魚のはらわたって、食べますか?
お盆なので、故人を偲んだエントリーをひとつ。
この前泊まった旅館で、鮎の塩焼きが出たんですけど、はらわたがきれいに処理されていて、ついてなかったんですよ。
それで、なんだかちょっと残念な気持ちになってしまって。
鮎のはらわたおいしいのになー。鮎って草食だから、はらわた食べても大丈夫な川魚なんじゃなかったっけ……?しょんぼり。
そこでふと思ったのです。私、いつから魚のはらわたをおいしいと思うようになったんでしょう。たしか子供のころは食べられなかったはずなんですよね。
で、少し、魚のはらわたについて考えをめぐらせてみたのです。
山の宿に泊まると、8割ぐらいの確率で川魚の塩焼きが夕食に並ぶ
温泉旅行と登山を趣味にしている私が宿泊地として選ぶ宿は、やはり山の近くにあることが多いのですが、山の宿に泊まると8割ぐらいの確立で、夕食には川魚の塩焼きが並びます。
ヤマメ、イワナ、鮎。いろんな顔つきの魚がいるものですね。
「炭火でじっくり焼いてあるから、頭から食べれますよ」と言われることもときどきあります。そういうときは、遠慮なく頭からいただく私です。
こちらのお宿なんかがそうでした。
岩魚以外のお料理も大変おいしい宿で、特に山菜の時期は最高です。
実は、鮎以外の川魚は雑食だったり肉食だったりで、何を食べているかわからないからはらわたは食べないほうがいい、という話もあります。でも私は、あんまり気にせず食べちゃってましたね。。。本当は良くないのかもしれませんが、おいしいので。
そう、川魚のはらわたはおいしいです。でも、私の故郷は山よりもむしろ海に近いところなので、実家にいた頃は川魚の塩焼きにはめったにお目にかかりませんでした。
なので、私の子供時代のはらわた体験は、秋刀魚のはらわただったのです。
秋刀魚のはらわたがおいしいと思ったのは、日本酒を飲むようになってから
さんまの塩焼きの画像が欲しかったのですが……なぜか手元にこんな画像しかなく。
焼き方が悪いのか新鮮でないのか、はらわたがグズグズに崩れてしまっているときは食べませんが、見た目がきれいなはらわたのときは大抵、食べてもおいしいように思います。ただ、お酒を飲んでいないときは食べませんけど。
そう、秋刀魚のはらわたがおいしいと初めて思ったのは「日本酒と一緒に食べてみた日」でした。
あの、苦手だったはずのはらわたの苦みが、日本酒のほのかな甘みとあわさると、えも言われぬ深い味わいに感じられたのですよね。
私が、普段から日本酒を飲むようになったのはここ10年ぐらいのことですから「はらわたっておいしいな」と思うようになったのもそのぐらい最近のことだと思います。
というか今も「日本酒と一緒じゃなかったら苦いし生臭いし食えたもんじゃないな」と、正直なところ思っていますね。
いや待てよ。よく考えるとそういう「昔は好きじゃなかったし、今でも酒と一緒じゃないとおいしいと感じない」食べ物って、けっこうたくさんある気がします。
多くは、クセの強い魚介類でしょうか。
秋刀魚のはらわた以外にもあった!日本酒のあてに最高だけど素面では食べないもの
日本酒にあうけど素面では食べないもの①カニミソ
まずはカニミソです。
値段も安いことが多いし、これだけで日本酒がかなり飲める優秀なあてですが、素面でカニミソって、あまり食べたいと思わないですね。
漁師丼のすみっこにちょっと乗ってる、とかならまあ、アリですけども。
カニの身もついてたらまあ、いけるけど、やっぱ日本酒ほしいなー。
日本酒にあうけど素面では食べないもの②あんきも
あんきも。これも寿司屋で最初につまみでいただいたりします。
今は、素面で寿司を食べるときに、軍艦巻きでいただいたりもしますね。
昔は「食べられないほど苦手」というわけじゃないですけど「これ、おいしいかなあ……」って思ってました。レバーはもともと好きだったので、あれに似てはいるからなんとかイケる!けど、磯臭さにやっぱり馴染めなかったんでしょうね。
今は、あんきもを口に入れて濃厚な磯臭さを味わってから、それを日本酒で洗い流す瞬間が最高だと思ってます。
日本酒にあうけど素面では食べないもの③タラの白子
ここ数年は、冬の間に2~3回「白子の会」を催すほど白子が好きな私です。
誕生日のお祝いにご飯奢ってあげるけど何食べたい?と聞かれて「白子」と答えたこともあります。(ちょっと呆れられた)
焼き白子は、余分な水分が飛んで味が濃厚になるので好きな食べ方です。天ぷらもいいですよね。
寿司屋でも当然頼みますし。
あん肝との合わせ盛りなんて最高じゃないですか!
今でこそ、そう思っていますが、子供の頃は「見た目」「食感」「味」どれも気持ち悪いと思ってました。なんか脳みそみたいですよね。。。
子供にタラの白子なんか出さないでしょ、と思われるかもしれませんが、私の故郷には「どんがら汁」という郷土料理がありまして……毎年冬になるとタラの白子にお目にかかったんですよね。今ならおいしくいただけるはずなんですが、当時は苦手でしたね。
日本酒にあうけど素面では食べないもの④いかの塩辛
寿司屋に入って、とりあえずつまみを一品いただこう、というときに頼む率ナンバーワンです。
そんなにたくさんつまみを食べたいわけじゃないけれど、最初からお寿司握ってもらうとすぐお腹いっぱいになっちゃうから、とりあえず、で塩辛。
塩辛とはちょっと違うけど「ホタルイカの沖漬け」なんかも春は特に、最高ですね!
しかし、実家にいた頃にホタルイカの沖漬けを、家族が富山かどこかの土産にいただいて、ちょっと食べさせてもらったら、悪い意味で「なんじゃああこりゃああああああ」ってなりましたね。なんか苦くて。
今は、富山に行ったら自分で買って帰ってくるほど好きですが。。。
日本酒にあうけど素面では食べないもの⑤生牡蠣
火を通した牡蠣は、子供の頃から好物だったんですけど、生牡蠣はやはり、あのにゅるっという食感と磯臭さがダメでした。
ですが、やっぱり日本酒に合わせるとおいしいなってw
牡蠣には辛口の白ワインを合わせる人も多いそうですが、私はやっぱり日本酒だよなーと思ってます。なんか美味しんぼにそういう回あったね。。。
日本酒にあうけど素面では食べないもの⑥ウニ
私、ウニにはちょっとうるさくてですね……。
安いウニについているミョウバンの香りと味がダメで、ずっと食べられなかったんです。というか、ミョウバンの味と香りがウニのものだと思っていたんですよね。
ですが、以前、岩手県の台温泉の「やまゆりの宿」という旅館に泊まったとき、お刺身の隣に別盛りになっていたウニを試しに食べてみたら、これはおいしい!と。
そうしたら、同行者が「これはミョウバンの香りがしない、いいウニだから食べられたんじゃない?」と教えてくれました。
やまゆりの宿は、ちょっと高級めの宿なのでなかなか再訪できないのですが、食事もおいしく、温泉もすばらしい宿でした。
なので今も、ウニだけは「いいウニ」しか食べませんw そしてやっぱり、日本酒と一緒だとよりおいしいなーと思います。
ずいぶん前のことですが、長崎県の壱岐島に行ったときに海里村上という宿でいただいたウニも、かなりおいしいウニだったと思います。
おいしいウニはお寿司にしたときも、海苔の味でごまかす必要がないから、軍艦巻きにはしないんだそうです。。。
でも、この当時は私、まだ日本酒が飲めなくて、ビールを飲んでいたんですよね。
きっと、日本酒と一緒にいただけたらこのウニ、もっとおいしかったんだと思います。遠いし、けっこうお高い宿だし、なかなか再訪できないけど!
壱岐にはなかなか行けませんが、仙台のお寿司屋さんでいただいたウニもおいしかったです。
しかし、ミョウバン水で洗ってないウニは高いですね。。。
日本酒を飲むようになったら、これらの「苦くて磯臭くておいしさがわからなかったもの」がすべて、あてとして輝きを帯びてきたのです!
すごいな!日本酒!!魔法のみずか??
というか、お酒と一緒じゃなくても、あん肝だの塩辛だのをおいしいと思う人って、いるのかしら。
いやでも「お酒は飲めないけど酒のつまみが好き」っていう人にも会ったことはある。大人ならね。
でも、子供のころはみんなちょっと苦手に思っていて、大人になったことで食べられるようになるものだよね?きっと。だってどれもちょっと苦いじゃん。。。大人になって、何回か食べることで味わえるようになっていく、言ってみればビールみたいなものだよね。
でも、よく考えたらうちの弟は、ほんの小さいときから、さっき例にあげたような酒のつまみを「おいしい」と言って食べていたんですよね。
秋刀魚のはらわたがおいしいと初めて思った日、私はそのことを思い出したのです。
酒のつまみが好きな子供は、将来酒飲みになるのか
父は晩酌をする人だったので、家族がカレーやらハンバーグやら食べているときに、一人、別のおかずで飲んでいました。そんなときたまに、塩辛やらウニやら、あん肝なんかが食卓に並んでいたのです。
一人だけ違うものを食べているので、私も弟も気になって「食べてみたい!」と言うわけですけど、一口もらっただけで私は正直「うえーっ!」って感じでした。健全な子供の舌だったのですねw
しかし、弟は塩辛もウニもあん肝も「おいしいおいしい」と言って、父親のぶんがなくなる勢いでばくばく食べてました。もちろん、秋刀魚のはらわたも好物で、ご飯のおかずにしていっぱいご飯食べてました。
こういうシチュエーションで、周りの大人が
「この子は将来酒飲みになるよ」
と言うことが、よくあると思うのですが。
そのころの食卓で、父と母が弟に対してその言葉を口にしたのだろうか、と考えると私は少し、せつなくなります。
弟は生まれつき心臓に奇形を持っており、たぶん、大人になるまで生きてはいられないだろうと医師に宣告されていたからです。
そして実際に、小学生のときに亡くなってしまったからです。
食べることは生きること
10年足らずの短い期間ではありましたが、病弱な弟を持ち、そして亡くしたことは、私の人生にも少なからず影響を与えているだろうなとは思います。
ただ、まあ、20年以上も前のことですし、今になって思うのは
「酒飲みになるまで生きられないから、酒なしでもあての味のわかる舌を持って生まれたのかなあ」
ということだったり。
あと、うちは同居していた祖父も弟も心臓で「昨日まで元気だったのに急に」という感じだったんですけど、「元気だった」とは言え、振り返ってみると最後の数週間~数日は、不思議と食が細くなるものなんだなあと思ったりしました。
ぜんぜん食べられないとかではなく「いつもはもっと食べるのにね」「好物を出したのになんで残したんだろうね」ぐらいの変化ではありましたけど。余分なエネルギーを体が欲しなくなるんでしょうか。
やはり、食べることは生きることなんだなと。
そんなことを思いながらお盆を迎え、そして今年もまた、秋刀魚の季節がやってきます。