甘い海老だそうです。
煮物は冬瓜とかぶ、菜の花と厚揚げ。すべて日本酒に合う料理で、おいしくいただきました。
最後にご飯とお味噌汁、漬物をいただいてごちそうさまでした。
朝食はカマスの塩焼きと納豆+蕗味噌がおいしい
朝食も食堂で。夕食と同じ席でいただきます。
きれいに焼かれた卵焼きがうれしいですね。
こごみのごま和えも、大好きな春のおかずです。
納豆の上に何かのっているなあと思ったら、蕗味噌でした。納豆も蕗味噌もご飯のお供に良いので、合わせるとよりおいしい。
あまり見慣れない感じの焼き魚は「カマス」です。
水分が多いジューシィな秋刀魚、という感じのお魚。旅館でいただいたのは初めてな気がします。
朝から海の幸も山の幸も楽しめて、ご飯もおいしく、いい朝食でした。
【再訪したい度】★★★★★ 山菜の季節にまたおとずれたい宿
新鮮ですばらしく印象的なお湯、お部屋も清潔で快適、食事もおいしく連休中でも料金アップなしで泊まれる!と何拍子も揃った宿でした。2食付き1万円台前半で土曜日に1人で泊まれますし、絶対また泊まりたい!と思えた宿です。
1点だけ、客室内にエアコンがないので、夏の宿泊は私はちょっと厳しいかもしれないなあと思いつつも。
今回は4月下旬に宿泊してさまざまな山菜料理を楽しむことができ、どれも大変おいしかったのですが、女将さんの話ではこのあたりで山菜が最もいろいろ採れるのは、GW後から6月上旬ぐらいまでなんだそうです。5月であればエアコンなしでも快適に過ごせますし、きっと次回も山菜の季節に泊まりたいなと考えています。
【1人旅に優しい度】60点:GW真っ最中でも1人でのんびりと滞在できた
泊まりやすさ 15/20
8畳和室に限定されるが、休前日でも1人泊可能。
1番の繁忙期であるスキーシーズン中はどうなるかわからないが、ゴールデンウィークの最中に1人で泊まれた。
食事場所の配慮 5/20
夕朝食とも食堂でいただく。
長テーブル1つに1グループという配置なので、隣の席とは距離があり気にならないが、後ろの席との間隔は近め。
プランの選択肢 15/20
宿泊可能な部屋は8畳の和室に限定されるが、プランの選択肢自体は2名以上で宿泊したときと同じ。
ドリンクオーダー 10/20
日本酒は1合からオーダーできる地酒が3種類あるし、飲み比べセットも1人客にはうれしい。
日本酒以外のお酒だと、ビールは瓶ビール、ワインはハーフかフルボトルとなるようなので、1人だとあまりいろいろ頼めない。
フリーWi-Fi完備 15/20
客室内でWi-Fi利用可能。回線速度も問題なかった。
一人旅をもっと楽しみたい方に向けたエッセイです。
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